どこだ!?
どこに居る!?
頼む・・・!! 出てきてくれ・・・!!
俺は・・・俺は――――――
跡部の大捜索網
とにかく跡部は昔からモテていて、付き合った女の数なんて数えられないくらいであった。そんな跡部を幼馴染の鮎川悠は、また新しい女か、と思いつつ見つめてきた。例え自分に関心を示さなくても、『幼馴染』でいられれば良いと思っていた。
とある日曜日の午後に、テニス部の特別練習が開催された。近くある大会へ向けてのものである。悠はマネージャーであり当然参加の声が掛けれていた。
しかし、部活の始まる時間になっても、悠は姿を現さなかった。嫌な感覚が跡部を襲った。
何かあったのか!? だが、何の連絡も入っていない・・・。
これまでいつも跡部のインサイトがきく範囲内に居た悠はが、今や連絡が付かない存在になっている。その事実は跡部に大きくのしかかった。
跡部は他の部員に、それとなく聞いてみた。
証言1:滝「そういえば、忍足が鮎川とデートや~って言うのを聞いたけど。」
「そういえば、忍足の姿が見えねぇじゃねぇか・・・!?」
跡部の問いに、皆が、「あ、そういいえば」と声をそろえて言った。
「ちっ! いい! 俺様が直々に捜してやる!! 忍足の行きそうなのは・・・ホテルか!?」
跡部は他の部員は放っておいて、近くにあるラブホを捜しあぐいねいた。ホテルに行くに当たり、「来てねぇか!?」と二人の写真を見せる辺りは、刑事のようであった。そして、ついに忍足を見つけた。
「な、何やねん!? 跡部!!」
「悠はどうした!?」
「はぁ!? 今日は違う子や!」
「今日は!?」
「だ~、まだ誘うのに成功しとらん!!」
「ちっ! 外れか・・・! 邪魔したな。」
「ちょっと侑士、『悠』って誰? 『今日は』ってどういう意味よーーー!?」
「わ、ちょ、た、たんま・・・!! 跡部~~~~!!」
証言2:向日「今日の練習試合の相手の不二と一緒に居るのを見たぜ。」
「おっ、丁度青学の連中が来たな。」
跡部は「おい、手塚!! お前ンとこの不二はどうした!?」と、いきなり手塚に突っかかった。
「何だ? 跡部。不二なら買出しに行っているが?」
冷静に答える手塚を他所に、跡部は「何処に買出しに行ったんだ!?」と詰め寄った。まぁ、秘密にするような事でないと判断した手塚は、「○×スーパーだが・・・。」と告げた。
「○×・・・あそこだな・・・!」
跡部はそう言うと、全速力でスーパーへ向かった。
「不二!! てめぇ、俺の悠をどうした!?」
スーパーで不二を見かけるなり、跡部は不二の胸倉を掴んだ。
「やぁ、跡部じゃないか。・・・この歓迎は何だい・・・?」
にっこり笑う不二。
「俺の悠をどうした!?」
「悠? ああ、氷帝のマネージャーの悠ちゃんの事? 僕が君に話すとでも思っているのかい? 君は散々彼女を傷付けて来たじゃないか。何を今更自分の彼女のように言うんだい?」
「なんだと!?」
「当たりだろう? 悠ちゃんが君の下を離れても不思議じゃないさ。」
「不二、てめぇ!!」
「暴力かい? 進歩が無いな。それで悠ちゃんが戻るとでも?」
「不二!!」
そこまで言うと、不二はにっこりと笑みを浮かべて「知らないよ。」と答えた。
跡部は「はぁ!?」と大きな声で聞き返したが、不二は、本当に知らないんだ。何かあったのかい? と笑顔で聞いた。
「べ、別に何もねぇ。本当に知らねぇんだな?」
「ああ。残念ながら、ね。」
「なら、始めからそう言え!」
「ふふ、大事にしなよ。じゃないと」
「ああ、もう何も言うな!」
証言3:芥川「宍戸と一緒にアイスクリーム食べてるんじゃないかな~。そうしたいって話聞いた事あるけど。」
「跡部さん、宍戸さんを疑うんですか!? 宍戸さんはそんな人じゃないですよ!?」
「うるせぇ、長太郎!! 近くに美味しいアイスクリーム店が数件あったな・・・!」
跡部はダッシュして、店へ向った。鳳も後に続いた。
3件目で跡部は宍戸を捕らえた。
「わ、何だよ跡部!? 長太郎まで!!」
「宍戸~~、お前、無害そうな顔して・・・悠と・・・!! 悠は何処だ!?」
跡部は宍戸に詰め寄った。
「宍戸さん! はっきりと言って下さい! 宍戸さんの傍には俺だけで十分ですよね!?」
「な、何言ってんだ長太郎!!」
「え!? 時間が過ぎてる!? 俺の時計じゃ・・・!? あれ? 止まってる・・・。」
宍戸は自分の時計を見て固まった。偶然だが、本当に時計が止まっていたのであった。
「鮎川? 知らねぇよ。俺はただ、最近評判なこの店のアイスを食べに来ただけだぜ。」
宍戸がキョトンとして答えた。
「ちっ! 外れか!! 悠・・・何処に居るんだ!!!」
跡部が声を上げて言った。
その後、跡部は思い当たる場所を転々としたが、悠の姿を見る事は無かった。
「くそっ!!」
跡部は地面にひれ伏して嘆いた。
そんな時、「良かった~、樺地君と一緒で。」という悠の声を聞いた。始めは空耳と思った跡部であったが、藁にもすがる気持ちで声の方を向いた。
そこには、樺地と楽しく話をする悠の姿があった。
「悠!!」
「え? 景吾!? 何でこんな所に!?」
「お前を捜してたんだよ!!」
「え? 何で!?」
「何でって・・・心配してたんだよ!!」
「・・・景吾・・・?」
悠は、跡部が自分を捜していただなんて、と意外そうな顔をしていた。
「で!? ここで何してたんだ!?」
「え? ああ、景吾のラケット・・・壊れかけてたでしょ? だから新しい新しいラケットを買いに。今日の練習試合では樺地君、出る予定は無かったから付いて来て貰ったんだけど・・・。えと・・・榊監督には言っておいたけど・・・聞いてない・・・みたい・・・だね。」
それを聞いて、跡部はほっとした。そして、それと共に、悠が自分に取ってどれ程大きな存在か思い知った。
「悠!!」
「え? あ、はい!?」
「俺から離れんな・・・。」
「え?」
「俺様の傍に居ろ、と言ったんだ!」
跡部が悠の腕を掴んで抱き締めた。
「景吾・・・。」
「俺は・・・俺はお前が好きだ・・・!」
「・・・ホント・・・に?」
「ああ、ホントだ! ・・・浮気もしねぇ! だから・・・俺から離れるんじねぇ!」
「景吾・・・嬉しい・・・。私も・・・ずっと・・・好きだったんだよ?」
「過去形にするんじゃねぇ!」
「あはは、ごめん。今も・・・これからも好き・・・。」
「俺も・・・お前一筋・・・だ。」
跡部はそっと悠にキスをした。
その日の練習試合は、跡部が何とかシングル1に間に合い、見事手塚に勝利したのであった。
そして、試合の直後、跡部は皆の前で悠にキスをし、ラブラブぶりをアピールしたそうな。
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