夏休みも終わりに近づいたある日。

「海に行きたい」と言ったら、

「二人だけの海を用意してやる」と言われた。









私,安藤 美奈 は今、小さな島に来ています。

目の前には真っ青な海が広がっていて、

後ろにはヤシの木とか、ヤシの木とか、名前の分からない木とか、

とにかくたくさんの木が生い茂っています。

どうやら住人はいろんな島からやって来た鳥達と、

私達二人だけみたいですvv






~楽園~








海に行きたいと言ったのは私だけどさ、

二人っきりになれるならそれに越したことは無いけどさ、

でもさぁ・・・、



無人島なんて聞いてないよ・・・。





「ここ・・・・・どこ?」

「桐山家が買い取った島のうちの一つだ」



流石は桐山家。

・・・・ってそんな問題じゃない気がするのだけれど。



「ここなら人もいないし、気兼ねなく泳げる」



相変わらず、物凄い坊ちゃんぶりですね。



「ハァ・・・」


美奈 はため息をついた。


まあ、この人の思考がぶっ飛んでるのは今に始まったことじゃ無いけどね。





「では、坊ちゃま、私はこれにて。明日の朝お迎えにあがります」

そう言って、桐山家の方々は帰っていった。



後に残ったのは二つの旅行かばんと、

最低限必要な機材と食料と、




若干幼めのアダムとイヴ。








「まあ、いつまで悩んだってしょうがないわね」


桐山を見て、にこりと微笑んだ。


「泳ぎましょ」


誰もいない海

二人だけの海

水着なんていらないわね


「お先に失礼」


生まれたままの姿になって、ザブリと海に飛び込んだ。

スイスイと泳いでいると、なんとも言えず気持ちいい。

海に抱かれてるみたい。














美奈 の泳ぐ姿は綺麗だと思う。

泳法だとか、早いだとか、遅いだとかではなしに、

泳ぐ姿が綺麗だ。

魚よりも、イルカよりも、

滑らかで、そしてとても楽しそうに泳ぐ。




「人魚のようだな」


「あら、ありがとう。じゃあ和雄は、その人魚によって海に引きずりこまれた船乗りかしらね」

くすりと美奈 が笑う。

なるほど、そうかもしれないと思った。

この女を手放すことなど到底考えられないのだから。


「和雄は泳がないの?気持ちいいわよ」


足元の海で、美奈 が手招きする。



ザブリと海に飛び込んだ。

白い水しぶきが舞う。








波紋の消えかかった水面から、

和雄がちゃぷりと顔を出した。

いつものオールバックは崩れて、

幾分幼い感じの顔。

前髪から滴る水滴が、

太陽の光を浴びてキラキラと輝く。


「綺麗・・・」


そっと手をのばして、スイと後ろへ撫で付けて、

額にそっと口付けた。

額からまぶた、頬と徐々に下がっていき、最後に唇をぺロリと舐めたら、

我慢出来ないと言わんばかりに、あなたの方から口付けてきた。

相変わらずキス上手いわね。

あなたの与える快感にそっと身をゆだねる。



船乗りは自分の方かもしれないな、と

ぼんやりとした頭で考えた。













ご飯は二人で作った。

どんな高級料理よりもおいしかったと思う。

ゼロが何個もつくような料理にか食べたことない和雄が言うんだから間違いない。


満天の星空の下、

二人で浜辺に寝転んだ。



服はいらない。

道具もいらない。

人工の物はいらない。

ルールもマナーもいらない。

繰り返しばかりの、

私達の日常はいらない。




波の音だけでいい。

星の光だけでいい

鳥のさえずりと、木々のざわめきと、

私達二人だけでいい。


だってそうでしょ?


この小さな楽園で、

私達は最初の人類なんだから。







半分だけ体を起こして和雄の方を向いた。

「ねえ、和雄?」


「なんだ?」


「アダムとイヴはどうして禁断の果実なんて食べちゃったんだっけ?」


「ヘビにそそのかされたからだ」


「そっか、じゃあ大丈夫ね」


のそのそと和雄に近づくと、覆いかぶさるようにしてその視界を遮った。



「ここには、私達を邪魔するモノなんて、何一つ無いもんね」


そう言った直後、不意に体を押され、

目の前にあなたがいるという事実は変わらないのに、

一瞬のうちに、浜辺だった背景が星空に変わった。



「たとえいたとしても、邪魔なんてさせない」


視界いっぱいにあなたが広がって、

私は静かに瞳を閉じて、

あなたに身をゆだねた。




静かで美しいこの世界に、

二人の息づかいだけが響く。

もっと求めて。

もっと愛して。

私達は愛し合う為に生まれてきたのだから。










水平線の向こうから、朝日がゆっくりと顔を出し、

私達は夢から覚めた。

夏休みも今日で終わり、

私達はまた日常へと引き戻される。


「ねえ、和雄」

「なんだ」

「来年もここに来たいな」

「わかった」






私達のエデンの園は、

他の誰も入れちゃ嫌よ。

次の夏まで、あなたと私だけの楽園にしておいて。

それまで、誰に勧められても、

りんごだけは食べないようにするからさ。





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弥枝さま、素敵な夢ありがとうございましたーー!!!
夏休みに桐山とラブラブ旅行というのが希望だったんですが、もう期待以上です。
これはもう婚前旅行、いや新婚旅行のリハーサルですよね?

2人のアツアツぶりにもう照れまくっております。

本当に素敵な作品ありがとうございました。今後もよろしくお願いします。