『もう来ない』
いつもとは違う時間、いつもの場所にいた彼は、そう言った。
『そうですか』
もっとうまく、なにかを話せればいいのに。(なにを?)
『秀明と志郎も、もう来ない』
『そうですか』
手を伸ばした。(なぜ?)
彼も、手を伸ばした。
互いに、見えない境界線上で止める。(ここから先は、行けない)
重なる事は出来ても、繋がる事はない。(何度も触れた)
『さようなら』
言うべき言葉は、これで良かったのだろうか――――?
月と太陽――4――
「ふっ、あ~~~よく寝た」
ベットで起きあがり、ぐっと背を伸ばす。
正直、朔夜の話を聞いた後で寝れるか心配だったのだ。
しかし風呂から出れば、相変わらずイチャ付いている朔夜と志郎に、なんだかほっとして無事眠ることができた。
「おい、志郎、朔夜、おまえらも起き……ッッ!!」
固まる俊彦。
2人は志郎のベットで抱き合うように寝ていた。
志郎は朔夜の肩に顔を埋める状態で眠っている。
さらされた朔夜の美貌の寝顔が麗しい。
朝っぱらからその寝顔を見るのはキツイ。(少年の諸事情より)
「んぅっ…………」
漏れる声が色っぽく聞こえるのは幻聴だ。(自己暗示)
「ん~~っ」
眠たげに目を擦る仕種が可愛いと思うのは幻覚だ。(自己暗示)
「ふぅ……あ、おはよう、瀬名君」
朝っぱらからその笑顔は犯罪だ!!(暗示失敗・制御不能)
「この犯罪者がああああああああああああああああ!!!!!!」
叫ぶと俊彦はダッシュで寝室を出ていった。
「……なにが?」
俊彦の奇行に、寝惚けているのだろうかと思い、転ばなければいいがと見当違いの心配をしていた朔夜だった。
「さくや……?」
「志郎、もう朝だよ、起きて」
ペチペチと軽く頬を叩かれて志郎はのろのろと起きあがると、そのまま朔夜に抱きついた。
「おはよう朔夜」
「おはよう志郎v」
朔夜の極上の笑顔で向けられる挨拶に、志郎は幸せな気分になった。
少年たちの、新しい一日が始まる。
「どうかしたのか俊彦?」
「風邪でも引いた?」
「なんでもない!」
赤い顔で憮然としながら、一人先に行く俊彦に、志郎と朔夜は不思議そうに付いていく。
「おはよ……! 朔夜、髪!?」
「どうかしたのか!?」
途中であった功介と直人が染料を落としてから、白いままの朔夜の髪に驚きの声をあげる。
「おはよう。蝦名君、菊地君。昨日言ったでしょ、あれは染料だって。これが地毛なんだよ」
「そうなのか?」
「そうか、驚いたぜ。オレはてっきり俊彦がなにかしたのかと…」
「ぜったいしねぇ!!!」
過剰な反応に、誰よりも俊彦自身が驚き、バツが悪そうに先に行ってると告げると4人を残して食堂に行った。
「なんだ? あいつ」
「……何かあったのか?」
「さあ……?」
「今日は朝から変だった」
食堂に着くと、みんなが朔夜の髪に驚いたが、地毛だと説明するとすぐ収まった。
朔夜を目にとめた勇二が、顔を蒼くして遠ざかった。
「どうしたんだ勇二」
「うるさい!」
「呪われたのか?」
からかい半分で言った晶の言葉に一層顔を蒼くした勇二に、少年たちが焦る。
「……本当か?」
「なにかあったのか?」
「うるさいって言ってるだろ! おまえらには関係ない!!!!」
(言えるかあんなこと!!!)
好奇心や同情の混じった視線はいっそう勇二を苛立たせ、激昂すると食堂を飛び出していった。
「相変わらず短気なやつだな」
「朔夜、本当に何かしたのか?」
隼人が朔夜に声を掛ける。
朝から何も食べたがらない朔夜は昨日と同じく、志郎にご飯を食べさせられている。
本当に食べるのが嫌いらしく、実に嫌そうだ。
「えっ? 別にたいしたことはしてないけど?」
やったんじゃん。
「なにをしたんだ?」
「呪った」
「おまえ、怖い事をあっさり言うなよ……」
「怖い? そんな怖がるようなことはしてないよ?」
「オレたちはどういう呪いが勇二に掛けられたのかわからないんだから、怖いに決まってるだろ」
「ああ、そっか」
俊彦の説明にようやく納得した朔夜は、ただ夢を見せただけだと言った。
「夢?」
「うん。ちょっと嫌な夢を見るってだけなんだけど」
「そんなこと出来るのかよ、立派な特技じゃないか」
「立派なことでも、特別な物でもないよ。たいした技でもないし」
「どんな夢をみせたんだ?」
「一応、プライバシーだから言わない。和田君に聞いて。彼が言ってもいいって、言うなら話すよ」
「あの勇二がそんなこと言うわけないだろ」
「あいつプライド高いしな」
ちなみに、勇二が見た悪夢は、質問大会中に「科学省の戦闘マシンでお人形遊びかよ!」
と侮辱する発言をしたことから、お人形遊びの夢を見せるというものだった。
「……そういえば、昨日は志郎と瀬名君の部屋に泊めて貰ったけど、今日からはどうすればいいのかな?」
朝食を食べ終わり、少し疲れた顔をした朔夜が疑問を口にした。
「またオレの部屋で泊まればいい」
「志郎!」
「俊彦は反対か?」
「俺と一緒は嫌?」
少し悲しげで、諦めた様子の朔夜に昨日の話を思い出す。
「嫌じゃない!」
朔夜本人が嫌いなわけではない。
しかし、本人に「朝、おまえの顔を見るのはツライ」とは流石に言えない俊彦であった。
「よかった~♪ ありがとうv瀬名君」
嬉しげな朔夜に、まんざら悪い気がしないのも困る要因の1つだ。
「いちいち君付けじゃなくて俊彦でいいぜ、オレも朔夜って呼んでるし」
「オレも攻介な」
「…………」
「隼人だ」
「オレも、呼びたければ晶で構わない」
「ありがとう! 俊彦、攻介、隼人、晶!」
「僕も薫でいいよ。きみとは仲良くしたいと思ってるんだ」
「ありがとう! 薫」
(金目当てか……)
愛想良く微笑む薫に誰もが思った。
1人、直人だけが名前呼びでもいいと言えず、憮然としている。
「朔夜、君に荷物が届いてるよ」
「ありがとう、佐伯君」
「徹でいいよ」
「うん。ありがとう、徹」
「雅信」
「おはよう。鳴海君」
雅信と朔夜の目が合う。
しばし見つめ合う2人。
「雅信」
「よく眠れた? 鳴海君」
「雅信」
「取り敢えず、ご飯食べたら? 鳴海君」
「雅信」
名前呼びさせたい雅信と名字呼びしかしない朔夜の地味な攻防が続く。
「オレの物になれ」
「話がすり替わってるよ、鳴海君。間に合ってるから」
「……間に合ってるってなにが?」
「変態」
「直球だな」
「それって他にもいるってこと?」
「うん。科学省にね、いたんだよ……。誰とは言わないけど田辺とか田辺とか田辺とか……」
言いまくってるよ……。
「あいつは嫌いだ」
「珍しいな、志郎がそんなことを言うなんて。知ってる奴なのか?」
「晃司が朔夜を連れて科学省に来た時、いきなり朔夜の手を握って『結婚してください』と言った男だ」
「男……」
「熱烈だな」
「そいつ、朔夜が男だってわからなかったのか?」
「朔夜が『俺は男です』と言ったら、『構いません。嫌なら貴方のために性転換の薬を発明します!!』と言っていた」
「……すごいやつだな」
「朔夜は?」
「笑って『病院へ行け』と」
その時の光景が目に浮かぶようだ。
「それからいつも付きまとうようになった」
「……もしかして、そいつが嫌でこっちに来たのか?」
「性転換の薬ねぇ、そんなの本当に作れるのかい?」
「開発中らしい。やつは開発部の中でも優秀だから、できるかもしれないと秀明が言ってた」
「ほんとにヤバイやつなんだな……」
「晃司が、ここのほうが安全だろうと言ってた」
「それなのに、ここで鳴海に目を付けられたのか……」
不憫な…………。
「性転換の薬…………オレは田辺を肯定する」
「おまえに肯定されてもな……」
「嬉しそうだな雅信」
「ホモじゃなかったの?」
「オレは朔夜が気に入っただけだ」
「両刀か……」
「ホモとか両刀というのはなんだ?」
「志郎、聞かなくていいから」
「気になる」
「俺の嫌いな人種のことだよ」
「ならいい」
巧く説明を省き志郎を納得させた朔夜にみんなが感心した。
朝の食堂はいつもより賑やかな時間となっていた。
その後、特選兵士の少年たちは訓練に向かい、朔夜は徹に教えられたとおり、荷物を取りに行った。
その日の夜、食堂で、やはり朔夜は志郎にご飯を食べさせられている。
「……おまえ、本当に嫌そうに食うよな」
「全くだ。見てるとコッチまで食欲なくしそうだ」
「いっそ、食べなければいいんじゃないか?」
晶の言葉に、朔夜は目を光らせた。
それは、睨みつけるとか殺気立つ輝きではなく、喜びの輝きだ。
「そうだね! みんなにも悪いし!! じゃあ食べるの止めるよ!」
とても嬉しそうだ様子に、晶のほうが驚いている。
「晶……」
「なんだ志郎?」
「余計な事を言うな。朔夜が食べなくなったら、お前のせいだぞ」
「……本当に食わないのか?」
頷く志郎。心なしか、晶を睨んでいる。
「……そーいや、3日間何も食わなかったんだっけ?」
「人間、水分さえちゃんと摂ってれば10日は食べなくても生きていけるよ!」
「なんでそんな敵の捕虜になった時みたいな、食生活を送らなくちゃいけないんだよ」
「栄養剤も飲んでるし。敵は捕虜に栄養剤まではくれないでしょう?」
「オレはちゃんと美味い飯が食いたいんだよ!」
俊彦の嘆きに、朔夜もうんうんと同意してみせる。
「それもそうだね、なら俺はみんなの為にも食べるのを止めるよ!
みんなは軍人として日々キツイ訓練をこなしたり、危険な任務に就いたりするんだもん。
俺のせいで食欲を激減させたら申し訳ないしね! ごちそうさま~!」
喜々として手を合わせ食事の終了を告げる朔夜に、志郎が晶を見る目付きが険しくなっていく。
確かな怒りを感じ、晶は目を逸らした。
あの程度の言葉で本当に食べるのを止めるとは思わなかったのだ。
晶は勘違いをしていた。
朔夜が食べることが嫌いだと言ったのを、ただの偏食だと思っていたからだ。
だが偏食どころではなく、朔夜は好き嫌い以前の問題で『食べること』が嫌いなのだ。
特選兵士達の食欲激減防止の為という大義名分を手に入れてしまった朔夜は、もう食べることをしないだろう。
その責任は晶にあるのだ。
志郎のほうから殺気が漂ってきている気がする。
どうしたものかと考えていると、朔夜が席を立ち、食堂から出ようとしている。
食事を再開させられる前に、逃げるつもりらしい。
マズイ……このまま逃げられたら…………。
今は志郎のみだから何とかなるだろうが、秀明や晃司が帰ってきた時、どうなるか。
負けるとは思わないが、3対1は、さすがに不利だ。
「おい、朔……」
「朔夜」
晶の声を遮って聞こえてきたのは、ここにいないはずの声だった。
「秀明、晃司!」
驚いて固まっているのか、声も出ない様子の朔夜にかわり、志郎が2人を呼んだ。
志郎の声に我に返った朔夜は、2人の元に駆け寄る。
「会いたかった……ッ!」
バックに花が咲き乱れているように見えるのは、気のせいか。
まるで映画に出てくる恋人達の感動の再会シーンのように飛びついた。
「おかえり秀明!」
「ただいま朔夜」
秀明に。
シ――――――ン。
「………………志郎」
「なんだ?」
「……朔夜は誰の何だった?」
「晃司の優勝商品だ。もう忘れたのか」
「そうじゃなくて! じゃあなんで秀明に抱きついてるんだよ!!」
「普通ここは晃司じゃないのか!?」
男が男に抱きついている時点でおかしいのだが、慣れてきたのか、その点はスルーされていた。
「朔夜はいつもああだ」
朔夜は主人を見付けて喜ぶ犬のように、はしゃいで秀明にくっついている。
秀明も慣れた様子で、頭や背中を撫でている。
「……堀川秀明……殺すッ!!!!!!!!」
ある種の喜劇のような光景も、それを見た鳴海に怒りを噴出させるだけだった。
晃司はいいのか?と誰もが思ったその時――。
「朔夜」
晃司が朔夜を呼んだ!!
・
・
・
・
・
間。
・
・
・
・
・
それだけだった。
((((((((それだけかッッ!!!!))))))))
しかし、朔夜は秀明から離れると晃司の方を見た。
「お帰り晃司」
「ただいま」
「早かったね、任務は?」
「待機中だ。連絡があり次第、任務に戻る」
「そう、お疲れ様」
「朔夜、事務員から連絡がきていた。一人部屋が用意されたらしい、これが鍵だ」
「ありがとう、秀明。荷物は先に届いてたから、部屋に持っていくね。それじゃあ」
がしっ。
「…………」
「…………」
「晃司、俺、荷物が……」
「食事が先だ」
ギクッと朔夜が顔を引きつらせた。
「いや、もう食べたし……」
「志郎?」
「途中だ」
朔夜の未来は決定した。
嫌がる朔夜を引きずり、座らせる。
「オレが食べるとみんなの食欲が失せるんだ!!」
「軍人はそんなに柔じゃない」
朔夜の必死の言葉も瞬殺された。
晃司の言葉は、朔夜だけでなく、少年たちも黙らせた。
これ以上、朔夜の食事に文句を言うと「自分は柔な軍人だ」と認めることになってしまう。
特選兵士のエリート少年がそれでいいはずがない。
結局、嫌がる朔夜は無理矢理食べさせられ、その件について少年たちは暗黙の了解とした。
ただ1人、晶だけが内心ほっとしていた。
「うぅ……ひどいやひどいや、折角これからは食べずに済んだと思ったのに」
「不可能だ」
「諦めろ、朔夜」
「食べないとダメだ」
「あぅ……」
向かいに晃司、左右に秀明と志郎の3方向から言われ、テーブルに突っ伏している朔夜の前に小瓶が置かれた。
「…………どうも」
ピンク色の小瓶は赤いリボンとハートの印が付いており、金の字で”愛の妙薬”と書かれていた。
「その見るからに怪しい薬はなんだい?」
書かれている言葉に、徹が不快さを隠しもせず聞く。
「田辺から朔夜に贈り物だそうだ」
「伝言だ『貴方の為ならいくらでも貢君になりましょう!
ネッシー・アッシー・ラッシー貴方好みに変わります!! 貴方の愛の奴隷/忠信よりv』……以上だ」
「秀明……声色まで似せなくていいから」
伝言ならカードにでも書けよっと文句を言いながら、小瓶に手を伸ばす。
今の言葉を秀明に言わせて見たかっただけだ、きっと。
……本気だったら嫌だな。
「中身は?」
「栄養剤」
「チッ」
期待した性転換の薬では無いと知り、雅信が舌打ちした。残念そうな顔をしている。
あえてそちらは見ないように、朔夜は小瓶を開けて中を確認すると、ポケットにしまった。
「ふん、ご主人様のお帰りだぜ。まぁせいぜい、尻尾振って愛想良くするんだな愛玩動物らしくよ!」
「勇二!!」
晃司が現れてから不機嫌が最高潮に達した勇二は、最悪な捨て台詞を吐くと食堂を後にした。
「また呪われてもしらないぞ……」
「愛玩動物……」
俯く朔夜。
「き、気にすんなよ朔夜」
「俊彦、オレって愛玩動物なの?」
「え、あ、いや、……」
見上げてくる様子にア○フル犬を連想したが、それでは勇二の発言を肯定しているようだと慌てて打ち消した。
「そうなるだろうな」
「晶!!」
「ここは軍の施設だ。それも特選兵士専用の特別施設だぞ。
軍人ですらない一般人が来るところじゃない。いるとしたら、愛玩用くらいだろ?」
確かに軍事施設に関係者以外の一般人がいるとすれば、そういう事を生業とした人種くらいだろう。
「晃司」
「なんだ」
「俺って晃司の愛玩動物なの?」
「……だとしたらどうするんだ?」
晃司の言葉に食堂がざわめいた。
「晃司!」
「…………ない」
「は?」
「愛が足りないぞ晃司!!」
バンッッ!!
朔夜は両手でテーブルを叩き立ち上がった。
「俺が愛玩動物だって!? 俺が愛玩動物だというなら、晃司はもっと俺を愛でるべきだろう!?
可愛がるべきだろう! 構うべきだろう!! もっと遊ぶべきだろう!!!
いつも任務でいないなんて! 俺の世話をどうするつもりだ!?」
朔夜の勢いに飲まれたのか、誰も何もいえなかった。
勇二の言った「愛玩動物」は軍のお抱え娼婦にぶつけられる俗語だ。
上官などを相手にする高級娼婦とは違い、金さえ払えば誰でも手を出せる手軽な女たちだ。
可愛がられている間は高い給金を得る事ができるが、飽きられて相手にされなくなったら終わり。
軍が契約している娼館に戻され、新しい娼婦と変えられるのだ。
戻された後の末路はロクなものでは無いという噂がある。
だから女たちは必死で男の気を引き、多くの男と関係を持ち金を稼ぐ。
「飽きたらどうせ捨てられるか、処分されるだろう」という意味の込められた言葉だったのだが……。
朔夜はそのまんまに解釈した。
すなわち、愛玩動物=ペット。
人間としての尊厳はどうしたと突っ込んでやりたいところだが、本人はいたって真剣に晃司に自分の面倒をみろと主張している。
「朔夜……わかってないな」
「気付いてすらないな、あの様子だと……」
「ある意味大物だな」
「常識の薄いやつだからね」
兎は寂しいと月へ還るんだぞ!っとまたわけのわからないことを言っている。
おそらく、兎とかぐや姫が融合しているそれは、親友に与えられたニセ常識だろう。
「ブリーダーを知っているか」
晃司の言葉に朔夜は考えてから口を開く。
「核融合のための増殖炉のこと?」
何でそんな知識はあるんだ。
「……犬の餌を推奨しているほうだ」
「晃司の口からぺ○ィグリーチ○ムが語られてる……!」
「ていうか知ってるんだ晃司……」
少年たちの衝撃も完全に無視し、晃司は続ける。
「飼い主だからといって、四六時中世話が出来るわけじゃない。
オレは任務で居ない日が多い。秀明も志郎も、いつもいるわけじゃない。
だから経験豊富なブリーダーに任せることにしている」
さり気なく飼い主である事を主張する晃司の視線は雅信に向けられている。
「雇ったのか!?」
「犬用を!?」
「……その人が俺の面倒見るわけ?」
「そうだ」
「遊んでくれる?」
「ああ」
「どんな人?」
晃司はすっと手を伸ばした。
示した先にいるのはただ1人――――――。
「任せたぞ」
「おい」
瀬名俊彦だった。
「ちょっとまて…」
「おまえの実力は志郎で証明されている。
また志郎との共同生活はおまえに新しい経験を与えただろう。
おまえの明るい性格と面倒見のよさはオレが保障しよう。
朔夜はオレたちの中では1番志郎といることが多いからな、2人共よろしく頼む」
晃司に詰め寄ろうとした俊彦の両肩を掴み、秀明が淡々と告げた。
軍人として明らかに違うところを評価されている!!!!!
この時点で、俊彦はトップブリーダー(秀明認定)になった。
「俊彦がブリーダーなんだ。 これからよろしく!」
受け入れるな朔夜。
「オレは面倒を見てもらった憶えはないぞ?」
おまえはまだ言うか志郎……!
あまりの出来事に、薄れそうな意識の中、信じてもいない神に祈ってみた。
なんとかしてくれ。
瞬間、浮かんできた神様は、金髪パンチパーマのグラサンで、雲の上でゴロ寝しながらタバコを吹かす、中年オヤジだった。
そいつはこっちを見ると、
「グッジョブ!!」
と親指を立ててきた。
……せめてラックにしてくれ。
悔し紛れにそいつに向かって中指を立ててやった。
暗転。
続く
前回がシリアスだったので、ギャップが(笑)
勇二にやった呪い、かなりすごいです。
けむけむさま、あの呪術あったら便利ですよね(笑)
そして薫……ああ、金ではなく少しは愛をしってくれよ。
そして鳴海……やっぱり、おまえは変態だったなぁ(遠い目)
とにかく、高尾と堀川が帰って来たので続き楽しみです。
けむけむさま、頑張ってください。
とりあえず俊彦にグッドラック!!