運命



私の名前は、冬宮緋雪です。
現在行きつけの喫茶店でデート中です。
そして、私の目の前には、私にはもったいないくらいの超美形の彼氏がいます。
もう、本当にのろけじゃないけど、自慢の彼氏です。
本当に綺麗なんですよ。
長い黒髪は艶やかでサラサラで、肌だって木目が細かくて、しっとりスベスベで、
体系もスラリとしていて―――
けど、何と言っても顔!まさに天使と形容するに相応しいほどの美貌(////)
性格も、本当に優しくて、いつも私を気遣ってくれて、まさに見の心も天使としかいいようがない。
本当に、この世にいるのが信じられないくらいの素晴らしい彼氏なんです。



「来月が待ち遠しいね。早く緋雪のウェディングドレス姿が見たいよ」

私の彼氏――二宮秀喜は、にっこりとまさに天使のような笑顔で言いました。

ちなみに、私たちは来月結婚予定です。
秀喜は、私の両親にも受けが良くて、お母さんなんか「こんな綺麗な子が息子になるなんて、うれしい~!!!」と、
それはもう、狂気乱舞しそうになったほどですから。
お父さんも、秀喜のことを気に入ってくれて、即結婚をOKしてくれました♪

「きっと綺麗だろうな~。純白のウェディングドレスを着た緋雪は」
「(////)私は、タキシードを着た秀喜の方が綺麗だと思うな」

あぁ、やっぱ秀喜のこのエンジェルスマイルには敵わないわ。
付き合ってからもう何年もたつのに……。

こんなこと男の人にいうのは変かもしれないけど、秀喜は、初めて会ったときよりかなり綺麗になったな~。
はじめてあったときもすごく綺麗だったけど。
だけど、今はそう、天使の美貌に大人の色気が加わって、ますます魅力的に(////)。



秀喜との出会いは、今でも鮮明に覚えているわ。
本当に、生まれて始めて神様に感謝したくらいロマンチックで、運命的な出会いだったわ。



「おい、そこの女」

私は、学校からの帰り道に、見知らぬ男の子たち数人に声をかけられた。
その男の子たちは、全員一目で不良とわかるほど柄が悪かった。

しかも、その日私は、日直の仕事で遅くまで学校に残っていて、今は冬ということもあり、かなり暗くなっている。
私は、すぐに身の危険を感じて、彼らを無視してすぐに帰ろうとした。

「おい、ちょっと待てよ」
「そうそう。お前にどっか行かれると、俺らも困るんだよ」
「何しろ、あの人、見かけによらずおっかねぇからな~」
「おい!余計なこというな!あとで怒られるの俺なんだぞ?」
「けど、光明さん。何で俺らがこんなこと……」
「うるせぇ、黙ってろ」

柄が悪い連中の一人――「光明」と呼ばれた人は、文句を言った人たちを一発軽く殴った。

私は、これはチャンスと思い、すぐにその場を離れることにした。
しかし―――

「おい、待てよ。どこいくんだ?」

そう言って、私の腕を掴む人が柄の悪い人(この人もそうだけど)たちのほかにいた。

「おっ。すまねぇな実。おい野郎ども、公園に連れてけ」

このとき、私の脳みそは、これから起こるであろう悲劇を思い浮かべていた。
それは―――

①カツアゲ……まだマシな方だ。
②リンチ……絶対嫌!!!
③レイプ……いや~!!!そんなことされるくらいなら、死んだほうがマシよ~!!!!

とかなんとか考えているうちに、私はいつの間にか公園に連れ込まれていた。

私の周りには柄の悪い男が何人もいる(しかも、私を囲んで)。

(だ、誰か助けてーーーー!!!!!)

私は、もはや恐怖の絶頂に達していた。

しかし、悲しいかな。この公園には滅多に人が来ないので、誰かが助けてくれる可能性は、極端に低かった。

(いやーーー!!!!神様、仏様、それから、私が三歳のときに亡くなったひいおじいちゃん!!!!
もう、誰でもいいですから助けてくださいーーーー!!!!!)

私は、心の中で、我ながらものすごい声を発していた。
しかし、私が助かることなど奇跡に等しかった。

(もう、だめなの?私、この歳で……ていうか、初恋すらまだなのに、もう純潔を失うのですか?)

私は、もうプッツリと切れてしまいそうな意識を保つのに必死だった。

「おい。どうする?あの人中々出てこないぞ?」
「そうだな。しっかし美人だな~。あの人が目をつけるのもわかるぜ」
「なあなあ、あの人が来る前に、一回やっちまおうぜ?」
「いいな~それ。どうせ、あとからあの人のもんになるんだし。
そうなったらあの人は好き放題できるんだから、一回くらいいいよな?」
「そ、そうだな。報酬代わりってことで……」
「馬鹿野郎!!あの女はあの方のものになる女だぞ?お前らに汚されたら、あの方に会わす顔がねぇ」
「光明の言うとおりだ。それにお前ら、そんなことしたら絶対に命はないぞ」
「へっ!別にかまわねぇよ。それにこっちには六人もいるんだ。いくらあの人でも敵わないだろう?」

何だか、不良たちがもめていたけど、今の私は、その隙に逃げるとしう思考が働かないほどショックを受けていた。

しかし、私は、もう絶望しかけていたそのとき―――

「やめなよ。彼女が怖がってるだろ?」

澄んだ静かな声が公園に響いた。

まさに奇跡が起こったのだ―――。

不良たちは、一斉に声のした方へ振り向いた。

私は、その人の姿をはじめて見た。

そこには、信じられないほど綺麗な顔をした美少年が立っていた。
本当に綺麗で、もしかしたら、天から舞い降りた天使じゃないかと思ったくらいだ。

それからは、一瞬のできごとだった。

何と、その美少年はたった一人で、その不良たちを倒したのだ。
不良のうち二人(光明と実と呼ばれていた人たち)は、無傷のまま逃げて行ったけど――。

「大丈夫だった?」

その美少年は、私の傍に近寄ってきて心配そうに尋ねてくれた。

「……は、はい。大丈夫…です」

私は、その美少年の美貌をまじかで見たため、赤くなりながら答えた。

「そう、良かった」

美少年は、まさに天使と形容するに相応しい、優しくて綺麗な笑みを浮かべた。

私は、その笑みに思わず見惚れてしまった。
今思えば、一目惚れだったかもしれない。



その後、その美少年――もとい二宮秀喜君(さっき聞いた)は、「暗いから危ないよ」と言って、
私を家まで送っていってくれた。

本当に彼――二宮君は、姿だけでなく、心まで天使のような人だった。

私は、ずっとこのままでいたいと思った。
何だか、家に帰るのが惜しいと思った。
しかし、無情にも家にはすぐについてしまった。

「じゃあ、今度は気をつけるんだよ」

私を家の前まで送ってくれると、二宮君は、私に背中を向けて歩き出した。

「あ、あの、待ってください」

私は、思わず二宮君を呼び止めてしまった。

「?どうしたの?」

二宮君は、そんな私を不思議そうに見ていた。

「あ、あの、また会ってくれますか?」

私がそう言うと、二宮君は一瞬目を見開いたけど、すぐにあの天使のような笑みを浮かべた。

「うん。君が会いたいっていうんなら、いつでも会えるよ」

二宮君は、少しも嫌な顔をせずに、そう言ってくれた。

その日、私はずっと二宮君の顔が頭から離れなかった。



「懐かしいな~」

私は今、秀喜と始めてあった公園にいます。
もちろん、秀喜も一緒です。

「何が懐かしいんだい?」

秀喜は、不意に私が呟いた言葉を不思議そうに尋ねた。

「あのね、覚えてる?ここ、私と秀喜が始めてあった場所なの」
「覚えてるよ。俺と緋雪がはじめて会った日のこと。今まで一度も忘れたことはないよ」

秀喜は、私の言葉に本当に綺麗な天使ような笑顔で答えてくれた。

「ここで秀喜に助けてもらって、私たち恋に落ちたのよね。あの時、秀喜が助けてくれなかったらどうなってたか」

そう言った私を、秀喜は優しく抱きしめたくれた。

「ずっと守るから。これからも一生……いや、永遠に」
「ありがとう、秀喜」

私は、秀喜の言葉が本当に心底嬉しかった。



(クスクス。我ながらうまくいったね)

秀喜は、緋雪を抱きしめながら、今まで緋雪が見たこともないような、邪悪で妖艶な笑みを浮かべていた。
もちろん、その笑みは、秀喜に抱きしめられているため、緋雪には見えなかった。



あのあと―――

「まったく、嫌になるよ。俺の緋雪を汚そうなんて」

秀喜は、先ほどの天使のような表情とは打って変わって、かなり冷酷な笑みを浮かべていた。

ここは、つい先ほど秀喜が緋雪を助けた公園だった。

「ねぇ、わかってるよね?君たち」

秀喜は、つい先ほど自分が半殺しにした連中を見下ろしながら言った。
連中は、これ以上ないというほど震え上がっていた。

「まったく、君らを信用してやらせたのにさ」

そう、実を言うと、先ほど緋雪を襲った連中は、実はこの二宮秀喜の差し金だったのだ。
あれは全て、冬宮緋雪のハートを射止めるための秀喜の作戦だったのだ。
そして、秀喜の作戦は見事成功したというわけだ。

「覚悟は、できてるよね?俺の緋雪に手を出そうなんて、もってのほかだ。死んでもらうよ?
あっ、そうそう。光明と実は、下心がなかったから見逃してあげるよ」

秀喜はそう言うと、すでに病院にいかなければやばいのでは?と思えるほどの怪我を負っている連中に近づいて行った。

そして―――

「「「「「「ギャァァァァァーーーーーーーーー!!!!!!!!」」」」」」

その夜、公園にこれ以上ないというほどの苦痛に満ちた悲鳴が、あたりに響いていた。



―――現在。

(あぁ、新婚生活が今から待ち遠しいよ。早く結婚して、緋雪を俺色に染め上げたいよ)

二宮秀喜は、普段緋雪に見せている天使のような笑みとは打って変わって、
邪悪で妖艶な悪魔――いや、堕天使の笑みを浮かべていた。

(フフ。運命とは訪れるものでもなければ、切り開くものでもない。自ら作るものなんだよ)

緋雪は、秀喜の本性を結婚するまでしることはなかった――。



―――結婚後の二人の会話。

「秀喜…あなたが…こんな人だったなんて…」
「クスクス。今頃気づいたの?随分ショックみたいだね」
「………」
「そんな顔しないでよ。それとも、こんな俺と離婚する?」
「……離婚?」
「そう、離婚」
「……無理よ。だって…私、もう一生あなたから離れられない身体になってしまったんだから」
「そう。それでいいよ、緋雪。君は一生――いや、永遠に俺のものなんだから」
「そうね。私、もう秀喜から離れられない。だから、絶対離さないでね」
「もちろん。約束するよ」




昼顔さまにリクして書いて頂きました。昼顔さまのオリキャラ・秀喜の甘夢です。
秀喜の姦計にはまりおちてゆくヒロイン。……ああ、想像するだけで楽しい。
そして秀喜なしでは生きていけなくなってしまったヒロイン。
結婚後に何があったのか……ああ、かなり気になります。
でも例え腹が黒かろうが、相手が彼ならOKです。
どうか、お幸せにね♪

秀喜は昼顔さまが連載している、原作キャラ込みのオリバト『混合』に登場するキャラなので、詳しく知りたい方は昼顔さまのサイト『夢鏡』で見て下さい。
当サイトのリンクページからいけます。