「黒己、あんたってサイテー。マジ信じられない!」
「ああ?何だって、この尻軽女」
「あいつ二枚目なんだから手加減してあげればよかったのに」
「オレは紫緒と違って気色の悪い趣味はないんだよ」
黒己は櫛で、その巻き毛をとかしながら鏡を見詰めた。
「無抵抗の二枚目あんなに殴るんだもの。あんたって本当悪趣味よ。
あーん、かわいそう。そうだ!あたし慰めてあげる!!」
「ああ、そうしろそうしろ」
「じゃあね♪」
沙黄はルンルンで瞬が閉じ込められている監禁用の独房に走っていった。
その後姿を見ながら黒己は「なんてふしだらな女なんだ」と悪態をつく。


「……だが、例の女を掴まえれば、もうあんな女で欲望満たすこともない。
どんな女かな?美人かな?可愛い系かな?スマート?それともグラマーか?んー……楽しみだな」
それから、瞬の事を思い出した。

(あいつ、結局女のことは最後まで口を割らなかったな。だからⅩシリーズは嫌いなんだ。お高くとまりやがって。
自分達の身内の女を、オレたちにはさらしたくないってわけか?
フン!もったいぶりやがって。それとも、そんなにその女が大事なのか?)

瞬が独房に再び入れられた後、蒼琉は言った。
『誰でもいい。特撰兵士を一人生け捕りにしろ』――と。
本当に瞬がF5たちと本気で組むというのなら、当然彼等は敵のはず。
『だったら行動で証明してもらおうじゃないか。オレたちの目の前で処刑してもらう』
それが蒼琉が下した決断だった。半分面白がってもいた。
その為、女たちと病弱な珀朗を残して全員で特撰兵士狩りをすることになったのだ。
黒己は特撰兵士など正直興味はなかった。
それよりも彼らを探すフリをして、美恵を探そうとすでに心に決めていたのだ。


「楽しみだな……ンフフフフ」




Solitary Island―120―




「ドアが完全にロックされているわ。どうする?」
「知るか!」
美恵は溜息をつきたくなった。いや、すでについていたかも知れない。
どうしてよりにもよって、この男と二人っきりで歩いているのか。
特撰兵士の仲で唯一、今だに美恵と仲たがいしている男・勇二と。
「ねえ勇二。私のこと気に食わないのはわかっているわ。でも、今はそんなことを言っている時ではないのよ」
「オレはな!おまえのそういうところが気にくわねえんだ!上から見たような言い方しやがって!!」
普通の女の子なら溜息どころか息が詰まっていただろう。
それでも、今は一緒にいるしかない。
相手はいちいち宣戦布告してから襲ってくれるご丁寧な連中ではないのだから。


あの時、全員バラバラとなって逃げた。美恵は直人に手を引かれ、そのまま走った。
いつのまにか光子や洸と一緒に逃げていたのだが、勇二は単独だったらしい。
もっとも、『誰かと一緒ではなかったの?』と質問しても、『うるせえ』という答えしか返ってこない。
よって、最初から単独だったかどうかはわからないが。
勇二は階段を見つけ、そのまま降り、美恵たちより一階下のエリアにいた。
ウイルスによって暴走しているエレベーターが一階しか移動しなかったのは本当に運がよかった。
たとえ勇二でもいないよりはずっといいのだから。
それに美恵は勇二の性格にはもう慣れていたし(半分はあきらめだが)今は他に考える事もあった。
もちろん瞬のことだ。何とか見つけ出して、こんなバカな戦いやめるように説得しなければ。
でも冷静になって考えると、それは簡単なことではない。
攻介を殺し、無関係なクラスメイトを虫けらのように殺している瞬。

自分の説得に耳を傾けてくれるだろうか?
下手したら自分も殺されて終わりではないのか?




(……本当に皮肉なものね)

何十年も昔、科学省を裏切って逃亡した初代の高尾晃司。
その高尾晃司を始末しろと命じられた天瀬瞬は彼の従兄弟。
二代目の高尾晃司と、堀川秀明は、その初代高尾の遺伝子から生まれた。
同じように早乙女瞬は天瀬瞬の遺伝子から生まれた人間。
初代の高尾は追っ手と戦った傷が元で死んだが、同時に追っ手を皆殺しにもした。
追う者、追われる者という立場こそ逆転したが、同じことを子供達が繰り返している。
結果まで繰り返して欲しくない。どちらも死亡なんて想像しただけで胃液が逆流しそうになる。
秀明は瞬にとっては父違いの兄であると同時に、晃司にとっても母違いの兄。
瞬にとって秀明は兄であると同時に、父親(いや、この場合は単なるドナーか)の仇の息子。
複雑すぎて考えるだけで頭が痛くなってくる。
そして、美恵は上が勝手に決めたとはいえ、秀明の婚約者。
何より……瞬は同じⅩシリーズを憎むように洗脳されて育てられている。
その瞬を何とかしようなんて思うこと自体浅はかかもしれない。


(……攻介、ごめんなさい。あなたを殺した人間なのだから……だから、憎まなければならないのに……)

攻介とは本当に仲のいい友達だったのに……。
瞬を心底憎むことが出来たら、いっそ楽かも知れない。


「おい」
珍しく勇二から声がかかってきた。
「急に大人しくなりやがって、てめえ何考えている?」
「大したことじゃないわ」
「……どうせ、早乙女のことだろう。みえみえなんだよ、てめえの考えは」
「…………」
「今すぐ、あいつのところに飛んで行きたいってツラしやがって……。
気にくわねえ……晃司も秀明も気にくわねえが、てめえが一番しゃくに触る」




(……勇二とは初対面から上手く云ってなかったけど、どうしてこうなってしまったのかしら?
私なりに仲良くしようと努力してみたつもりだけど……)

最初に出会った頃は美恵に食って掛かってきたのは勇二だけではなかった。
勇二のように露骨な態度ではなかったが直人も冷たかったし徹にいたっては散々な目に合わされた。
しかし、今では普通に接してくれている。
徹にいたっては甘いくらいに優しいくらいだ。
それなのに勇二とは何も変わってない。むしろ、どんどん悪くなっているくらいだ。
(一生、勇二とは仲良く出来ないような気がするわ)
美恵は思わずハッとなった。
勇二とは今まで何度も仲直りできないと感じた事はあったが、『一生』と思ったことは初めて。


(……どうして、こんな不吉な事考えてしまったのかしら)

きっと、この異常な状況で疲れているのだ。
皆が頑張っている時に、そんな精神では足手まといになる。
(気を引き締めないと……)
今は、まず他の仲間と合流する事。
こうしている間にも時間は刻一刻と過ぎてゆく。
二日でこの基地は自爆するのだ。あのアナウンスが冗談でない限り。
(急がないと……隼人や直人の位置は大体わかるわ。まずは隼人たちを合流しないと……)
勇二が足を止めた。


「どうしたの?」
「……何かいやがる」

美恵が、その何かを確認する前に、暗闇から何かが飛び出してきた。
すかさず応戦する勇二。美恵も銃を取り出す。
20分ほど戦闘した後、数匹の死体が床に転がった。

「時間を食ってしまったわね。急ぎましょう」
「……まだだ」
「どういうこと?」
「まだいやがる……いつまで隠れている。出てきやがれ!!」














「……オレってとことん……こいつと縁があるんだな」
俊彦は頭痛がしてきた。
「おまえはいつも頭痛だな。暇な奴」
「……はいはい、どうせオレは暇ですよ」
俊彦は心底うんざりしていた。
(……なんで志郎と離れられないんだ?)
ちなみに俊彦が今一緒にいるメンバーは総数6人。俊彦と志郎、杉村夫妻、それに千秋に昌宏だ。


「なんで貴弘を見失しなったのよ。このバカ!」
「す……すまない貴子」
杉村夫妻は最愛の息子となぜか離れ離れ。そして離れたいのに離れられない俊彦と志郎はまたもや一緒。

これも運命のいたずらというやつか……神様、あんた残酷だぜ。

美恵はどこだ?美恵に会いたい」
「ああ、オレだって会いたいよ」
「だったら、早く探せ」
「探しているだろ……せかすなよ」
電灯が消えた。俊彦はすぐに懐中電灯を取り出す。
「まいったな……このエリアも電源をあいつらにやられたのか?
それとも、ブレーカが落ちたのかな。ちょっと、ここで待っててくれないか。すぐに戻ってくるから」
「その子の言うとおりだ。貴子、オレも少し離れるよ。
電源がある管理室は一つじゃない。子供だけに全て任せるわけにはいかないからな」
俊彦は志郎に、「いいか皆を守ってやれよ」と念を押した。
志郎は、「なぜだ?」と疑問を口にした。


「いいから守ってやれ。委員長は女の子だしな」
「オレは美恵以外の女には興味ない」
「……いいから守ってやれ。そうすれば美恵が喜ぶぞ」
すると志郎は、「ああ、わかった」と快諾した。
(……全く、変なところで可愛げがあるんだよな。こいつは。そうでなかったら、とても面倒なんて見切れないぜ)
俊彦はすぐに管理室に向かった。




「待って瀬名くん、あたしも行くわ」
千秋だった。
「何言ってるんだ。いいから待ってろよ、危険だ」
「どこにいても危険なんでしょう?だったら一人なんて危険すぎるわ」
俊彦は右手に銃、左手に懐中電灯を持った状態だった。
「懐中電灯はあたしが持つから。作業中照らすひとが必要でしょ?」
確かに言われて見ればそうだ。
昌宏には(守ってくれるかどうかはわからないが)志郎が付いている。
貴子は自分の身は自分で守れるだろう。
こんな時だ。助けはあったほうがいい。俊彦は千秋の好意に甘える事にした。
管理室に到着すると千秋に懐中電灯を持ってて貰い、俊彦は早速作業に取り掛かった。


「思った通りだ。配線の一部が噛み切られている。応急処置でつなげておこう。二日程度は持つ」
簡単な作業だ。数分で終わる。
「委員長、こっちを照らしてくれ。そうだ、サンキュー」
幸いなことに怪しい物音も気配もない。
音といえば、俊彦が手を動かすたびにカチャカチャと小さな音が出るだけ。
「後少しだ。簡単な故障で良かったぜ。これで電灯がつく。
早く美恵を探してやらないとな。直人が付いているから心配ないと思うけど」
美恵の名前が出た途端、千秋の表情が沈んだが、もちろん俊彦は全く気付かない。

(離れていても心配なのは天瀬さんのことなのね……)

今一番近くにいるのは自分なのに、その自分の存在に本当の意味で俊彦は気付いていない。




「瀬名くんは……」
「ん?」

俊彦は手を動かしながら、千秋の言葉に耳を傾けた。
作業中なので、振り向いて、その顔を見ることもない。だから千秋がどんな表情でいるのかも全くわからない。


「好きな女の子いるんだ」


その時、初めて俊彦は振り向いた。
すぐに、また向きなおしたが、間違いなく驚いていた。少しだけど。


「……何で」

オレって、そんなにわかりやすい人間なのか?
それとも他愛もない世間話がしたいのか?

俊彦は軍にずっといたせいか、女の子の複雑な気持ちなんて到底わからない。
だから後者だと思い軽い気持ちでこう答えた。


「ああいるぜ。委員長は?」
「いるわよ」
「そうか。付き合ってるのか?」
「ううん。あまり口もきいたことないから」
「そうか。でも委員長は美人だし、成績もいいし、クラスの奴にも人気者だろ。
きっと、上手くいくって。そいつと両想いになれるといいな」
「本当にそう思う?」
「ああ。委員長ほどの女に告白されれば大抵の男はOKって言うぜ。オレが保証してやるよ」
俊彦は深く考えずにそう言った。
こんな時だ。少しでも、千秋が頑張れるようになるのなら、と思ってのことだ。
しかし、すぐに後悔することになった。




「……瀬名くんのことが好きだって言っても?」

いくら鈍感の俊彦でも、ここで、「ああ、もちろん。だから自信もって、そいつに言えよ」なんていうわがない。
そこまで精神構造が世間離れしてはいなかった。
思えば千秋は何だか必死な口調だったし、それすらも今やっと気付いた。
今まで女にモテる男といえば、徹や薫ばかり見てきたせいか、まさかこんな展開になるなんて。
それこそ俊彦には信じられないくらいだったのだ。
何を言っていいかわからず、急に無口になった俊彦。
もちろん、作業だけは淡々と続けていたが。
その背中が、無言で千秋を拒絶しているようにも見えた。


「あたしじゃダメかな、やっぱり……」
「……そういうわけじゃないけど」
「あたし、わかっているつもりだから。瀬名くんが天瀬さんの事好きだってこと……」
俊彦にとっては一番の驚きだった。初めて手が止まった。

「でも……付き合っているわけじゃないんでしょ?期待してもいい?
あたしにも少しはチャンスあるって……。
天瀬さんとダメだったら。その時、考えてくれればいいから……それまで待っててもいい?」

男にとっては実に都合のいい告白だった。
俊彦と美恵が付き合うのを邪魔するつもりはない。
もしも上手くいかなかったら、その時に自分とのことを考えてくれればいい。
保険扱いでもいい、そう言ってくれているのだ。
しかも、相手は美恵ほどではないにしろ、美人でしっかり者、性格も悪くないと来ている。




「……終わった。すぐに戻ろう」
俊彦は歩き出した。千秋も後に続く。何も答えない俊彦に千秋は不安になった。
告白することすら迷惑だったのだろうか?
後、少しで皆のところに戻るという時だった。


「……もうフラれたも同然なんだよ。オレは美恵に」


「……え?」
「告白したわけじゃないけど……でもダメなんだ」
「どうして?」
「オレなんか比べ物にならない男がそばにいたから。
だからオレはきっぱり美恵のことあきらめたんだ。もう……一年以上も昔のことだ」
それは千秋にとっては喜ばしいことなのだろうか?
でも俊彦がやけに沈んでいるせいか、素直に喜べない。
「じゃあ天瀬さんのことは瀬名くんにとっては過去……なの?」
だったら自分にも希望はある……はずだ。はずなのだが――。


「昔も今もオレが命懸けで惚れているのは、あいつ一人だ」


「え?……だって、もうあきらめたって……」
「オレって未練たらしい男だから」
俊彦は笑っていた。何だか少し寂しそうでもあったが。
「オレと同じ立場の男がいたんだ。オレはそいつもあきらめるかと思ってた」

美恵の立場を知った時、その時、オレは正直ダメだと思った。
あいつを科学省から助けてやりたいと思った。
その為なら命も惜しくないと思った。でも、それは夢物語に過ぎないとも思った。
でも、あいつは美恵を自由にする為に戦う道を選んだ。
晃司や秀明に出来て自分に出来ないはずはない、そう言って。
その時、決めた。たとえ一人の男としてそばにいられなくても……。
あいつのように最後まで戦い続けてやろうって――。




「あいつほど強い男じゃなくても……オレにも何か出来ることがあるかもしれない。
あいつの為に何か出来ることがあるなら精一杯のことをしてやろう。そう決めた」
「…………」
「オレはずっとまともじゃない世界で生きてきた。これからもそうだ。
委員長にはオレなんかと違う、まともで優しい男が似合っている。
そういう男を捜せよ。オレなんか選んでも、絶対に幸せにはなれない」
千秋の恋ははっきりと終焉を告げた。
「わかった。ごめんなさい……こんな時にわずらわしいことを言って」
「謝るなよ。オレみたいな奴を好きなんて言ってくれて嬉しかった。サンキュー」
「……うん」

あたしも言ってよかった。言わずに後悔するよりずっといい。


「瀬名くん。最後に一つだけお願いきいてくれる?」
「オレに出来ることなら」
「さっき天瀬さんのことあきらめたって言ったけど……撤回して」
俊彦は今日は何度も千秋に驚かされるな、と思った。
「瀬名くん、自分を卑下しているけど、そんなことないわ。
あたしが不良にからまれているときに助けてくれたの瀬名くんじゃない。
他にも見ていた男子生徒は何人もいたけど、助けてくれたのは瀬名くんだけだった。
瀬名くんは十分カッコよくて強い男よ。もっと自信もって。だって、あたしが好きになったひとなんだから」

(きいたか攻介。オレがカッコイイってよ。そんなこと言われる日が来るなんてな。
あー、本当勿体無いな。こんなイイコふるなんて、オレもどうかしてるぜ)

「あ、でも、あたし応援はできないけど。だって、ゆっくんに応援するって約束したから」
本当はあたしがヤキモチ焼きだから。そのくらいは許してね。














「……オレの気配読んだってことは……んー、間違ったら悪い、おまえ特撰兵士か?」
暗闇の中から男が一人。
「……人間?」
F4ではない。人間だ。人間の男だった。
しかし美恵は本能的に危険を感じた。あの化け物たちよりずっと危険だと本能が教えてくる。
理屈ではない。全身を恐怖が駆け抜けるのだ。
それはⅩシリーズと同じ遺伝子を持つ美恵だから感じたものなのかもしれない。
「なんだ、てめえは?」
勇二も、その男に何か感じ取ったらしいが、美恵ほどでない。


「オレが特撰兵士だったら何だというんだ!?」
「生け捕りにして巣に持ち帰る」
「何だとぉ!!」
「んー、今、おまえは最高に怒りの頂点って感じー?かな。
それに、そっちの彼女……ほら、おまえどけよ、彼女の顔が見えない……だろ?」
勇二が前に立っていたせいで美恵の顔が見えてなかった。


「……あなた、もしかしてF5なの?」


美恵が勇二の影から姿を現した。
美恵の顔を見た瞬間、男の目つきが変わった。
「…………」
「答えて。あなた、どう見ても、この国の人間じゃないわ。
F5なんでしょう?」
「…………名前」
「何?」
「名前だ……おまえ、名前は?」




美恵よ。天瀬美恵」




「…………」
男は何も答えず、まるで舐めるようにジッと美恵を見た。
頭のてっぺんからつま先まで、まるで品定めをするように……。
「おい、てめえ!質問に答えろよ!!てめえはF5なのかよ!!」
「……ンフフフ」
突然、男が笑い出した。美恵はぞっとした。

(……何なの、この男)

全身鳥肌が立った。こんなこと初めてだ。


「てめえ、ふざけてるのか!!」
勇二が殴りかかっていた。
「……なっ!」
だが、男の姿が消えた。
「……どこ?」
「……ここだよ。レディ」
「!!」
背後から手がのび、美恵の顎を掴んでいた。


「まさか、こんなに早く会えるなんて……今、オレがどんな気持ちかわかるかい?
最高に……本当に、さ・い・こ・う・に……エクスタシーを感じている」
フッと、耳に息を吹きかけてきやがった!
「……この、変態!」
美恵は裏拳を男の顔目掛けて繰り出したが呆気なく止められ、無理やり体を向かせられた。
男はこれ以上ないくらい顔を近づけて、ジッと美恵を見詰めた。
「……顔、合格。ンフフフフ」
「…………」
「……期待以上だ。沙黄や翠琴より極上だぜ」
「離して!!」
美恵は男の顔に再度殴りかかった。今度は綺麗にパンチが決まった。
「……く……くくく……いいパンチ持ってるじゃねえの……ンフフフ、合格」


「自己紹介が遅れたな。オレの名前は土岐黒己だ。
会いたかったぜ。そして最高にエクスタシーだ。
思ったとおり……いや、それ以上だ。今夜が楽しみだぜ」




【残り25人】




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