Shall We Dance?



文化祭の後夜祭。
城岩中学校では毎年ダンスパーティがあるのだ。
ダンスパーティといえば華やかな印象があるが、実はその裏側で、
壮絶な争奪戦が繰り広げているということを知るものは少ない。

そして、この三年B組でも、その壮絶な争奪戦が繰り広げようとしていた。

きっかけは、ある女生徒の一言だった――。

「ねぇ、典子。ダンスのパートナー決まった?」

彼女の名前は、冬宮緋雪。
彼女は、教室で、今親友の中川典子と今日の後夜祭のダンスパーティのことを話していた。

「ううん、まだよ。緋雪は決まったの?」

次の瞬間、3Bのほとんどの男子が聞き耳を立てた。
何故なら、このクラスの男子のほとんどが緋雪に思いを寄せているからだ。
つまり、緋雪はこのクラスのアイドルなのだ。

「私もまだなんだ。パートナーになって欲しい人ならいるけど、OKしてくれるかどうか?」

その言葉に3B男子は、立ち上がった。
彼らの目的は、ただ一つ。
緋雪のダンスパートナーの座をゲットすることだ。

「あっ、それって―――」

典子は、緋雪にだけ聞こえるように、小声で緋雪の想い人の名前を言った。

((((((((((だ、誰だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~っ!?))))))))))

それは、3B男子のほとんどが思ったことだった。

「うん。実はそうなんだ。よくわかったね、典子」

緋雪は、恥ずかしそうに顔を赤らめた。

((((((((((か、可愛いぃぃぃぃぃぃぃぃ~っ!!!!!!))))))))))

これも3B男子の心の叫びである。

七原(やっぱ可愛いな~、冬宮サンは)
三村(絶対ハートを掴むぜ、ベイビ☆)
杉村(……(/////))
沼井(やっぱ、可愛いよな。お、俺にはもったいねぇが、この恋に身を焦がしちまったぜ!!)
笹川(今まで付き合ってきた女と違って、やっぱいいよな、冬宮。絶対ゲットだ!!)
黒長(ら、ライバルが多すぎるけど、お、俺だってやるときゃやるぜ!!!)
大木(やっぱ、恋は一直線だぜ!!!)
元渕(ぼ、僕の父は、県政府の環境部長なんだ。冬宮さんは、僕を選ぶんだ)
新井田(俺、前から冬宮のこといいと思ってたんだよ。絶対ゲットして○○を奪うぜ)
織田(まったく、この下品な有象無象度もが。上品な女は、高貴な俺を選ぶと相場が決まってるというのに)

まあとにかく、男たちは動き出した。
たった一人の女のハートを射止める為に。
この熾烈な争奪戦を制するのは一体誰か!?
戦いのゴングは、今鳴り響いた~っ!!!

と思いきや、開始早々大木立道、元渕恭一、新井田和志、織田敏憲が脱落した~!!!!
まあ、所詮は雑魚キャラ、早期退場はやむを得ないだろう(合掌)。



「あっ、緋雪。あたし文化祭実行委員だから、そろそろ行くね」
「うん。がんばってね」

((((((チャンス))))))

典子がいなくなり、緋雪が一人となったので、男子達はそれぞれ眼を光らせた。
戦いのゴングは、今本当に鳴り響いた――。

冬宮サ~ン」

第一走者は、自覚なしの女キラー・七原秋也。
爽やかな笑顔を見せながら、緋雪に近づいてきました。

「あっ、七原君。何か用?」
「あ、あのさ。冬宮サン、ダンスのパートナー決まってないんだってね。俺もまだなんだ」
「本当!?」

緋雪の嬉しそうな声に、これは脈ありと思い誘おうとした秋也だったが――

「幸枝ー。七原君、まだパートナー決まってないって。七原君にパートナーになってもらったら?」

この一言で、秋也は、頭を鈍器で思いっきり殴られたような衝撃が走った。

「いいの?七原君」

幸枝の期待の篭った瞳に見詰められ、女に甘い秋也は――

「え、あ、うん。いいよ」

断りきれなかった……。

「よかったね、幸枝」
「うん」

秋也の耳に、無邪気な緋雪と幸枝の声がむなしく響いた――。

――七原秋也脱落。



(七原は、脱落だな。よしっ、次は俺が行くぜ)

第二走者は、バスケ部の天才ガード、プレイボーイと名高い第三の男・三村信史。

冬宮~」

信史は、それはもうファンが見たら鼻血ものの笑顔を見せながら近づいて行った。
いや、近づこうとした――。

「三村く~ん。あたしと組まない?」

お~とっ、ここで乱入者登場。
日頃から信史をストカーし続けるオカマ――未来のママさん月岡彰!!!!

「ゲッ、月岡」
「ねぇ、あ・た・し・と、く・ま・な・い?」

彰からは、逃げることを許さないというものすごいオーラが出てますね~。

(だ、誰か助けてくれ~!!!!)

信史は、心の中で叫んだ。

「ちょっと待ったー!!!!」
「「えっ?」」

お~とっ、これは意外な乱入者だ。
日頃から大人しくて目立たない女の子・松井知里が乱入したー!!!!

「あ、あたしだって……」

恥ずかしいそうに顔を赤らめながら、知里は必死な表情で何かを言おうとしますね~。
おっ!?後方では同じ女子主流派の内海幸枝や谷沢はるか、金井泉などが声援を飛ばしてますね~。

「あたしだって、三村君とパートナー組みたいもん!!!!」

知里は、ありったけの勇気を振り絞っていいました。

「なによ!?三村君はあたしと組むんだから!!!!」
「あ、あたしだって、負けないんだから!!!!」

女同士の戦いが始まりましたね~。
もう信史には選択権が二つしかありませんね。
彰を選ぶか、知里を選ぶかの二つしか。

「あ~、じゃぁ、松井で……」

信史は、知里を選びました。

「や、やったぁぁぁぁ~っ!!!!!」

知里は、勝利の喜びか、普段の大人しい様子とは打って変わって、オーバーなリアクションしてますね~。
ガッツポーズまでしてますよ。

「いやぁぁぁ~っ!!!!!三村君のバカァァァァ~っ!!!!!」

それに対して彰は、大泣きながら去っていきましたね~。

――三村信史脱落。



(よしっ!!次は俺が行くぞ)

第三走者は、強面だがシャイでいい男・拳法使い杉村弘樹。

(俺は、貴子に強い男になるって誓ったんだ。今日こそ、絶対に言うぞ!!!)

弘樹は、気合十分ですね~。

「ふ、冬宮。お、俺とパートナーを組んでくれ!!!!」

(い、言ったぞ、貴子。俺、少しは強くなれたかな?)

いえたことに満足している弘樹。

「ごめんなさい」

が、しかし、断られましたね~。

「い、いや、いいんだ。き、気にしないでくれ」

心成しか、ガクッときてますね~。
しかも、彼の場合言って撃沈してるんですから。

――杉村弘樹脱落。



「よしっ!!次は俺だ!!」
「何言ってんだ、充。俺だろ?俺」
「うるせい、竜平。俺が行くんだ!!!」
「お、俺が俺が行く」
「「無能は黙ってろ!!!!」」
「何だと!?」

お~とっ、沼井充、笹川竜平、黒長博は、喧嘩を始めましたね~。
どうしましょう?



三人が喧嘩をしていると、ガラッと、扉を開ける音がしました。

「何をやってるんだ?」

出ました、桐山和雄。
勉強、スポーツ、喧嘩、何でもできる天才!!!
その上、その信じられないほどのこの美貌!!!!
まさに完璧!!!!!
天才という言葉は、彼の為にあるようなものですね~。

「あっ、桐山君」

お~とっ、緋雪が桐山に近づいていきましたね。

「あ、あのね。桐山君……」

おや?緋雪は、何かを言おうとしてますね~。
これはもしや―――

「パートナーを組んでくれないかな?」
「えっ?」

な、なんと~!!!!
緋雪が言う前に桐山が言ったぁぁぁ~!!!!!!

「だめかな?」
「う、ううん。私も…桐山君を誘おうと思ったの」
「そうか…」
「き、桐山君!?」

なんと、大胆にも桐山和雄、緋雪を抱きしめたぁぁぁぁ~!!!!!

「このまま緋雪を離したくない」

嬉しいのはわかるけど、少し抱いたんですね~、桐山は~。
これを見た3B男子の様子は………
見なかったことにしましょうvvvvv



「いいなー、緋雪。好きな人と一緒になれて」

中川典子は、丁度桐山が教室に来たタイミングで戻っていた。
が、しかし、密かに思いを寄せていた七原秋也は、幸枝と組むことになったらしく、少し途方に暮れている。

「一人かい?おねえちゃん」

突然声をかけられ、典子は、驚いて後ろを振り返った。

「あっ、川田君」

そこにいたのは、意外にも川田章吾であった。

「うん。友達もみんなパートナーが決まったみたいで、あたしだけ決まってないの」

典子は、少し苦笑を浮かべながら言った。

「そうかい。じゃ、俺と組むかい?」

川田の意外な申し出に典子は、驚いた。

「生憎、俺も一人でね。少し寂しかったところだったんだ」

川田は、少しふざけたような口調で言った。

「フフ、そうなの?じゃあ、お願いしようかしら?」



まあ、何はともあれ、ダンスパーティは無事に行われた。

ちなみに、これはまったくの余談だが、桐山和雄と冬宮緋雪はその当日から、七原秋也と内海幸枝はその一ヵ月後から、
三村信史と松井千里はその二ヵ月後から、それぞれ付き合うようになっていた――。




『夢鏡』の昼顔さまがフリー配布していた夢を頂きました。
卒業パーティー好きなんです。かっこいいでしょうねタキシード桐山
そして他のキャラたちもそれぞれ幸せになりましたね。
まあ月岡は残念でしたけど三村で無くても知里選びますよ(笑)
昼顔さま、素敵な夢小説ありがとうございました。