バーンッ!!バーンッッ!!!
浮かび上がる硝煙
火薬の匂い
そして、少々焦げた穴付きの的




太陽にほえまくれ!―女刑事は射撃がお好き―




パチパチパチ
「すごいじゃない美恵。全弾命中なんて」
「本当ね。正直言って、あなたに刑事が務まるかと思ったけど、たいしたものだわ」
「そんな、唯一の取り得なだけです」
そう、美恵は射撃だけは自信があったのだ。警察学校時代も、それだけは群を抜いていた。




「でも、まだまだだな」
少々、まわりくどい言い方。その声が射撃場に響くと同時に銃を握り締める貴子。
「フーリガン先輩。おはようございます」
貴子の殺気にも気付かず、笑顔で挨拶する美恵。しかし、その横では貴子は早くも戦闘体勢に入っていた。


妙なマネしたら、今度こそ息の根を止めてやるわ!!!!!


「確かに的には当たってるけど、一発もド真ん中命中がないじゃないか」
「何?あんたなら、ド真ん中命中できるっていうの?」
もはや切れる寸前の貴子。最近では新井田が息をするのも耐えられないほど、対新井田超激嫌悪症は末期症状に突入しているのだ。
そんな貴子には全く気付かない無邪気な美恵


「じゃあ、フーリガン先輩は射撃の名手なんですか?」
「まあな。何ならお手本見せてやろうか?」
「お願いします」
「よし、わかった。そのかわり命中したら………今夜付き合えよ」
「……えっ?」
ちょっと待ってください、それどういう意味ですか?と言い返す暇もなく……突然走り出す新井田!!




ダダダダダダーーーーッ!!!




思わず目を点にして新井田を見つめる三人……
そして的の前(約1メートル手前)にてストップ!!!




「ヒット!!!」




ドキューーンtッ!!!
………見事にド真ん中命中………
……シーン……
いつもなら、鉄拳を繰り出す貴子も、さすがに唖然としている……あのバカが幼稚な性格とは知っていたが……




「フッ」
まるで西部劇のヒーローのように、銃口から流れる煙を息で吹き飛ばす決めポーズ
「「「……………」」」←まだ固まっている三人娘
「約束だ天瀬、今日から、おまえはオレの女だ 」
「このドアホーーー!!!!!」
前触れも無く、ぶっ飛ぶ新井田!!!
「なに考えて生きてんだ、おまえは!!!」
「「「デカチョー!!」」」
おまけに特捜課の面々はおろか、いつの間にか城岩署の全刑事全員集合だ。


そして、先ほど川田の鉄拳により数メートル飛ばされ、壁にのめり込んでいた新井田だが、起き上がると同時にボスこと桐山が瞬時に発砲。
婦女暴行未遂で網走に送るという桐山を、川田がなだめて減給で済んだ事は言うまでもない。









美恵は射撃が得意なのかな?」
「はい」
「そうか、だがまだ銃の反動に負けているな。体勢を改善すれば、もっと的に当たるようになる」
「はい、頑張ります」
「教えてやろうか?」
「えっ?本部長がですか?」
「「「「「「「「「「「「「「「ええっ?!」」」」」」」」」」」」」」」
刑事達が驚くのも無理はない。普段あれほど他人に興味を示さない桐山が自分から教授を申し出るのだから。
「銃はこう持ったほうがいいな」




美恵の背後から、まるで包み込むように密着し、グリップを握り締める美恵の手に、自分の手を添える桐山
「……あ、あの……本部長……」
「どうした?こう、握るんだ」
これが三村か新井田なら、100%セクハラだが、桐山は本気で他意はないのだ。しかし、ほとんど背後から抱きしめられている美恵に意識するなというほうが無理だろう。




不思議に思ったのか一端離れ、美恵の前方に移動する桐山。
「どうしたんだ、顔が赤いな。熱でもあるのか?」
そっと、右手で美恵の前髪を上げると、桐山は自分のおでこをあてた。
「!!!!!」←さらに熱上昇
「やはり熱があるようだな」
「「「「「「「「「「「「「「「……………」」」」」」」」」」」」」」」
桐山の一部始終を目の当たりにした刑事達も、美恵同様、発熱しだした。しかし、誰も何も言わない。いや言えないのだ。何しろ相手は上司。逆らったらどうなるか。




「保健室だ」
そう言うと、桐山はおもむろに美恵を抱き上げた(お姫様ダッコだ)
「いいかげんさらせ!!!!!」
ここにきて、ようやく川田が正気に戻った。そう、奴を止められるのは自分しかいない。
「なんだ川田」
「おまえなぁ……少しは自分の行動を考えろ。天瀬が迷惑するだろうが」


少々キョトンとして美恵に目をやる桐山。もっとも、はたから見れば全くの無表情だが。
「迷惑だったのかな?」
「……そ、そんな!!迷惑だなんて……そんなことないです……」
美恵は迷惑じゃないといっている」
「………もういい。全く、おまえって奴は……」




はぁ……と深く溜息をつく川田。全く恋は盲目というけどなぁ……あいつの場合、あの年になって初恋、しかも本人に全く自覚なし……この先どうなるのやら……




川田の苦悩は、まだまだ続く




戻る ドリームトップ 続く