……なに、あれ?
私、夢でも見てるの?
は呆然と署の前で立ち尽くしていた




太陽にほえまくれ!―業火―




「おひさしぶりね〜♪みんな元気だったぁ?」
「ママさん、どうしたんですか?」
ゲイバーのママ、本名・月岡彰。通称・ヅキ。
「決ってるじゃない。 ちゃんに会いに来たのよ。ついでにサンマンにもね」
ちなみに三村は、本日非常に第六感が冴え渡ったらしく、ほんの10分前パトロールに出かけていた。
「ヅキ久しぶりだな。商売のほうはどうだ?」
「順調よ。デカチョーも相変わらず苦労してるみたいねぇ」
「でも、どうしてママさんは、ゲイバーのママやってるんですか?
私、昨日偶然会うまで、ママさんの存在自体知らなかったんですよ」
「前に話しただろう、わけありで普段は署にいない奴がいるって」
ああ、そう言えば確かに川田は、そう言っていた。
「アタシは秘密捜査官なのよ。ゲイバーのオーナーは世を忍ぶ仮の姿ってわけ。
ああいう職業やってるとね、裏の情報が掴みやすいのよ。特捜を裏側からサポートしたり、情報屋と連絡とったりするのが、アタシの任務。ちなみにアタシが刑事だって知ってるのは署長とボスと特捜の連中だけ。だから、 ちゃんも、くれぐれも他言しないでね」
「わかってます。あ、それと遅れましたけど、先輩宜しくお願いしますね」
ニコッと微笑む
「キャッ、 ちゃん、かわいい♪」
そう言ってを抱きしめる月岡
「考えてみたら特捜で女はアタシたちだけだもの。仲良くしましょうね」
「はい」


おいおい……誰が女だ。も素直に答えるなよ……
川田は1人、苦笑していた。


「それにしても、ちゃん、少し元気ないんじゃないの?どうしたの?」
「……えっと。朝の出来事なんですけど……」




は、いつものように朝早く署に出勤……そして我が目を疑った……
新井田、笹川、飯島、旗上、山本の五人が屋上からロープで吊るされ(しかも逆さに)ていたのだ……。
しかも、全員、暴行を受けた形跡があった。




「フーリガン先輩たち……何か事件に巻き込まれたのかしら?」
「安心しろ
川田は少々気の毒そうに語った。
「あれは単なる懲罰だ。事件とは関係ない」
「懲罰って……?」
「深く考えるな」









その頃――

「いくらボスの命令だからって、やりすぎだ。あれじゃあフーリガンたちが可哀想だよ」
「そうだな。しかし、よりにもよってヅキの店に行くなんて……。
ヅキも罪な奴だよ。何もボスに告げ口することないのにな」
屋上で、七原と杉村が語り合っていた。
「おまえら、ふざけんじゃねぇよ!!ボスは『ノーロープ・バンジージャンプ』でもさせておけって言っただけなのに、カッとなって飛び蹴りくらわしたのは、カンフー、てめぇじゃねえか!!」
「……そ、それは……だ、だがなツッパリ、逆さ磔は、おまえのアイデアだろう!!!」
「そうだ!!それに第一、ボスの命令が出る前に銃ぶっ放したのはサンマンだぞ!!」
「言ったなギター!!断っておくが、フーリガンが他の奴より重傷なのは千草が原因だぞ!!
タッチの顔が腫れ上がっているのだって、相馬の暴行を黙ってみていた、おまえの責任だろう!!!」
「当たり前だよ!!千草と相馬の怒りの形相直視して止められる奴いるか!!?」
「……それも、そうだな」
そう、5人は特捜を出し抜いてを誘ったことがバレ、折檻をくらったのだ。
ちなみに滝口と瀬戸は下心が無かったので、減給だけで済んだそうだ。









「それよりデカチョー、例の放火犯まだつかまらないの?」
「ああ、これといった証拠もないし、第一うちの管轄じゃないしな」
「放火犯って、最近、三面記事のトップになってるやつですか?」
「そうなの。管轄が隣の町だから、うちとは関係ないんだけどね。二日前に町外れでボヤ騒ぎがあったでしょ。最初は、子供の火遊びが原因だってことだったけど、どうやら例の放火魔の仕業らしいのよ。だから、うちの署と協力して犯人逮捕すべきなんだけど、縄張り争いでこじれてるってわけ。ほんと警察って、変なことにこだわるんだから」
「放火魔ですか……」









コンコンッ、ドアをノックする音
「なんや、うるさいなぁ」
「あの、写真家の本山太郎さんですね?」
「そうだけど、なんか用か?」









「みんな燃えて無くなればいいんだ。オレを苛める奴等はみーんな燃えて……」
「やめなさい!!」
男は振り向いた。女が立っている。いや、そんなことは問題じゃない。問題は、女が銃を持っているということだ。
「赤松義生、放火の現行犯で逮捕します!!」
はポケットから、手錠を取り出した。
「掴まってたまるかぁ!!みんな、見て見ぬフリをしたじゃないかぁぁぁーーー!!!」
容疑者・赤松は、にタックルをかまし逃げ出した。
「キャアッ!!」
デブの体当たり。その場に倒れる




ああっ!!犯人が逃げていくッ、どうしよう!!!




その時だった。
「「「「動くなッ!!!!!」」」」
「サ、サンマン先輩、ギター先輩、カンフー先輩、ツッパリ先輩まで」
「ひ、ひぃぃぃーーー!!許して下さい。ほんの出来心だったんですぅぅ!!!」
「灯油まで用意して何が出来心だ。確信犯が言い逃れしてんじゃねえよ!!」
沼井が、赤松の巨体をパトカーに押し込んだ。




、大丈夫か?」
「は、はい」
三村が優しく抱き起こした。
「でも、なんで、あいつだって、わかったんだ?」
「写真です。新聞に載ってた写真をとった本山さんに、現場の写真を全部見せて貰ったんです。 放火魔は火をつけることによって自分の優越感を満足させることが動機だから、必ず現場に戻ってくるはず。
だから写真に同一人物が何枚も写っていれば、容疑者の可能性は大きいと思ったんです」
「それで、写真から割り出した赤松を尾行したってわけか」
「はい」
「でも、何で一人で、そんな危険なことしたんだよ。オレたちに言えばいいのに」
「だって、先輩たちは折檻に忙しそうだったから。迷惑かけてはいけないと思って」
……おまえって、オレが思っていた以上に賢い上に優しいんだな。ますます気に入ったぜ」
「でも、先輩たちは、どうしてここに?」
「それは簡単だ。これだよ」
三村が指差した、それは三村がにプレゼントしたキーホルダーだった。
「この中には、オレ特製の発信機が入ってるんだ」
「え”?」




それって、ストーカーじゃ……?




が、そう言おうとした時だ。
ガチャ……安全装置を外す音。何より後頭部にあたっている筒状の金属は……
「どういうことだサンマン」
低くは無いが、威圧感のある声がした。
「そ、その声は…!!」
その数秒後に駆けつけた川田が庇ってくれなければ、三村は間違いなく、あの世への片道切符を手にしていたことであろう。




メデタシメデタシ




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