南の島でのバカンスにツナはすっかり有頂天になっていた。
青い海!青い空!まさにこの世の楽園!
(リボーンもいいところあるよなあ。たまには息抜きしろって海外旅行に連れて来てくれるなんて。
それも他の観光客は一切いないなんて。この広い島を貸しきりなんて俺すげえ幸せかも!)
「よーし、せっかくの旅行なんだ。楽しむぞ!!」
極寺君もランボもイーピンもビアンカもいないから思いっきり羽伸ばせる~!
リボーンだけは一緒だけど……ま、しょうがないよな。
旅行に連れてきてくれたんだから、同行するくらい我慢しなきゃ。
「どうしたツナ、早く楽しめ」
「ああ、思いっきり楽しむぞ――」
「君達、僕のプライベートアイランドで何しているんだい?」
「え?」
その聞きなれた恐ろしい口調にツナは顔面蒼白になって振り向いた。
「もう一度聞くけど、僕の島に何勝手に上陸してるのさ」
「ヒ、ヒヒヒヒヒ!ヒバリさんーーー!!!!!」
南の島は危険地帯
そこにいたのはフウ太の『ツナが安息の日々に最も会いたくないランキング』堂々1位の
最強最凶の不良・ヒバリこと雲雀恭弥だった。
「な、なななな……ヒ、ヒバリさんのプライヴェエエトアイルァンドゥーー!!」
「僕は群れるのが嫌いだからね。ゆっくりと1人になるためにこの島を購入したんだ。
購入資金は風紀委員を総動員して地元から集金させてもらったよ」
なんで、この人捕まらないの!?
(い、いや今はそんなこと大した問題じゃない。問題は俺の今の状況だぁ!!
ヒバリさんの島だったなんて。こ、殺される!絶対、絶対に殺される!!)
「おい落ち着けツナ」
「これが落ち着いていられるかよリボーン!!なんでヒバリさんの島に連れて来るんだよ!!
は!ま、まさか、おまえ……し、知ってて俺を連れて来たな!!」
「ふっ、なかなか鋭くなったじゃねーかツナ」
「感心している場合かよー!!」
「ねえ、君達、話し合いは終わったかい?」
「ヒ、ヒバリさん!お、俺何も知らなかったんです。お願い許してください!!」
ツナは涙ながらに命乞いした。おそらく嘆き弾以上の効果があっただろう。
しかし悲しいかな相手は雲雀恭弥。
「知らなかった……か。生憎と僕は相手の事情なんて考慮するのは苦手なんだ。
何にも囚われず、容赦なく咬み殺すほうが性にあってるよ」
「そ、そんなぁー!!リボーン、何とかしてくれよ!!」
「駄目だな。おまえを鍛えるのが俺の仕事だ、俺はプロの家庭教師なんだ」
「教え子を奈落の底に突き落とす教師がいるかよ!!」
どーしよー!このままじゃ確実にヒバリさんに殺される!!
逃げよう!そうだ、こうなったら隣の島まで逃げるしかない!!
幸い隣の島との距離は一キロくらい。カナヅキの俺だって浮き輪使えばなんとかなる。
少なくてもヒバリさんより海のほうがずっと生存確率高いよ!
「ヒバリさん、俺すぐにここから出て行きます。だから許して――」
「ふうん、かまわないけど。でも、この海でるよ」
「……え、出るって何が?」
雲雀はスッと海を指差した。
「鮫」
「いっぱい泳いでるーー!!」
尾びれがいくつも見えた。ツナはもはや意識を失う寸前だった。
いっそ気絶できたら、どれだけ幸せか。
「上陸許可をだしてあげてもいいよ」
絶望の淵にいたツナに命綱を投げてくれたのは意外にも雲雀だった。
「ほ、本当ですかヒバリさん?」
「僕もちょうど暇をもてあましてたんだ。僕とゲームをしてもらうよ」
「ゲームですか」
よかった~。そんな事で許してもらえるなんて。
ん?
待てよ。こんなシチュエーション以前どこかで……。
ツナの脳裏におぞましい過去が蘇った。
『ルールは簡単。物音を立てたら咬み殺す』
そんな恐ろしい台詞が過去の記憶から聞えてきた。
「あ、あのヒバリさん……ま、まさか……ヒバリさんが寝ている時に物音たてないってゲームじゃ」
「違うよ」
あっさりときっぱりと言いきった雲雀、ツナは心底ほっとした。
そんなツナはガチャという音と共に首に妙な圧迫感を感じた。
はっとして見ると首輪がつけられいた。それも金属製の怪しい首輪だ。
「な、何ですかコレー!!」
「何ってゲームだよ。題してバトルロワイアルゲーム」
「バ、バトルロワイアルゲーム?」
なに、その危なそうな名前!!
「ルールは簡単だよ。君と僕、どちらかが最後の1人になるまで殺しあうのさ」
!!!!!!!!!!←ツナの心の叫び
「ちょ、ちょちょちょ……ちょっと待ってくださいヒバリさん!」
「君が出発した2分後に僕も活動開始するよ。安心しなよ武器は支給してあげるから」
(安心できねえーー!!あ、待てよ、隠れていれば……)
「それから島はいくつものエリアに分かれてて、時間ごとにランダムに禁止エリアになる。
そのエリアから時間内に逃げないと、その首輪、爆発するよ」
(隠れることすらできねえーー!!もう終わりだ、俺の人生おわっちまったんだぁ!!)
「じゃ、始めてよ」
雲雀はツナに無理やりディバッグを押し付けた。
ツナはとりあえず逃げ去った。
「……ど、どうしよう。そ、そうだ、せめて武器がよければ」
ツナは最後の希望を武器に託してディバッグをあけた。
「こ、これは!」
「鍋の蓋ぁぁぁ!!!!!?」
――ツナのバカンスは始まったばかり、でしたとさ。
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