中学時代誰もが経験しただろう?
そう、特に授業をするわけでもなく
生徒たちが、おのおの自由に過ごすもよし
ミーティングをするもよし
もしくは、クラスでちょっとした出し物をするという
学芸会じみた見世物発表会を
☆ザ・マジックショー☆
「ご亭主様が家に帰っても、出迎えるのは犬だけなんだよ」
「それは、あんた。自業自得っていうもんでしょ」
「「「「「ハハハハハっ(笑)」」」」」
瀬戸、中川(有)の漫才ショー
「じゃあ、ギターの弾き語りを」
「「「「「頑張ってーー七原くーん!!」」」」」
七原ガールズにしか受けないワンマンショー
「えっと、瓦を10枚割ります。……せいやぁ!!」
ガッシャーーーンッ!!!
「「「「「「おおーー!!すっげー!!!」」」」」
ところが、1枚割れ残し……
「弘樹!何やってんのよ!!」
「す、すまない、貴子」
(((((苦労してんな……杉村のやつ……)))))
と、なぜか男子生徒たちによる、同情ショーとなるもの
みな、おのおの自慢の持ちネタをだした、そして……。
委員長・内海の司会もいよいよ佳境
「えっと、最後は……桐山くん?」
「ええっ??!!!!!」Ⅹ42(林田先生含む)
教室中に走る衝撃。
何しろ、あの出席日数ギリギリ男が、こんなガキのお遊びなんかをさぼらずに教室におとなしくいること自体が不可思議としか云い様がないのだ。
しかもだ、いくらクラス全員が参加というのが基本条件とはいえ、絶対にやらないだろう、ただ教室の片隅で、いつものように窓の外を眺めているだろうというのが大方の見解だったのだ。
それが参加するなんて……ただの気まぐれだろうか?それとも?
とにかく、桐山が教室前方に移動した。
「「「「ボスっ(桐山くん)、頑張って下さい!!!!!」」」」
桐山ファミリーの大袈裟すぎる応援が飛び交う
「それで、桐山くん、出し物は?」
勇気あるぜ内海……あの桐山さんに質問するなんて……
桐山ファミリー、川田、三村、杉村、七原以外の男子どもは幸枝を心からそう讃えた。
その時だ
「和雄、がんばってね!」
教室の後方から可愛らしい声が響いた。
B組のマドンナ・天瀬
美恵だ。
いや、それも一週間前までのこと……なぜなら、桐山が彼女に告白したからだ。
そして、誰もが理解した。桐山が参加した理由を……。
「ところで、桐山くんは何やるの?」
すごいぜ、内海……あの桐山さんに……
桐山ファミリー、川田、三村、杉村、七原以外の男子どもは、再び幸枝を讃えた。
「手品だ」
そう意外にも天下無双の桐山が選んだのは、宴会の定番・手品。
スッと、胸元からトランプを取り出す桐山、と、同時に一気に教室中に向かって投げた。
次の瞬間!!
「わぁっ、すごい!!」
誰かが、そう叫んだ。空中で、トランプがバラに早変わり!!
そのプロ並の技術にクラス中が舌をまいた。
本来なら、拍手喝采だろう……ところが!!
「和雄、すごい!すごく綺麗よ!!」
「美恵、おまえの美しさの前では、こんな薔薇無意味だ」
↑注意:メチャクチャ棒読み
シーン……絶対零度の教室……
ちなみに桐山はハーレクインロマンスまで読んで研究した決めセリフだった。
もっとも、美恵一人が喜んでいる以上、クラスメイトの反応など、桐山にはどうでもいいことなのだが。
さて、お次は?
オリが用意された、かなり大きい。
それに、やはり特大の布をかぶせたかと思うと、1秒も立たないうちにサッと布を取る。
次の瞬間!!!!
ガオォォォーーーー!!!!!
「「「「「ギャァァァッーーーー!!!!!」」」」」
虎虎虎!!!オリの中にはホワイトタイガー!!!
って、デビット・カッパーフィールドか、あんたは!!?
「き、き、き、き、桐山くん!!!が、が、学校に、な、なんてものを!!」
林田先生、気絶寸前ながらも説教、あんた教師の鑑だぜ。
「父の愛猫だ。飼育許可もとってあるから問題はないだろう?」
おお有りだよ!!あんたっ!!!!!!
恐怖の渦に巻き込まれた教室、もっとも美恵が「和雄すごいね」と喜んでいる以上、クラスメイトの反応など、桐山にはどうでもいいことなのだが。
さて、お次は?
「次はアシスタントがいるんだ。誰か立候補はいないかな?」
一気に震え上がるクラスメイト!!!
もちろん立候補するバカなんて……
「ボス!!オレがやります!!」
……いたよ、バカが一人。
桐山は早速、立候補した忠犬・沼井を首だけ出した状態で、マジック箱に入れた、よく胴体切断マジックに使われる、あの箱だ。
「おい、やっぱり、剣で串刺しか?」
「それとも電気ノコギリで胴体切断?」
クラス中が息を呑む……それは、そうだろう。プロのマジシャンの18番が、こんなところで見れるのだから
「ねえ、和雄は剣を使うの?それとも電気ノコギリ?」
わくわくしながら質問する美恵に桐山は……
「いや……オレの獲物はこれだ」
と、取り出したもの!!!!
そ、そ、そ、それはっ!!それはぁぁぁぁ!!!!!
「「「「「ギャァァァッーーーー!!!マシンガンーーーー!!!!!」」」」」
「正式名称はイングラムM10サブマシンガンだ」
恐ろしいくらい冷静に答える桐山、って、言うか、そうんなこと誰も聞きたくねーーー!!!
ぱららら!!ぱらららぁぁぁぁl!!!!!!
マジック箱(沼井入り)に向かって、撃ちまくる桐山!!!
「ギャァァァッーーーー!!!!!!!!!!」
その日、一番の絶叫の主は沼井だった……
シーン……撃ち終わったようだ……
ゆっくりと箱を開く桐山
「すごい和雄……あんなに撃ったのに、沼井くんカスリ傷一つついてない」
素直に感動する美恵。しかし……
「充!おい充しっかりしろ!!」
「気をしっかり持て!!」
「……あは……あははは……ひひひひひ……」
「ダメね、すっかりイカレちゃってるわ……かわいそうな充くん」
肉体的には無傷な沼井だったが、精神的には遠い世界に旅立っていた……。ムゴイ……。
もっとも美恵が瞳を輝かせている以上、沼井がどうなろうと桐山にはどうでもいいことなのだが。
さて、お次は?
「美恵来てくれ」
「え?私?」
突然の名指し、戸惑いながらも美恵は舞台に移動、桐山が用意した椅子に腰掛けた。
クラス中が息を呑む、はたして美恵は無事に生還できるのだろうか?
しかし、意外にも桐山の最後の出し物は、ささやかなものだった。
桐山は美恵の目の、すぐ前で拳を握ると、次の瞬間バラを持っていた。
「私に?」
うなずく桐山、しかし美恵が受け取ると……ポンッ
小さな煙がでるとともに、バラは跡形もなく消えていた。そして美恵の左手の薬指には……
「……和雄、これ……」
素人の美恵にもわかった、100万、200万の代物ではないことが
「今はこれがオレの精一杯だ。受け取ってくれるかな?」
「……和雄……嬉しい!!」
感極まって桐山に抱きつく美恵。
すると、いつの間にか教室中から拍手が。
こうして桐山最後のマジックは美恵に、とてつもない魔法をかけて幕を閉じた。
メデタシメデタシ