はぁ……溜息
思えば、オレの人生って……
過激な上司……
お調子者の部下……
定年まで無事勤め上げれるのか?




太陽にほえまくれ!―祝!初出動―




「まあ、あれだな。確かにフーリガンの言うことも一理ある。完璧というのは不可能でも100%に一歩でも近づけるのが刑事の仕事だ。わかるな天瀬 」
「はい」
「よし、じゃあアンソニー見本を見せてやれ!!」
「ええっ!?オ、オレですか?」

突然のご指名。びびる山本。なんでオレが?
と、とにかく、先輩刑事として、いいところを見せなければ。

「わ、わかりました」
気合を入れて返事したつもりの山本。が、その声はすでに震えていた。
「アンソニー、ファイトだよ!!」
「頑張ってね、アンソニー」
同じ少年課の瀬戸と滝口の励ましすらもプレッシャー。
しかし、とうの美恵は期待に満ちた眼差しで山本を見詰めていた。
なにしろ川田のご指名なのだ。頼り無さそうに見えても、射撃の腕前は一流に違いない。




が…!!
「えっ?」
思わず目が点になる美恵。それも、そうだろう。まるで出来損ないのロボットのようにぎこちない動きで、やっと射撃地点に到達した山本。
その射撃体勢……これまた、これ以上ないくらいカチンコチン。体中の筋が伸びきっているとしか思えない。


(あの体勢で本当に的に当たるのかしら?)


いや、撃てるのか?とにかく撃つ前から疑っては失礼だ。信じて射撃の腕前を見せてもらおう。
しかし……五分経過。
……まだ、一発も撃ってない。と、いうか、あの体勢で固まってしまったようだ。




「あ、あのアンソニー先輩?」
寸分も動かない。心配になった美恵は近づいて再度呼びかけた。
「アンソニー先輩、どうしたんですか?」
ポンッ……肩に手をおいた。
「ウワァァァーーー!!!!!」


ズキューーーンッ!!!!!


……シーン……
美恵は、これ以上ない呆けた顔で山本を見ていた。
二枚目な顔が引き攣り、全身痙攣した状態で仰向けになって倒れている。弾は……天井に命中していた。




「見たか天瀬」
煙草をふかしながら、悟ったように口を開く川田
「……あ、あの……」
「これが最悪の見本だ。こうならないように腕を磨け」
「……………」
自分の足元で今だ正気に戻らず倒れている山本。


「あの……アンソニー先輩大丈夫ですか?」
「だ、だいじょ……だ、い、じょう……ぶ…だよ……天瀬さん……」
アンソニー先輩……とても、そうは見えません。
「アンソニー先輩、あの……失礼ですが銃を命中させたことあるんですか?」
「……あ、あるよ……17回……シミュレーションで……」
……本当に刑事ですか?





クールに煙草をふかす川田
「まあ、前座の余興はこれくらいにして」
余興って……
「みせてやれ、サンマン」
「OKデカチョー。待ってたぜ」
スッと左手をあげる三村。ズキューーーンっ!!!×5




「……す、すごい」




美恵の瞳は輝いていた。五つの的、その全て、真ん中に命中だ。先ほどの山本の射撃(と、いえるのか?)を見た後だけに余計に感動した。


「まっ、こんなものだな」
「すごい……サンマン先輩って、本当はすごいひとなんですね」
『本当は』と、いう冠言葉が多少気になるが三村は自慢げに
「まあ、特捜の看板刑事としては当然だな」
「尊敬します」

『尊敬します』
その言葉は一人の男に火をつけた。




美恵、見ていてくれ」
その言葉に美恵は振り向いた。




ぱらららっぱらららぁぁぁ!!!!!!!!!!




まるで古びたタイプライターのような、その凄まじい爆音!!!!!




「キャーーー!!!!!」
「「「「「ギャーーー!!!!!」」」」」
……シーン……
ゆっくりと目を開く 美恵。
五つの的全て、その中心点はおろか、円状のポイント線――的の白黒の境線――きっちり4発ずつ、しかもそれらを線で結ぶと『Ⅹ』の形になるほどの正確さ。
「……す…すごい……でも……」
そう、確かに凄まじいくらいの腕前だ。だが……


「……あの…本部長……それ…マシンガン……ですよね?」
「そうだ」
「警察が、そんなもの支給してるんですか?」
「いや、これはオレの私物だ」
「お、おまえはアホかーーー!!!!!」
「なんだ川田」
「また、そんなもの持ち出して!!おまえは自分の立場わかっているのか?!!仮にも警察の要職についてる奴が、法を犯して!!!」




「大変です!!」
射撃場のドアが勢いよく開け放たれた。内海幸枝だ。
「銀行強盗発生です。特捜課出動お願いします」
「何だと?!よし、行くぞ、おまえたち!!」
川田の号令のもと動き出す特捜課の敏腕刑事たち
「デカチョー、私も」
早速の凶悪事件だが、美恵はヤル気マンマンだ。しかし……その後ろで桐山が川田を睨んでいる。


(おお、見とる見とる……天瀬を危険な場所に連れ出そうものなら、オレがマシンガンの餌食になるな……)


「それと、もう一件事件発生です。自殺志願の男の城岩ビルの屋上を占拠してるんです」
天の助けともいうべき内海の言葉。
天瀬、おまえには、まだムリだ。捜査三課の連中と、自殺男の方をあたってくれ。いくぞ、おまえら!」
川田は三村達を引き連れて行ってしまった。
捜査三課……笹川、大木、旗上たちのいる課だ。少々残念だが、人命救助も刑事の仕事。




美恵は笹川達と城岩ビルに向かった。

これが初めての任務!




頑張らなければ!!




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