好きの言葉





「か~ずおv何をしてるの?」
「本を読んでいる」
「何の本?」
「『ICD-10』だ」
「??全然わかんない・・・。難しい本読んでるね」
「これは暇つぶしになる」
「そっか」

2-Bの昼休みの教室。
三村や七原たちは校庭でサッカーをしている。女子たちはそれぞれ他のクラスの友達のところや、トイレで化粧なおしなどに出かけていて、教室に残るものはほとんどいない。

「そうだ!和雄、暇つぶしになることしよっかv」
「・・・なんだ?」
「あたしね~、最近手話やってるんだ。教えてあげる」

そういうと、美恵は一旦自分の机に戻り、何かの本を持ってきた。

「これ、手話の本。絵で書いてくれてるからわかりやすいんだ」
「手話?」
「うん。口じゃなくて手と表情でおしゃべりするの」
「ああ、ボディランゲージのようなものか」
「そんなもんだよ。あ、じゃああたしが何言ってるか当ててみて!」

そう言って美恵は、桐山を指差し、そして左手の手のひらを前に向け、右手の親指を左手につけた。その後、右手の人差し指を立てて軽く二回振った。

「・・・あなたの名前は、何ですか」
「ええ!すごい、和雄!!何で分かるの?もしかして手話分かるの?」
「いや・・・お前の唇の動きを読んだ」
「//////////あ、動いてた?」

バカだな、あたしも・・・なんて言いながら頬に手を当てる美恵はすごく可愛い。
男心をくすぐるものがある。
表情にこそ見せないが、桐山もそんな美恵にKO負けした一人である。

「・・・ちょっと貸せ」
「え?手話の本?いいよ、ハイ。和雄も興味あるんだ~v」

熱心に手話の本を読む桐山。
その向かいでの様子を静かに見つめる美恵。

余談ではあるが、桐山は美恵といる時だけはあの独特なオーラが消えるらしい。
沼井充が少し、さみしそうに、そう言っていた。

話を戻そう。

「返す」
「もういいの?なんか覚えた?」

美恵のその言葉に桐山が小さくうなづく。

「ほんとに?やってみてvあたし、当ててみる!」

美恵のその言葉に少し、表情に変化を見せた桐山。

「・・・ダメ?」
「いや、いい。ちゃんと見てろ」
「うんv」

そこで桐山が行った手話とは・・・。

まず自分を指差し、次に美恵を指差した。
そして両手の手のひらを下向きにして、右手で左手の甲をなでるようにゆっくり回した。

それはよく、手話をあつかったテレビドラマで使われた愛の言葉。








『僕は君を愛しています』







「え・・・・・」
みるみると美恵の顔が染まっていく。
「・・・・返事はないのか?」
「あ・・・・うん」

美恵は急いで自分も手話で表した。
自分を指差したあと、両手を開いて手のひらを手前に向けて、胸の前で交互に上下に動かす。そして和雄がした手話を繰り返す。

「・・・最初のが分からない・・・なんだ?」
「『嬉しい。私もあなたが大好きよ』って言う意味v」
「ああ」
そうつぶやくと桐山は美恵の右頬に手を寄せ、左頬にキスをした。

「これも一種の表現だろう」

紅に染まった美恵の頬をなおも撫でながら、そう言った。

「和雄・・・・v大好き!!」













「ちょっと。誰か早く教室に入りなさいよ!」
「あの雰囲気を壊せるやつはそうそういねぇだろ・・・」
「充!お前行けよ!お前なら大丈夫だろ」
「んなわけねーだろ!!ボスの機嫌を損ねるような真似、オレにはできねぇ!!」
「このバカ犬・・・」
「なんだと?!」

と、廊下では何だか教室に入れない3-B生徒で埋め尽くされていたとか。
それは先生が怒鳴るまで続いたとか。
その先生は次の日から謎の急病で学校に来なくなったとか。



でもまぁ、まずまずのラヴオチということで。








きーこ様から頂きました。残念ながら、きーこ様のサイト『飴玉コレクター』は閉鎖されてしまいましたが、ご好意で素晴らしい作品を頂けきました。ありがとうございます。
それにしても桐山とヒロイン、ラブラブですね。私も、こういう作品を書けるよう日々精進しなければ!!