「ねえ、ママ」
「どうしたの?」
「あのね、聞きたいことがあるんだけど」
「なあに?」
「パパとママはどうやって結ばれたの?」
「えっ?」
驚いて顔を上げると娘の目が好奇心で輝いていた。
「え~っと、パパとママのね、“なれそめ”っていうの?を聞きたいの」
冷や汗が流れた。
「馴れ初め・・・・・・」
「うん。恋愛結婚? それともお見合い? パパがプロポーズしたの?」
女の子特有の恋愛話専用の空気を撒き散らし、娘は美恵を見上げていた。
「馴れ初め・・・・・・」
美恵は遠い目をして、あの日のことを思い出していた。










☆責任問題☆
~あなたの真実は・・・どっち!?~






「あっ・・・・・・」
それは一瞬の出来事だった。

事件は会議室でもなく、教室でもなく、現場で起きていた。

一瞬の隙は事故の元。
至言である。




美恵は屋上でお昼を食べていた。
お馴染み光子&貴子の美人組みを含め、月岡を通じて親しくなっていった桐山ファミリーと七原・三村・杉村・川田・瀬戸・国信 の大所帯だ。
これといって問題のないお昼時間だった。

誰が美恵の隣に座るかで一悶着あったり、三村が美恵に抱きつき、それを光子が鎌で襲い、笹川・黒長・瀬戸が巻き込まれるのも、

飛び散る制服に月岡が嬌声を上げ、七原がギター片手に歌いだし、七原ガールズが召喚され、国信が場内整理を始めるのも、

押しの弱い杉村が貴子に 叱咤激励され、沼井が桐山に必死に話しかけ、タバコをふかしながら皆の様子を川田が眺めるのも、

一部、無事でない者もいるが、いつものことなので気にする者 は誰もいなかった。


ひととおりの騒ぎが収まり、美恵はデザートを食べながら女の子メンバー(+月岡)とお喋りを楽しんでいた。
天瀬」
「桐山くん」
「今日は日直だろう。用意はいいのか?」
「あっ、本当だ!」
美恵は慌ててお弁当を仕舞い立ち上がる。
日直は次の授業が始まる前に、黒板をきれいにしたり、資料を教室に持ってきたりと細々とした雑務が多い。
昼休み前の授業が終わったとき、美恵は日直だったので黒板を消してからお昼にしようと思っていた。
だが、友人達の民族大移動のようなお昼の移動に巻き込まれ、 そのまま教室を出てしまっている。
それに次の時間は数学で、小テスト用のプリントを教室へ運ばなければならない。
「みんな、私さきに戻るね」
美恵が戻るなら、私も戻るわ」
「私も」
「次は数学だろ、プリント運び手伝うぜ」
馴れ馴れしく美恵の肩に手を置く三村に、光子は鎌を投げるのではなく、カマを投げた。
「いや~ん、三村君やっさっし~いvv」
「ぎゃああああああああああああ!!!!」

(オ)カマ攻撃が思っていた以上に三村にダメージを与えたのに、光子は満足気な笑みを浮かべた。
男子たちは心から三村に同情した。
しかし、そもそも原因は美恵へのセクハラだし、何より光子が子悪魔のような微笑を浮かべていたので、 助けようとはしなかった。
美恵は友人を投げるなんて!っと思ったが、投げられた月岡が実に幸せそうだったのでよしとした。(女の友情?)
哀れ三村・・・・・・・・・・・・。

そんなゴタゴタがありながらも結局全員で教室に戻る事になり、屋上の扉を開けた。
そして先頭にいた美恵が一歩踏み出した。

ぷつん。

「えっ・・・・・・?」「天瀬!」
何かが美恵の足に引っかかった。
美恵の疑問の声と、桐山の、ひどく焦った声が重なった。
「あっ・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・!」
「「「美恵!」」」
美恵ちゃん!!」
「「「「「天瀬!」」」」」
「「「天瀬さん!」」」
「「「「「きゃああああーーーーーーーーーーー!!」」」」」
友人たちの悲鳴を聞きながら、美恵は落ちていった。
落下は見ているほうには一瞬の出来事だが、落ちている本人は妙に遅く感じるという。
美恵もその例には漏れなかったが、とっさに手すりを掴めるほどの反射神経は無い。
間に合わない。
頭から落ちた美恵は迫ってくる階段に目を閉じた。


悲鳴。





衝撃音。





そして温もり。





・・・・・・温もり?


そしてさらに大絶叫が響き、美恵は恐る恐る目を開けた。



視界いっぱいに広がる桐山の端正な顔。

一瞬見惚れた美恵だが、桐山と目が合い、頭が真っ白になった。

周りの声が酷く騒いでいるのに、それでも遠巻きに聞こえる。
落下の影響か、美恵の頭は霧がかかった様に酷くぼんやりとしていた。

少しして、自分の後ろにいたはずの桐山が何故目の前にいるのかという疑問が湧いてきた。
桐山は一言も喋らない。
尋ねようと口を開きかけ美恵は固まった。

口を開く事が出来なかったからだ。




なぜなら美恵の唇は桐山のそれとしっかり重なり合っていたのだ!!!!!




ある意味、階段から落ちて頭を怪我するよりショッキングな出来事だった。


頭の霧は吹き飛んだ。
あまりのことに、いまだ硬直して動けなかったが、自分の状態を把握し始めた。


1.目の前に桐山がいる。(重要!)

2.桐山の後ろは壁。(壁?)

3.自分の腰に桐山の腕が回されている。(恥かしい・・・)

4.どうやら、 自分が桐山の上に乗っているっぽい。(マジですか!?)

5.キスしてます。(最重要!!!)


わかったのは、なぜこんなことになっているのか全くわからないということだけだった。

「いつまでそうしてるのよ!!」
力強い光子の声と同時に、美恵は桐山から引き剥がされた――が、腰に回された腕がぐっと力を強めたので、離れたのは顔だけだった。
それでも顔が離れたことに落ち着いたのか、美恵はようやく深呼吸することができた。

「えっと・・・・・・」
天瀬」
「えっぅわぁ・・・はいっ!!(変な声でた!<恥)」
「怪我は無いか?」
「え、えと、多分大丈夫。どこも痛くないから。あっ!! 桐山くんは!?」
「問題無い」
「そう、良かった・・・・・・」
「だったら美恵を放してくれないかしら、桐山くん」
光子が般若のような顔で睨んでいる。

美恵の無事を確認して気が済んだのか、桐山は素直に美恵を放した。
慌てて立ち上がったせいか、立ち眩みを起こす美恵を光子が支える。
「大丈夫? 美恵?」
「うん・・・・・・光子、わたしどうなったの?」
「・・・・・・・・・・・・不幸な事故にあったのよ」
「え゛っ」
「いやぁぁぁぁ! 天瀬ってば大胆だな~!!」
光子の不吉な言葉に、驚く美恵にすぐ下から声が上がった。
どうやら自分と桐山は階段の3段目に座り込んで(倒れこんで?)いたらしい。
その下の3年の渡り廊下に新井田がいる。

「なにもこんな公衆の面前で桐山を押し倒してキスするなんてな~! 溜まってるのか? だったらオレが・・・・・・」
「弘樹!!」
「おうっ!」
どごぉっ!
「ぐはぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!!!!」

杉村の一撃で沈む新井田。
目や鼻や口から色んな液体を垂れ流しているが、この際無視しよう。

「おっ押し倒してキス・・・・・・・・・」
「違うのよ美恵!」
「そうよ! 美恵が悪いんじゃないわ!!」
「そうなのよ! ただちょっと、渡り廊下から見たらそう見えたってだけなのよ!! 美恵ちゃんが悪いんじゃないわ!」
光子と貴子がフォローするも、月岡の言葉が美恵にトドメを刺した。
なぜなら、現在渡り廊下には人だかりが出来ていたのだ。


気絶しそうな美恵に、3人が必死に説明したところ。
落ちた美恵を助ける為、桐山は手を伸ばしたが、間に合わないと判断するやすぐに自分も落ちたらしい。
空中で素早く美恵を抱きしめると、美恵を庇いながら階段を落ちていき、廊下に激突する前に手すりを掴んだのだ。
左手に手すり、右手に美恵、どちらの手も離さず桐山は見事落下を防ぎきった。
しかし落下中の2人の体重や落下による衝撃で、桐山は手すりの壁にぶつかり、 抱きしめていた美恵がその上に倒れこんでしまった。
キスはその時の事故だった。

落下を見ていた人間からすれば、危機一髪の中の不幸な事故だったのだが、落下後の2人しか見ていない人間からすると、
3-B 天瀬美恵、白昼堂々男子生徒(桐山和雄)を渡り廊下すぐの階段で押し倒しキス!!
に見えてしまったのだ。
ちなみに、新井田は2人の落下中、その場を歩いていたので事故だということを知っている。
先ほどの台詞はわざとである。
そのせいで廊下に沈んでいるが・・・・・・

新井田の台詞のせいで、落下後の2人を見ていない者までも 「美恵が桐山を押し倒してキスをしたらしい」と誤解が広まってしまった。


(お父さん、お母さん。美恵は、はしたない娘になってしまいました・・・・・・)


廊下の人だかりから、自分を指差してヒソヒソと小声で話しているのが聞こえる。
屋上で一緒にお昼を食べていたメンバー(桐山を除く、+七原ガールズ込み)が、周りの生徒や教師に必死に説明してくれている。
申し訳ないし、居た堪れない。
泣きそうになるのを堪えていると、それに気付いた光子が抱きついてきた。

(ドラクエ風でお楽しみ下さい)

美恵! 貴女が泣く事なんて無いわ! 悪いのはみんなアイツよ!!」
「な、なんでボスが悪い事になってるんだよ!! ボスは天瀬を助けたんだぞ!!!」
「なによ、美恵はファーストキスを失ったのよ! それでも美恵が悪いって言うの!?」

光子は鎌を振り上げた!!!!

天瀬が悪いわけねぇだろ! ふぁ、ファーストキスはそりゃ・・・残念だけど(///)でもボスだって悪くねぇんだよ!」

沼井は赤くなりながら身を守っている!

「何言ってるのよ! 世の中の事は大抵男が悪いのよ!! 男は女の消耗品よ! 使われるだけありがたいと思いなさい!!!!!」

光子は雄叫びを上げた!
男子全員がすくみあがった!
光子は女王のような輝きを放っている!!


「おっ・・・おまえ、こそっなに言ってんだよ・・・・・・・・」

沼井は怯えている!

(ここから普通に戻ります)

「特に! あたたしの美恵のファーストキスを奪った罪は重いわ!!!!! 美恵がキズモノにされるなんてっっ!!!!!!!」
(こうなったら桐山くんにがっぽり慰謝料を払ってもらわなくっちゃ!)
光子の頭の中では既に桐山は加害者にされ、美恵は被害者だ。
(変な噂で美恵が傷つくなんて許せないわ! こうなれば2人で転校するしかないわね。勿論、費用は桐山くん持ちでv
さっさと学校に見切りをつけ、美恵との新しい学園ライフを思い描いている。

桐山は階段に座ったまま(動かずにいた)その光景を見ていた。
美恵の泣きそうな顔を見ていると落ち着かない。
「彰」
「あら、なあに桐山くん?」
「オレは天瀬をキズモノにしたのか? 天瀬が泣きそうだ。 オレはどうしたらいい? ここにいるやつら全員を倒せばいいのか?」
天才的な頭脳を持つ桐山だが、情緒面が育っていない彼の行動理由は単純だ。
「そうねぇ、美恵ちゃんは困ってるし傷ついてるわ、可哀想に。
変な噂が立ったら、お嫁にいけないかもしれないし、もう学校に来なくなっちゃうかもしれないわねぇ。
桐山くんのせいじゃないけど、こんな形でファーストキスを失うなんて女なら耐えられるものじゃないもの!!!」
頬に手を当て「本当に困ったわ」と呟く月岡。(それを見てしまった男子生徒が引いている)

いま誤解が解けても、人の口に戸は立てられない。噂というものはすぐに脚色され相手を傷つけるものに変わるのだ。
桐山をはやし立てる者はいないだろうが、学校のマドンナ的存在である美恵のほうは何を言われるか、わかったもんじゃない。
なにせ、ヤクザも恐れる中学生・桐山と学校のマドンナ・美恵のキスシーンが、事故とはいえ本当にあったのだ。
ゴシップ好きのおばさんではなくても見逃せないこの話題は、当分学校から消える事は無いだろう。

桐山は「美恵が学校に来ない」という月岡の言葉に頭を占領された。
桐山財閥と何の関係も無い美恵と会えるのは学校しかない。学校に来なくなったら会えなくなってしまう。
そう思うと胸が苦しい。
なぜ胸が苦しくなるのかわからず、胸に手を当てていると光子の声が高らかに響いた。


「桐山くんが責任を取るべきだわ!!!!」


桐山の脳裏にアジトで見たドラマのシーンがよぎった。


「わかった」
「えっ?」
「オレが責任を取る」



おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっ!!!!!



廊下中にどよめきが走った。
とっくに午後の授業が始まる時間なのだが、3-Bを始め、どのクラスの生徒もここから離れようとはしなかった。
「き、桐山くん」
桐山は立ち上がると真っ直ぐ美恵の正面にやって来た。
天瀬、結婚しよう」
「ええっ!?」


「「「「ちょっと、待てーーー!!!!!」」」」


「なんてこと言うのよ桐山くん!」
「桐山ぁぁぁーーー!!!!何考えてるんだーー!!!!!」
「オレだって美恵さんのことずっと好きだったんだぞーーーー!!」
「おっ、お、お、オレもだ・・・!」
光子、三村、七原、杉村の待ったが入った。
「おまえ何考えてるんだよ!!!」
「何を怒っているんだ?」
「何って、今自分がなにを言ったかわかっているのか?!!!」
「相馬に天瀬を、『キズモノ』にしたから、責任を取るべきだと言われた。だから、オレは責任を取って天瀬と結婚する」
「おまえまだ未成年だろ!!女は16歳、男は18歳じゃないと結婚出来ないんだぞ!!」
「それは、どうにでもなる」

なるの!?


「憲法を改正させれば問題無い」


やつは本気だ・・・!


「ボスだけが悪いんじゃねえ! ボスだって被害者だ!!」
責められる桐山に忠犬沼井が吠えた。
だがその言葉は、桐山に新たな爆弾を投げる始まりを作ってしまった!!!!!

「じゃあ天瀬が責任を取るのか?







シーーーーン。







そういえば桐山が落ちたのだって美恵を助ける為だし、キスをしたのも(結果的に)美恵のほうからだ。
桐山財閥の御曹司をこんなスキャンダルに巻き込み、おまけに唇まで奪って・・・(思考中断)
そう考えると、むしろ加害者は自分のほうかもしれない・・・・・・と美恵は思い始めた。

「そっそうね、こうなったのも私の責任だし・・・・・・」
「早まるな美恵ッッ!」
美恵さんのせいじゃないよ!」
天瀬は悪くない!」
「騙されちゃダメよ!! 美恵は被害者なんだから!」
4人が口々に弁護する中、
天瀬はどちらがいいんだ?」
冷静に桐山は訪ねていた。
「私が責任を取るならどうすればいいの?」
「オレと結婚してもらう」


責任を取る→美恵が桐山と結婚する。

責任を取ってもらう→桐山が美恵と結婚する。


一緒じゃん!!!!


「どちらだ」


二者択一!?


「以外ね、桐山くんが結婚にこだわるなんて」
「テレビでも本でも『責任を取る』と言ったら結婚していたからな。結婚してみるのも悪くないかもしれないと思ったんだ」
そんな理由で!?
動揺する周りを無視して桐山は美恵の手を握った。
公衆の面前でファーストキスは失うわ、プロポーズされるしするわで、混乱中の美恵はさらに混乱した。
天瀬は俺と結婚するのが嫌なのか?」
無表情だが、その瞳はどこか悲しげに見える。
「そ、そんなことないよ!」

思わず言ってしまった。

その瞬間、今までで1番大きな絶叫が学校に響いた。

月岡は空いているほうの桐山の手を両手で握りしめた。
「婚約おめでとう。桐山君。幸せになってね♪」
「ありがとう」
さらに美恵の空いているほうの手も両手で握る。
美恵ちゃんも婚約おめでとう!!」
「ありがとう・・・・・?」
「「「「ふざけるなーーーーーー!!」」」」
「やあねぇ。みんな何怒ってるのよ。こんなおめでたい日に♪」


こうして、階段から落ちたというちょっとした事故は、大事件に発展していったのだ。















「・・・・・・ということがあってお父さんとお母さんは結婚する事になったの」
「ふーん」



アノ後は凄かった。

桐山が本当に憲法を改正させ、(本当に出来るとは思わなかった)

美恵の両親と桐山が会い、(この時のことを、一生忘れないだろう)

桐山の父親とも会い、(あの時のことは、一生忘れられないだろう)

そして中学生で本当に結婚してしまった。(式は卒業してからだったが、在学中に籍を入れたので苗字で呼ばれるのは恥ずかしかった)


なぜか新婚旅行と修学旅行が重なったというアクシデントがあったが、そのおかげでプログラムに巻き込まれなかった。
新婚旅行最後の日にそのことを桐山に聞かされた時は酷く驚いた。
多くのクラスメイトが死んでいった中、何も知らず自分は桐山と幸せな時間を過ごしていたのかと思うと申し訳なかった。
それまで教えてくれなかった桐山に「聞けば美恵が心配し、気に病むと思ったので言わなかった」と言われれば責めることなど出来ない。
聞いたところで、自分がなにかできたわけでもない。
プログラム中の三村と新婚旅行中の桐山が協力し合い、 友人たちが何人か助かったことがせめてもの救いだろう。

この時、プログラムに巻き込まれた友人達のスローガンが 「桐山だけを幸せにしてなるものか!!」というものだったことを美恵は知らない。


現在、生き残った友人たちもそれぞれの道を歩んでいる。


「ねえ、ママ」
「なぁに?」
「ママは責任でパパと結婚したの?」
娘の言葉に美恵は綺麗に微笑んだ。
「まさか。ママはね、パパが好きだったから結婚してもいいって思ったのよ。責任の為じゃないわ」
結婚に同意したのはうっかりだったが、桐山のことを密かに思っていたのも本当だ。
「そっか。よかった!」
「ふふふっ」
「それで、どっちが責任取ったの?
「・・・・・・あっパパが帰ってきたわよ」
「ええ? ほんとだ~。いってくるね~」
「・・・・・・・・・・・・ほっ。」



「パパ~、お帰りなさい」
「ただいま」
桐山は美恵に似た愛らしい笑顔を浮かべ、飛びついてきた娘を抱き上げてやる。
「さっきねぇ、ママにパパと結婚する時のお話聞いたの~♪」
「そうか」
「どっちが責任取ったの?」
「・・・・・・・・・・・・今日は他になにかあったか?」
「ん~三村のお兄ちゃんに『可愛くなったな。大きくなったらオレと結婚するか?ベイベ』って言われたよ」
「・・・・・・そうか。悪いが少し予定が入った。先に寝ているよう美恵に伝えてくれないか?」
「は~い」
「おやすみ」
「おやすみなさーいv」

ちゅっv

互いの頬に軽くキスをすると、桐山は娘を下ろし踵を返す。
娘は父の伝言を伝えるべく、母の元へと走っていった。
途中、桐山は振り返って娘の後姿を眺めると呟いた。

「やはりあの時見殺しにするべきだったか・・・・・・」

その目は完全に据わっていた。

玄関前では、執事が見計らっていたようにあるものを渡した。


バズーカ砲だ。


「他の物は全て車に積んであります。いってらっしゃいませ」
「ああ」
相変わらず優秀な執事に目を向けると、しれっとした顔で恭しく頭を下げられた。

外には桐山が仕事用で使っている車とは明らかに違う、 黒塗りの外国車が止まっていた。

桐山が乗ると、すぐに車は動き出した。

車の中で桐山は、娘が言っていた美恵と結婚するきっかけを作った事件の事を思い出していた。

美恵が階段から落ちる原因となったのは、桐山を目の仇にする他のクラスの不良たちが屋上の階段に張ったピアノ線だった。
普段から屋上は桐山ファミリーの領地のようなものだった(桐山ファミリーがいることが多い為、他の生徒はあまり来ない)ための行動らしい。
それを調べ上げた後、もう少しで美恵が大怪我をしたかもしれないということにキレた桐山ファミリーは報復に出た。
彼らの姿は、桐山ファミリー(主に桐山)によって、凄惨を極めたという・・・・・・。

(そういえば・・・・・・)

ふいに、娘の言った責任の言葉に、桐山は新井田のことを思い出だしていた。

あの時桐山は、美恵と落ちている最中に下を歩いていた新井田をクッションにして助かろうかと思っていたのだ。

美恵を助ける為なら、どんな犠牲を払っても構わない桐山だったが、美恵が悲しむかもしれないと思い、クッションを諦めたのだ。

(あの時クッションを諦めてよかった)

もし使っていたら、クッション(新井田)の責任も問題になったのだろう。

もっとも、問題になったとしても揉み消しただろうが。


城岩町の夜が静かに更けようとしていた。










・・・・・・一部の地域を除いて。


END






当サイトの常連様のけむけむさまより素晴らしいギャグ風逆ハー夢を頂いてしまいました。
もしも私だったら無理やり責任迫って結婚します(おい!)
以前、夢の中で桐山に結婚迫ったことあるような女ですからね(笑)
最後にバズーカー砲持ち出して家を出た桐山。
フフ…すっかりマイホームパパになっちゃって(ちがーう!!)
そんな桐山も素敵です。愛してますから(///)
し・か・も・まだ続きはあるんです。また、いずれアップしますね。

けむけむさま、素晴らしい作品を本当にありがとうございました。