「……Ⅹシリーズから連絡は入ったのか?」
「いえ……今だに」
「何をしているのだ。奴を始末するまでは到底枕を高くして眠れん」

宇佐美は焦っていた。
今まで科学省の長官として何人もの人間の運命と命を自由にしてきた人間。
それが、いざ自分の番になると焦燥と恐怖で眠る事すら出来ないらしい。
所詮はエゴイストと言ってしまえばそれまでだが。
ただ宇佐美には普通の人間と違って権力がある。
自分に恐怖をもたらす存在を抹殺できるほどの権力を。
だからこそ、それを実行しようとしているのだ。

「もう一度Ⅹシリーズに命令を送信しろ」
「はい」
「いいか、奴等から任務成功の報告がはいるまで何度でもだ。一時間……いや、30分おきに命令を送信し続けるのだ!!」

宇佐美の命令で再び同じ内容のメールが送信された。




Solitary Island―113―




「山科、早乙女。食事持ってきてやったぞ」
トレイを二つもって部屋に戻ってきた幸雄はすぐにアレ?と思った。二人の姿がない。
「まだトイレなのか?ちょっと長いな」
まあいい。少し待てば戻ってくるだろう。幸雄は軽い気持ちで待つことにした。
「……早く電気が復旧するといいけど」
皆が出てからもう20分くらいたつ。暗闇というのは正直言ってとても怖い。
目に見えない恐怖というものがもっとも厄介なものなのだろう。
懐中電灯の光などでは到底安心感など得られない。
それに、この暗闇の中、危険なことをしている父のことを考えると頭痛がしてくる。


やっと再会できた。和解もした。
後は父と一緒に母の元に戻り、家族4人やり直すだけなんだ。
だから、父には絶対に無事に戻ってきてもらわなければ。
そんなことを考えていると、突然前触れも無しにパッと部屋が明るくなった。
暗闇に慣れてしまっていた目が少しだけ痛んだが、そんなものすぐに収まった。
光だ。電気が復旧したんだ!
良かった、これで父は戻ってくる。電気が戻ったということは自由に動ける。
「……あいつらも電気が消えているから動きがとれないのかな?」
幸雄はちょっとだけ考えると、やはり待つことにした。
だが、やっぱり遅すぎると思ったのだろう、暗闇の中でトラブルが起きたのかもしれない。
幸雄は二人を迎えに行く事にした。




「早乙女、山科、何かあったのか?」
化粧室のドアを開けると幸雄はすぐに人の気配がしないことに疑問を感じた。
「……早乙女?」
いない。いるはずの二人の姿がなかったのだ。
「……どこに行ったんだよ?」
トイレはここと……それに反対側の突き当たりにもう一つあったよな?
あんな遠いほうに行ったのか?幸雄はそちらに行く事にした。
洗面台の下にカッターナイフで切られたロープがあったなんて幸雄は知る由もなかった。
廊下を歩いていると前から拓海がやってきた。
食事が終わったので、見張りに戻るために監禁用の部屋に戻るところらしい。


「内海、どうした?」
「二人ともいないんだ。トイレに行っていると思うんだけど」
「トイレならあっちだろう」
「あっちにはいなかった。だから、向こうのトイレにいったのかと思って」
「それはない。オレもさっき行ってきたが二人は来なかったぞ」
「え、そうなのか?おかしいな、だったら、どこに行ったんだよ」
「……本当に二人はいないのか?」
「ああ、そうだよ。嘘ついてどうするんだよ」
幸雄は事態の深刻さに気付いてなかったが拓海は青ざめた表情をしていた。
「……まさか」
瞬を危険だと言った晃司たち。絶対に守れと言われた警告。
あの時は、取るに足らないことだと思っていた。
この異常な状況に、あいつらが神経質になりすぎているだけだと。
だが二人が消えた。その事実に拓海は瞬に対して初めて身震いするほどの恐怖を覚え、そして走っていた。














恐ろしい叫び声。床に倒れこむ醜くグロテスクな生物。
その肉体から流れる透明の体液によって床がジュウジュウと音をたてて溶けている。
「……貴様ら何かにかまっている暇はないんだ」
瞬は一人で下の階に来ていた。襲ってくるF4たちを倒し、ひたすら階段を駆け下りていた。
やがて重々しく頑丈そうな扉の前に来た。
レベル1の危険地域。レッドゾーンと呼ばれる足を踏み入れてはならない禁断の区域。


「……奴等とⅩシリーズは決して相容れない関係だ」


奴等を覚醒させるのはオレにとっても危険だ。
Ⅹシリーズのオレを本能的に襲ってくる可能性が高い。

ドアの暗証番号入力コードに触れた手が微かに震えている。
命など当の昔に捨てたはずなのに、それでも死が怖いという感情が残っていたのだろうか?
瞬は暗証番号を入力しだした。
塩田は最低のマッドサイエンティストだったが、科学省の重要な丸秘事項まで知り尽くしていた。
だからこそ瞬も暗証番号を知っていたのだ。
重々しい音がして、ドアが自動的に開く。扉の向こうは真っ暗で何も見えない。
瞬はその深い暗闇の中に自ら足を踏み入れた――。














「電気が復旧して本当に良かったな」
「安心するのは早いぞ三村。あの化け物たちがまた暴れたら同じ事の繰り返しだ」
無事に電気を復旧させ戻る途中で三村と合流した川田。
緊急避難エリアに足を踏み入れた途端、杉村が顔面蒼白になって駆け寄ってきた。
「た、大変だ川田!!」
「どうした杉村?おまえさんの息子が非行に走ったなんてオチは無しだぞ」
「そ、そうなっても困るが、とにかく大変なことが起こった!!また……」
『また』……嫌な言葉だ。この島に来てからろくなことがない。
つまり、また何か嫌なことが起きたとすぐに判断できる。
問題はどの程度の問題が起きたかということだが。


「何が起こった?」
「……また死人が出たんだ」
川田の眼光が鋭さを増した。
「……遺体はどこだ?」
「突き当たりのトイレに……生徒の一人が見つけたんだ」

瞬と伊織が姿を消し、拓海は慌てて(男子生徒のみに)事情を話し徹底的にエリア内を探した。
その結果、トイレの掃除道具入れから、すっかり生気の失せた伊織が発見されたのだ。
第一発見者の雄太は叫び声すら上げられないほどショックを受けて腰を抜かした。
一緒にいた貴弘が伊織の首のそっと触れた。
そして一言、「ダメだな。死んでいる。完全に脈が無い」と言った。
雄太はさらにショックを受け、仰向けに倒れてしまった。
それから五分もしないうちに出掛けていた特撰兵士の何人かが戻ってきた。
そして伊織の死と、瞬の逃亡を知り大騒ぎになった。
伊織の死など正直どうでもよかったが、瞬の姿がないということで当然ながら激怒したのだ。




「てめえら、一体何してやがったんだ!?」
勇二が幸雄の胸倉掴んで怒鳴り散らす。
「あいつを逃がしただと?何の為にわざわざ警告しておいたと思っている!?」
きっちり警告を守ってさえいれば、こんな簡単に逃げられる事はなかった。
たとえ相手が民間人だろうが、到底許せるミスではなかった。
「だから、貴様等温室育ちの民間人は嫌なんだ!!」
直人も、当然のことながら激怒していた。
義父に針の穴ほどのミスさえ許されない教育を受けてきた彼には余計腹立たしかったのだろう。


「……ま、まさか……こんなことになるなんて」

瞬を普通の中学生と信じ込んだが故の失敗。そのせいで伊織が死んだ。
瞬の自由を奪っていたロープも発見された。
こうなった以上、誰も瞬が黒だとはっきり確信せざる得ない。
一番ショックを受けていたのは美恵だった。
瞬は二度も命を救ってくれた恩人だ。だが、こうなった以上、もう庇い立ても出来ない。
康一を殺したのも、自分を気絶させたのも瞬だ。
ただ一つ、どうしてもわからないことがあった。


「……どうしてなの?」

美恵は震えながら言った。

「どうして早乙女くんは、こんなことをしたの?」

そう、動機だ。なぜ、こんなことをする必要がある?


「……あのメール」

完全に削除され内容はわからない。だが、あれが原因だとしたら?
そして科学省から送信されたものである以上、返信しなければまた再送してくる可能性もある。

「電気が復旧したからコンピュータも使えるわ。もう一度メインコンピュータに繋いでみて」




「そうだな。美恵の言うとおりだ」
隼人は、瞬が何が企んでいるのなら、ここに長居も出来ない。
出発の準備をしておいた方がいい、だから美恵にその準備を頼みたいと申し出た。
「それはかまわないけど、メールを確認してから……」
「後で教えてやるから」
「……そう」
隼人が何か隠しているような気もしたが、美恵は皆の邪魔になってもいけないと言うとおりにした。
何と言っても戦場での経験では自分など足元にも及ばないのだから。
美恵がコンピュータルームから出て行くと、晶が「なぜ美恵を遠ざけた?」と質問してきた。


「……早乙女が何故美恵を殺さなかったか気になってな。
あの時は、単純に早乙女にとっては不味い内容のメールの中身を見なかったから。
だから殺す必要が無いだけかと思った。
しかし、よく考えてみろ。早乙女は二度とも美恵の命を救っている。
オレたちに本気で危害を加えようとしている奴が何故だ?」
「確かに妙だが、オレたちの信用を得るため……とも考えられるだろ」
「……美恵に危害を加えたからと言って美恵に対してはっきりと敵意を持っているかは断定できない。
オレは、そういう男を過去に知っているからな」




『オレはどうしても美恵が欲しかった。たとえ、どんな手段を使ってでも』




「隼人、おまえ、まだあの男の事を忘れてなかったのか?」
「忘れるつもりもないし、忘れてはいけないと思っている。あの時と同じだ――理由は無いが、そんな気がするんだ」
二人の会話を中断するように、「メールが届いているぞ!」と直人が大声をあげた。
すぐに全員がモニターの前に駆け寄った。
「開くぞ」
マウスをクリックする。画面にカタカナでつづられた文章が表示された。
「 『Ⅹシリーズニ……』」
それを見た特撰兵士達の顔色が変わった。
Ⅹシリーズだけは、微かに目つきが変化しただけだったが確実に驚いている。




『Ⅹシリーズニキンキュウメイレイ。サオトメシュンヲタダチニシマツシロ。
ヤツノショウタイハⅩ6ダ。タダチニショブンシロ――』




「早乙女瞬が……Ⅹ6だと?」

Ⅹ6……その言葉を確認した直後、全員がいっせいに秀明を凝視した。
そして何か言いたそうな目でジッと秀明の言葉を待った。

(……早乙女がⅩ6?)

そうか……そういうことか。それで全てがわかった――。


「……秀明」
隼人が秀明の肩に手をおいた。
「大丈夫か?」
「何がだ?」
「おまえがどんな事態だろうが冷静さを保つように訓練された人間という事はわかっている。
だが、そんなおまえにも非情な命令だからな」
「関係ない。これがオレの仕事だ」
秀明は冷静に言い放った。


「そうだ!奴が何だろうと関係ないだろ!?まして上が奴の抹殺命令を出しているんだ。これは任務だ!!」
親友を殺されている俊彦は吐き出すように叫んだ。
「秀明!まさか、身内可愛さに奴の命乞いなんてしないだろうな!?」
「するわけがない」
「それを聞いて安心したぜ」
復讐に燃える俊彦に隼人は複雑そうに言った。


「俊彦、早乙女がⅩ6というのが本当なら……」
「何だよ」
美恵はどうなる?」

美恵の名前を出した途端、俊彦は勢いを失った。

「……美恵……奴を片付けたら……美恵を泣かせちまう」




「おい、もう一通メールが来ているぞ」

直人は、「秀明、おまえにだ」と付け加えた。内容は大体見当がついていた。
かつて初代の高尾晃司が科学省を裏切った時、その刺客に選ばれたのは肉親に当たる初代の天瀬瞬だった。
科学省は非情なことに『見せしめの為に裏切り者の始末は最も近い人間にやらせる』という暗黙の掟がある。


『クリカエス。サオトメシュンヲコロセ。ヤツハカイゾウプログラムニヨリ
カガクショウヲニクミツブソウトシテイル。
キケンブンシハマッサツシロ。カナラズイキノネヲトメロ』


その事務的なはずの文章から瞬に対する恐怖が浮かび上がっていた。
科学省は他人の命を弄ぶ事は平気でするが、自分達の命が狙われることは全く覚悟がない。
余程、瞬の存在が疎ましく、そして怖いのだろう。

『ヒデアキ――』

秀明は静かに、その文章を見詰めていた。
秀明は科学省に在籍していた過去の兵士達の中に瞬と同じ能力を持つ女がいたことを記録から知っている。


『オトウトノフシマツハアニノオマエガツケロ。オマエノテデサオトメシュンヲカナラズマッサツシロ』


その女とは秀明の卵子提供者であり、そして瞬も同じだった。
つまり――秀明にとって瞬は遺伝学上とはいえ父違いの弟なのだ。














「……ここまで辿りつくのに人生の半分を使ったな」
千回殺しても飽き足らない男・塩田を始末し、逃亡に成功してから何年たった?
スラム街で、ただその日その日を生きていた時もあった。
それでも科学省に対する憎しみだけは消えなかった。
何度目が覚めても、塩田の声が聞えない。殺してやったのに、頭に奴の声が響く。
何度目が覚めても、いや何度眠りについても夢の中でさえ、あの声は途絶えなかった。
それも、やっと終わる。
科学省を倒す為の駒があるのだから。
一人では到底無理だ。だが、Ⅹシリーズと同等の力を持つものが複数いたら?
それならば、科学省を潰す事も可能だ。


それが……こいつらなんだ。


瞬は冷凍カプセルの中に横たわって眠っている7人を見詰めていた。
やっとここまできた。スイッチ一つで連中は目覚める。
だが、それは瞬にとっても大きな危険だった。
なぜなら、その七人は科学省が表向きは処分したと発表したはずの『F5』。
この島を我が物顔で歩き回っている化け物たちのトップなのだから。
F4までの化け物は動物の遺伝子から生み出された生物兵器。
対して、この七人は人間の遺伝子から生まれたという違いこそあるが強暴性と残忍性を持っていることは間違いない。
Ⅹシリーズは科学省が代々作り出してきた人間兵器の遺伝子から生まれた。
対してF5は科学省が海外から取り寄せた遺伝子から生まれた。
それは外見を見ればすぐにわかる。
準鎖国制度により、極端に外国人が少ない大東亜共和国にはまずいないはずの人種だったから。
Ⅹシリーズと同じように科学省に作り出されたとはいえ、全く異なる人間兵器。
それがF5だった。




Ⅹシリーズが誕生する前から科学省は特別養育プログラムを用意していた。
特殊な訓練と教育により、徹底して感情を押さえ込み任務に忠実な人間兵器として育て上げる。
だが、それが人間兵器を育て上げる最上の方法という確証はなかった。
その為、Ⅹシリーズとは全く正反対の人間兵器を作り出したのだ。
F5は感情的で、戦闘能力をより高める為にあえて凶暴性、残忍性を徹底して教え込まれて育った。
科学省のやり方は期待以上に効果を挙げ、7人は立派な人間兵器として成長した。
しかし、命令に忠実なⅩシリーズと違い、成長するにつれてF5はその性質ゆえに上に逆らいだした。
戦闘能力を上げるために磨き上げた凶暴性、残忍性が裏目に出たのだ。
自我に目覚め、上の命令にも逆らうようになってきた。
時には激情のままに科学省の博士を殺してしまった奴もいる。
あまりにも危険な存在になってしまっていたのだ。


だからこそ科学省は、これ以上連中を飼っていたら今にとんでもないことになると恐怖した。
飼い犬に噛まれるどころか、かみ殺される日が必ず来る、と。
だから処分することに踏み切ったはずなのに、それを決定した時何かトラブルが起きたらしい。
そのせいで、この島にいる人間は全員死亡。
管理者がいなくなったFシリーズは暴走しだしたのだ。
だが、瞬がF5の覚醒に僅かにしろ躊躇いを感じている理由はそんなことではない。
連中がどれだけ残忍だろうが強暴だろうが、むしろ好都合。
こいつらだって自分達を切り捨てた科学省を怨んでいるに決まっている。
科学省を潰すには、そういう性格のほうがずっといい。
瞬が心配しているのは、F5とⅩシリーズが絶対に相容れぬ仲だということだ。
科学省は常に完璧を目指し、どちらかを成功作品として残すことにしていた。
それゆえ、F5とⅩシリーズは生まれた瞬間からライバル……いや敵同士。
お互い反発しあうように遺伝子上仕組まれているのだ。
異性はともかく、同性同士は特に敵対心が強いらしい。




「……目覚めた途端にオレを敵だと認識して襲ってくる……かもな」

大きな賭けだ。瞬はスイッチを押した。
冷凍カプセルの封印が解かれる。

「…………」

瞬が見守る中、最初に上半身を起したのは黒髪に褐色の肌の男。
アラビアンナイトに登場しそうなエキゾチックな風貌。
どう考えても好意的ではない目でジッと瞬を睨んでくる。
ただ目覚めたばかりで頭がぼうっとしているのか、ただ見ているだけだったが。
次に起き上がったのは透けるような白い肌に白い髪の少年だった。
瞼を上げると紅い瞳。つまり、アルビノだ。
その後、連続して目を開けたのは女だった。
雪のように白い肌。そして対照的な黒髪。さらにエメラルドを連想させる翠の瞳。
対照的にもう一人の女は金髪に浅黒い肌。そしてブルーの瞳だった。
続いて小柄な少年がゆっくりと起き上がった。銀色の髪に、紫色の瞳がやけに映えてる。


(……本能的にわかる。こいつらは本来は決して味方にはなれない連中だ)


遺伝子が拒否している。女はともかく、男に対しては今すぐ飛び掛りたいくらいだ。
だが、その敵意を一瞬に押さえ込むオーラのようなものを瞬は感じた。
残りの二人。今までの連中とは格が違う。その二人が目覚めた途端、ガラッと空気が変わった。


「……貴様がオレたちを起したのか?」


不機嫌そうな表情と口調で、そう質問してきた男。
瞬から最も離れたカプセルに入っていた。
もし近くにいたら目覚めた途端に戦闘開始していたのではないか?と感じた。
殺気。それほど、強力な殺気を感じたのだ。
その燃えるような真紅の髪の男に。


そして最後に目を覚ました男がカプセルから出てきた。
背が高い。それと同様に腰まである銀色の髪。
サファイアのようなアイスブルーの瞳。切れ長の目。あまりにも整いすぎた顔立ち。
何より――まるで氷の塊ではないかと思わせるほどの冷たさを感じる。


「貴様がオレたちを目覚めさせたのか?」

そして、先ほど赤毛の男がしたのと同じ質問をしてきた。


「ああ、そうだ」
「そうか」
ドンッ!と激しい衝撃が瞬を襲った。
「……な」
その男の拳が瞬の腹に食い込んでいる。


「……貴様……」
「貴様……Ⅹシリーズだな?」


瞬が本能的に感じていた事を、相手も感じ取っていたのだ。
「……貴様っ!」
瞬は痛みを堪え一歩下がると、その顔面目掛けてケリを繰り出した。
だが、男は軽々と、それを受け止めた。
瞬は男がさらに攻撃を繰り出すと察し、反射的に背後に飛んだ。
最初に腹に受けた一撃、そのダメージで瞬はガクッと床に片膝をついた。

「Ⅹシリーズだな?」
「……ああ、そうだ」


「そうか。だったら貴様は敵だな」




【残り28人】




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