「・・・・・う、うそでしょ?」
は思わず目を見開く。
いや、それどころか、茫然とした顔だった。
そんなに、の母は一言。
「嘘なんかじゃないわよぉ」

「あんた、軍事学園に転校することになったから♪」


愛の言葉は100通り





、好きだ。俺のものになれ」
さ〜ん♪ そろそろ俺のものにならない?」
「・・・・・ご、ごめんなさい」
引き攣った笑いを浮かべる
そう。これは、毎度のことだった。
軍事学園に転校してから、まだ6日目である。
なのに、二人の――――東堂細(とうどうさい)と西金黒魔(にしがねくろま)の、この告白。
城岩にいた時も、かなりのモテモテだった
当然、軍事学園でも、かなりのモテモテっぷりだった。
だが、当の本人にとっては、いい迷惑である。
なぜなら・・・・・・・・
「私・・・・好きな人いるから・・・・・・」
できるだけ相手を刺激しないように言って、立ち去ろうとする
――――が、しかし。
大胆ナンバー1の細に、その腕を掴まれる。
しかもその上、強引にも抱きしめられる。
「ちょ、ちょっと!!」
「好きな人? 初耳だな・・・・・」
少々声が怒っている。
そのうえ、隣にいる黒魔まで、笑顔を浮かべているのにオーラが怖かった。
「へぇ・・・・・好きな人・・・ね」
ニコニコ笑いながら、身動きの取れないに近づく黒魔。
そのうえ、顎を掴んで持ち上げる。
「ねえ誰? 俺? え? マジ? やっぱりぃ?」
「あ、あの・・・・・」
一人話を進める黒魔。
だが、そんな黒魔にキレたのは、ではなく細だった。
「離れろ黒魔。俺の許可無しにに近づくな」
「はい〜? 許可ってなんですかぁ?
 っていうか、キミこそ調子乗るのやめてほしいんですけどぉ」
睨み合い。
そして、凄まじい殺気。
軍事学園の奴らにとっては、たいした殺気ではないのだろうが、
はただの一般人。
こんなにも凄まじい殺気を浴び、なんだか不快になっていく。
「お、お願いだから離してよ・・・・・っ」
しかし、の言葉は無視される。
「調子に乗る? おまえの方が調子に乗ってるだろ。
 俺との邪魔だ。今すぐ消えれば許してやる」
「キミとのぉ? 寝言は寝て言うもんなんだよ? 知ってた?
 だいたいさ、そんな強引に抱きしめたら、が迷惑なんだよ」
二人は睨んだまま、黙り込む。
そして・・・・・・・

「「殺すぞ」」

一段ともの凄い殺気と、格別にもの凄い怒りを辺りに放つ二人。
これには、今まで黙っていた教室の奴らも、さすがに耐えられなくなった。
「うるせーよおまえらぁ!! いい加減にしろよ!!!」
「そうそう。ちゃんが困ってるでしょぉ?」
声を上げたのは、遊馬と彩香だった。
とくにキレているのは遊馬の方。
「毎日毎日毎日毎日、同じことのくりかえしじゃねぇかよ!!
 こちとら迷惑なんだよ!!」
「うるさい遊馬。おまえは入ってくるな」
「そうだよ遊馬く〜ん。なんなら、キミも殺していいよ?」
いつの間にか、三つ巴の戦いになっていた。
もちろん、この隙をが逃がすはずがない。
細と黒魔が目を離しているうちに、教室から出て行った。














「あーあ。なんで転校なんかになっちゃったんだろぅ・・・・」
体育館倉庫の前に座りながら、はそう呟いた。
そもそも、いまだに転校の理由はよくわかっていない。
いきなり転校するってことになったのだ。
「うぅ・・・・城岩のみんなぁ〜・・・・・・・
 七原くん、三村くん、杉村くん、川田くん、充くん・・・・・・」
前の学校のみんなが思い浮かぶ。
「光子・・・・・貴子・・・・・委員長・・・・ヅキ・・・・」
なんだか最後の方に、性別詐欺罪の名があったが、気にしないでおこう。
みんなと遊んだあの休み時間。みんなと楽しんだ授業。
「ふぇ〜ん・・・・・」
思わず涙を浮かべる
そこに・・・・・


「ここにいたのか。探したぞ・・・・・」


そこに現れたのは、細だった。
は思わず立ち上がる。
「さ、細くん・・・・・・」
「俺と二人きりになりたくて、ここに来たのか?」
クスクスと笑い声を上げる細。
は後ずさりするが、体育館倉庫の壁に肩が当たる。
しかも細は、そんなを両腕で閉じ込めた。
「・・・・・? なぜ泣いている?」
「か、関係無い・・・・っ」
「くくっ・・・・・無理矢理もいいな・・・・・」
「え!?」
細の言葉に戸惑うヒマも無く、はいつの間にか体育館倉庫に入れられていた。
中にあったマットの上に倒れ込む。
本気でヤバイと思った
「ちょ、ちょっと、いい加減に・・・・・っ」
「静かにしろ」
今までとは違う、細のその言葉。
しかも、この状況。
「や、やめて!!」
細は全く聞かない。
そのうえ、ににじり寄ってくる。
「いや・・・・っ」
の中に、一人の男が思い浮かんだ。
「来ないで・・・・・」
ずっとずっと好きだった。
いや・・・・・
今も、ずっと・・・・・・・


「いやあああっ!! 桐山くんっ!!!」

パリ―ンッ!!!


突然、の言葉と同時に、体育倉庫のガラス窓が割れた。
「え!?」
は振り返る。
もちろん細も、予期せぬ出来事に少し戸惑っている。

そこに、一人の男が立っていた。
整った顔立ち。スラッとした体躯。
ただ残念なのは、あまり表情が豊ではないこと。

「・・・うそ・・・・・っ」
・・・・・」
「桐山くん!?」

は思わず桐山に抱きついた。
桐山も、を優しく抱きとめる。
そして、細を睨んだ。
・・・・すまない・・・・・」
「え?」
「もっと早く助けるべきだった。すまない・・・・」
「う、ううん。嬉しい。来てくれて嬉しい。
 でも、なんでここに?」
「ああ。が転校したと聞いて、急いで俺も転校手続きをしたんだ。
 多少遅くなってしまった・・・・・・」
余談だが、桐山が転校したことを、城岩の連中は誰一人として知らない。
もう一つ余談だが、桐山の転校を父親は知らない。

「桐山くん・・・・・好きなの。ずっと好きだったの・・・・・」
「俺もだ。だから、ここまで来た・・・・・・」
「桐山くん・・・・・」
・・・・・・」

かなり二人の世界に入っていく。
というか、誰も入る隙が無いほどだった。
もちろん、細も・・・・・・。








その後―――――
軍事学園に転入した桐山。
そして、そんな桐山とラブラブの
「なーんでさぁ? なーんであんな表情無い男が好きなのさぁ!?」
「・・・・ふざけるな。絶対にあきらめない。は俺のものだ」
全然あきらめる気配の無い細と黒魔。
だがもちろん、はもう大丈夫。
桐山という、最愛の人が守ってくれるのだから。





―――おまけ―――

「うちの和雄がいなくなったんだ!! どうしてくれる!!」
「い、いえ・・・・その・・・・・私共も解からないことばかりで・・・・」
桐山の父親に責められる林先生。
城岩中は、もちろん大騒ぎなのだった。





『HIDE and SEEK』の夜闇さまにリクして書いて頂いた作品です。
桐山が危ない所を助けてくれるシーンが何とも言えません。
夜闇さまのオリキャラたちの暴走も期待通り楽しませてくれました。
さらに、最後に登場しただけの桐山父が、かなりいい味だしてます。
私の桐山父のイメージもこんな感じなので(ただしギャグの二次創作に限り)すごく面白かったです。
ちなみに、ヒロインに猛アタックしている細と黒魔は夜闇さまが連載している原作キャラ込みのオリバト『王様ゲーム』のオリキャラです。
詳しくしりたい方は今すぐ『HIDE and SEEK』に行って下さい。
(当サイトのリンクページにリンク貼ってます)
夜闇さま、素敵な作品、本当にありがとうございました。