チクショウッ! 身体が動かねぇ!!!!

これは夢だ、夢に決まってる。

だから早く覚めてくれッ!!!!!!




月と太陽――4.5――
勇二くんの見る夢~悪夢編~





「お帰りなさい。ぱぱ」

パパって誰だ? オレか? オレの事なのか!?
なんで18で子持ちにならなきゃならないんだ?
それより、オレは結婚した憶えも、孕ませた憶えもないぞ!!

……しかもなんで子供の顔が雅信なんだ!? おかしいだろ!?
こんな子供死んでもいらねぇよ!

「ただいま。うぃ~ヒック」

酔っぱらってんのかよ!
頭に巻かれてるネクタイはヤバイだろ!?
左右に揺らすな!! 気持ち悪い!

「もうあなたったら、また飲んで帰ってきたのね」

またっていつもこうなのか?

…………なんで女房役が薫なんだ!?
こんなガメツイ女房なんかごめんだ!!

色々おかしいだろ! このキャスティングは!?

「うるさい、コレが大人の付き合いってやつなんだよ」

ふん、だらしのないやつだ。
実力がないから、媚びる様な事しかできないんだよ!

………………………………それがオレの役所なのか!?
なんでオレがこんな屑みたいなダメ親父をやってんだ!!

「だからって、さいきん毎日じゃない。子供だってまだ小さいんだから少しは……」

小さい? あいつは今年で17だろ!

「うるさい、オレのことに口出しするな」

そうだな。うるさく言ってくる奴はムカツクぜ。

「きゃー」

いきなりドロップキック!?

ドメスティックバイオレンスにしてもいき過ぎだッ!!!

「ままー」

おまえそんなキャラじゃないだろ?

「ふん、オレに逆らうからだ。気分が悪い、飲み直しだ」

タンスに激突させるな!
痛いだろ!

「あなた、それはショウコの給食費……」

ショウコって……雅信!?
おまえ、娘設定か!?
ありえねーーーーーー!!!!!!!!!!!

「一家の主に逆らうな」

「あなた、やめて……きゃー」

今度はムーンサルトか!

普通、家庭内暴力でムーンサルトはやらないだろ!?

なんで酔っぱらいにムーンサルトが出来るんだよ!?

そんなことが出来るなら働き場くらいあるだろ!?

「ままー、ままー」

おまえへは違和感ありすぎだ雅信。

「どうしてもいくの?」

「止めるな」

「そんなにあの女がいいの?」

なんだ、新展開か?

「なんのことだ」

「とぼけないでちょうだい。知ってるのよ、あの女に会いにいくんでしょう」

「おまえには、関係ない」

「まぁ白々しい」

確かに。

関係ないはないだろ、自分の女房なんだし。

「あんな潰れそうなスナックに通うなんて怪しいとおもっていたのよ」

「なんでそれを……」

バレてんじゃねぇか。

「あの女のせいなんでしょ? ひどい人ね、私というものがありながら、あんな女と」

「彼女とは、まだそんな関係じゃ……」

バカだ、こいつ……。

墓穴ほりやがった。

「まだ? じゃあいつか関係を持つつもりなのね。許せない」

うぉ! 薫を近づけるな!!

…………なんで包丁持ってるんだ!?

さっきまで持ってなかっただろ!?

取り付け機能付きなのか!?

「まて、話せばわかる」

急に態度が変わったな。

今更遅いだろうが。

「もう私たえられない」

……この展開はヤバくないか?

「あなたは誰にもわたさない」

「よせ、やめるんだ」

こんな浮気してるわ、飲んだくれるわ、仕事しないわの三拍子揃った男のどこがいいんだ!?

「あなたは私だけのものよ」

包丁持った薫がぶつかってきた。


マジ痛ぇ。


「えーん、えーん」

無表情で泣いてんじゃねぇよ雅信。















「……こんなものか?」

「そうだな」

なんだ? ママゴトの感想か?

「包丁で脇腹を刺したからといって、必ず死ぬとは限らないだろう?」

「一般人のそれも女が、ひと突きで仕留めるのは難しいからな」

確かに旦那の急所を間違えたり、躊躇ったりせずに殺せる女は珍しいだろう。

「確実に殺せる方法を取るべきだ」

「なら首を飛ばすか」

そんな猟奇的な家庭内殺人はないだろッッッ!!!!!!

「なら人形をここに置け」

「余り遠くに飛ばすなよ」

首をか!?



仰向けに転がされたオレは見た。

包丁持って逆さになった薫を持っている相手を。

秀明だ。

雅信を握りつぶしそうな持ち方をしているの奴を。

志郎だ。

……じゃあオレを今まで掴んでいたのは?

「いいぞ」



おまえか晃司!!!!



そして薫が落ちてきた。

包丁と一緒に。

包丁が落ちる先は、オレの首だ。








「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」












































勇二は飛び起きた。

ついでに勢い余ってベットから落ちた。

「いッッ……!」

受け身を取ることも忘れ、床に激突した。

「……………夢、か」

勇二は現実に帰って来れたことを安堵し、自分の醜態を恥じた。

特別施設であるこの建物の部屋が防音完備で、同室者の秀明がいなかったことはせめてもの救いだろう。

「くそッ!」

自分が殺されたことや、妻役が薫(実は余り違和感がなかった)だったこと。

娘役が雅信(それも幼女だ。これには納得いかない)だったということは気に入らなかった。

が。

なにより。

晃司に自分が玩ばれるなんて!!!!!





「悪夢だ…………」





その日、勇二は食堂で朔夜を見かけ、悪夢の原因に気付いた。


END



勇二……すごい夢を見てしまいましたね。これは悪夢でしょう。
色んな意味で衝撃だったでしょうね。
とりあえず薫が妻で、雅信が娘というのが(笑)
そしてお人形遊びする三人組がこれまた……こわい!!
もっとも勇二にしてみたら晃司に玩ばれることが一番怖かったでしょうが。
これにこりて、今後は三人にあまり酷いことは……やめるわけないよなぁ…。

けむけむさま、面白い悪夢ありがとうございます。
続き頑張ってくださいね。