あるところに母山羊と可愛い可愛い七匹の子山羊が住んでいました。
そして、その子山羊達を狙う狼がいました。
可愛い子山羊。おいしそうな子山羊。
狙っているのはあくどい狼。


七匹の子山羊


母山羊の名前は川田。
「ちょっとまてぇぇーー!!!なんで、オレが母山羊なんだ!!!?」
それは一番ふけて……もとい年長だから。
そして子山羊達は上から光子、貴子、杉村、沼井、三村、七原、そして末っ子が桐山です。
ある日、母山羊は子供達にこういいました。
「いいか、お母さんは今から買い物に行ってくる。
生木を削って火をつけ煙をだすから、それが帰宅の合図だぞ」
こうしてお母さんは出掛けていきました。
残ったのはあどけない子供たちだけ・・・。


「ウッフッフ。ちゃーんす、ちゃんす」
それを見ていた一匹の狼。
名前はヅキと言いました。
「この時を待っていたわ♪」
狼はついに子山羊捕獲作戦を実行することにしました。
「あ、いけないいけない。ちゃーんと変装しないとね」
狼はまずのど飴を飲んでしわがれ声を綺麗にしました。
そして足のすね毛を全てそると小麦粉をつけ真っ白にしたのです。
「さーてと、待っててね、アタシの子山羊ちゃん♪」









トントン……扉を叩く音。
「だーれ?」
「お母さんよ。開けてちょうだい」
とても綺麗な声。それにドアの下からのぞいてみると綺麗な白い足も見えました。
「本物のお母さんよ。さあ開けて」
「嘘つけ!!」
誰かが叫びました。
それを合図に子山羊たちは一斉に怒鳴りだしたのです。
光子「うちのママはそんな綺麗な声じゃないわ」
貴子「そうよ。ハスキーボイス通り越してテキ屋のあんちゃんみたいな声してるんだから」
杉村「足だってそんな綺麗じゃないぞ」
沼井「そうだ、おふくろはいつも運動靴はいてるくらいだからな」
三村「そんなヒールの高い赤い靴はくかよ。バカにしやがって」
七原「おまえは偽者だろう!!」
桐山「そういうのも面白いんじゃないのか?」


「…………予想外にずぼらな母山羊だったようね」
ヅキはへこみましたが、ここであきらめるわけには行きません。
「こうなったら……オカマのパワー思い知らせてあげるわ!!」
ヅキが大きく息を吸って思いっきり吐くと木の扉は一気に壊れたのでした。
沼井「ふ、ふざけるな!!それは『三匹の子豚』じぇねえか、反則だぞ!!」
「うるさいわね!!」
ヅキは沼井を捕獲すると用意した大きな袋に入れてしまいました。
「さーあ、今度はあなたたちの番よ」


貴子「簡単に掴まってたまるものですか。あたしの全存在をかけてあんたを否定してあげる」
杉村「貴子、おまえいい女になったぞ」
貴子「あんたこそ世界一カッコイイ男よ」
「なに二人だけの世界築いているのよ!!」
ヅキは二匹まとめて捕獲しました。


光子「あたしを見逃してくれたらいいことしてあげるわよ」
「アタシ、女の子に興味ないわ」
光子(し、しまった!!こいつはオカマだったわね!!)
光子は作戦を変更しました。
光子「ほ、ほんとはオレ、女に見えるけど男なんだぜ」
「おばかさん!!一部の読者にしかわからないような古いネタ使うんじゃないわよ!!」
ヅキは光子を呆気なく捕獲しました。


七原「くそ、こうなったら得意の足で……」
七原は家族で一番足が速かったのです。
(三村より0.1秒早かった。そう桐山が手を抜いていなければ)
「ばかね!アタシのストーキング殺法の前じゃあ、あんたの逃げ足なんて子供だましよ!!」
所詮、実戦で鍛えた狼には勝てずあえなく捕獲。


「……ふふ、ついにあんたの番ね」
ぎくぅ!!
「うんっ!三村くんってアタシの好みなのよ」
三村(くそ、おまえはオレを捕獲するつもりなんだな。だったら、オレを追って来い、七原たちは掴まったがオレはまだ掴まってないぞ。オレを追って来い……でも)
でも出切ればおってくるなぁぁーーー!!!!!
「きゃぁぁーー!!つかまえてた♪」
願い虚しく呆気なく捕獲。
思った――クソ!月岡、オレは結局おまえに負けたわけだ。
思った――ざまあねえや叔父さん


「さーてと、最後はあなただけね」
ヅキはニヤッと笑って振り向きました。
そう末っ子の桐山がまだ残っていたのです。
桐山はトコトコ歩くと寝室に入っていきました。
(まあ!)
ヅキは口元を押さえました。
(もしかしておねんね?でも、なんだか可愛いわね)
でもだからと言って見逃すはずありません。
ヅキはゆっくりと寝室のドアを開きました。
「き・り・や・ま・く・ん・ね・ちゃ・っ・た・の?」


ぱららら!!!!!


「きゃぁぁぁーーー!!!!!!」
なんと桐山はイングラムM10マシンガンをぶっぱなしてきたのです。
「な、なんて危ない子よ!!あなたって本当にメチャクチャね!!」
ヅキは袋を担ぐとさっさと逃げていったのです。









「ただいま。今、帰ったぞ」
お母さんが帰ると家中あらされ、おまけに子山羊達の姿がありません。
「狼がきて連れて行ったぞ」
「……桐山、無事なのはおまえだけか?」
「ああ、そういうことになるな」
お母さんは煙草を取り出すとそれに火をつけ悲しそうに言いました。
「……オレは子供たちを守ってやれ無かったよ」









「さあ、よってらっしゃい、みてらっしゃい」
その頃、ヅキはとあるオークション会場にいました。
「さあ、この可愛い子山羊の七原くん。3万円からスタートよ」
雪子「5万!!」
恵「8万!!」
友美子「10万!!」
典子「30万!!」
「30万ね。さあ、他にいない?いなかったら30万で落札よ~」
幸枝「50万!!!!!」
「売るわ!!50万、お買い上げありがとうございました~」


「さあ、次はアイドルのように愛くるしい光子ちゃんよ」
光子「例の話、間違いないでしょうね?」
「ええ。飼い主からすぐに逃げてらっしゃい、そしたらまた新しい飼い主に売るわ。
そうやってお金だけ騙し取って代金は山分けよ」
光子「そう、じゃあはりきっていくわよ」


こうしてヅキは幸せになりましたとさ。
メデタシメデタシ。


~END~


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