「よく帰って来たな歓迎するぜ」
「……川田」
桐山の襲撃により引き離された七原と川田。
いや、そんなことはもうどうでもいい。
こうして再び巡り合えたのだから……。
しかし七原は違和感を覚えた。
何かが足りない――。


「川田……典子は?」




~悪夢~




「とにかく……死ぬかと思ったよ」
七原は川田に全てを話した。
桐山とリアルな鬼ごっこを繰り広げた挙句銃弾を受けたこと。
そして崖から落ちたこと。
意識を失ったこと。
だが自分は生きている。
そう、ありがたいことに生きているのだ、奇跡的に。
「そうか……大変だったな七原」
川田はスープをすすりながら聞いてくれた。
「おまえも食べるか?腹減っているんだろ?」
「ああ……オレはいいよ。それより、なあ川田」
七原はずっと違和感を感じていた。
その違和感に気付いたのだ。
そして、その違和感の理由を川田に問うた。


「典子はどうしたんだ?」


典子がいない。川田に託したはずの典子が。
川田は何も言わずスープを飲んでいた。
「あの……川田。典子は?」
「…………」
「……川田?」
「…………」
「…………」
「…………」
川田は相変わらずスープを飲んでいた。
美味しそうに……。
「川田?」
「おまえも食べるか?タンパク質とカルシウムは必要だろ」

「…………」



















「案外、すじばっていたな」



















「ぎゃぁぁぁぁーーーーーー!!!!!」


ガバァ!!七原は飛び起きた。
「良かった。目が覚めたのね」
幸枝が静に微笑んでいた。
「委員長……。中川典子と川田章吾は?」
「典子も川田くんも生きていると思うわ。二人とも名前呼ばれてないから」
七原は心底ホッとした。
良かった……ただの夢だった。




それから幸枝とは色々と話した。
幸枝が何人も仲間を集めたこと。
この灯台に立てこもっていること。
何より七原を助けてくれたこと。
そう助けてくれたのだ、このクソゲームの最中に。
七原はいつか国信に言ったことを思い出した。




『内海は結構いいぜ。オレ、ああいうしゃきしゃきした女好きだ』




委員長、君はきっといい奥さんになる

いや、いい女になる

もうすでにいい女かもしれない

オレはずっと昔から、そう思ってた――。




感傷に浸っている場合ではないが七原は心底そう思った。
もしも、そうもしもこんなクソゲームに投げ込まれなかったら、オレは君の事好きになっていたかもしれないな。
こんなクソゲームの最中だから、そう思うのかもしれない。
でも、少なくても今オレは本気でそう思っているんだ。




「いま、ちょうどご飯作っているのよ」
幸枝が弾んだ声で言った。
「ごはん?」
「うん、シチュー」
「シチューか…」
そういえば、おなかペコペコだ。
「でも、よく材料とか集められたな」
「うん、後ねお肉だけが手に入らなかったんだけど、タイミングよく見付かったの」




気のせいだろうか?幸枝がニヤっと笑ったような気がした。




「だからね……」
「…………」




「後はお肉入れるだけで完成なのよ」




~END~




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