「ここが城岩町……」
決して大都会ではない
しかし、田舎過ぎるということもない
いい街だと思った
「うん、気に入ったわ」
天瀬
美恵、14歳。
城岩町にリハウスして来ました
出会いは突然に
「うん、美味しい♪やっぱり夏はアイスに限るよね」
素敵な公園で、ソフトクリーム
気分は最高♪ルンルン♪
美恵の両親は仕事の都合で外国に行くことになッた
その為、美恵は母の実家のある城岩町に越して来ることになったのだ
と、いっても登校は来月から
今日は、これから自分が住む街の偵察といったところだろうか
ルンルン気分で、美恵は歩いていた
ところが――だ
「キャァっ!!」
ぶつかった。まだ半分も食べていないソフトクリームが相手の服に
「あっ……す、すみません」
とにかく、謝らなきゃ……
「てめぇ!!何するんだよ!!」
いかにもガラの悪そうな不良……運が悪かった
「汚れちまったじゃないか、どうしてくれんだよ!!」
おまけに数人いる
「ごめんですめば警察はいらねえんだよ」
「どうやって償ってくれんだよ、お嬢さん。ええっ?!」
「それとも身体で償ってもらおうか?」
最悪の展開、美恵は思った。今日の運勢は大凶だと
その時だった、背後に気配を感じたのは
美恵は、相手の顔も確認せずに、とっさに、そのひとに縋りついた
「お願い!助けて下さいっ!!!」
怖い…お願い、助けて!!
何も考えられず、ただ、その人の腕にしがみついて祈った
「おまえたち、鹿戸中の奴だな」
低くないのに威厳のある澄んだ声が聞こえた
「き、桐山さんの連れだったんですか?」
「す、すみませんっ!!桐山さんの知り合いととは知らずに」
「し、し、失礼しましたぁぁぁ!!!!!」
凄まじい勢いで足音が遠ざかっていく
なんだか、よくわからないが助かったのだ
そこで、美恵は、ようやく相手の顔を見上げた
―――衝撃だった―――
完璧に私のタイプ……
……美恵は言葉を失った
「いつまで、しがみついているんだ?」
「あっ、すみません///」
真っ赤になって腕から手を放した
「あの…助けてくれてありがとうございます。私、天瀬美恵といいます」
「助けた?オレは特に何もしていないが」
「あの……名前聞いてもいいですか?」
「桐山。桐山和雄だ」
「桐山くーーん!!」
笑顔で駆け寄ってくる美恵
「美恵」
「今日はクッキー焼いてきたの。食べてくれる?」
「ああ、かまわない」
あれから美恵は毎日桐山に会うために、この公園に通っていた
少しずつだが桐山のこともわかってきた
何とラッキーにも転入先の城岩中学の生徒との事!!!
神様、あなたに感謝します!!!
「あのね桐山くん、私、明日から学校に行くの」
「そうか、どこのクラスになるのかな」
「桐山くんと同じクラスだったらいいな」
美恵は頬を紅く染めながらも言ってしまった
「それも悪くないな」
今日こそ言うのよ、この熱き想いを!!!
「あ、あの桐山くん……」
「なんだ?」
「私…私……あなたの事好きです。付き合って下さい!!」
言ってしまった
「返事は、私が学校に行った時に聞かせて」
そこまで言うと美恵は、ゆでダコの状態のまま走り去ってしまった
「担任の林田です。天瀬さん、よろしくね」
よかった優しそうな先生で
「うちのクラスの子は、みんなイイ子だから、すぐに仲良くなれるよ」
「あの……林田先生。桐山和雄くんって、B組にいます?」
「えっ?……き、き、桐山くんっっ!!!?ど、どうして彼の名を!!?」
え?……何?この反応は……?
B組は、とても、いいクラスだった
女子は委員長の内海幸枝を中心に親切なこが多いし
男子もかっこいいひとが大勢いる
桐山くんが一番だけどね♪
「わからないことは何でも聞いてね」
「あの、内海さん。桐山くん、姿が見えないけど欠席なの?」
「え?………桐山くんですってぇぇ!!!」
え?……何?この反応は……?
一気にクラス中の視線が美恵に注がれた
いや、注がれたなんて可愛いものじゃない
刺すような目で、凝視されたのだ
「お、おい聞いたか?何で転校生が桐山さんを?」
「彼女、桐山さんの何なんだ?」
「桐山さんの正体知ってるのか?」
え?……何?この反応は……?
その時だった。教室のドアが開いたのは
「桐山くんっ!!」
「……美恵」
「よかった。欠席かと思ったのよ。私、B組になったの」
リリリリーーーンッ!!!
始業ベルの音、残念……もっと話したかったのに
それに……告白の返事も気になる
桐山くん、OKしてくれるかな?
その時間は体育だった。女子と男子は別々だ
そこで美恵は真実を知ってしまった
「不良グループのボス?桐山くんが?」
「そうよ。知らなかったの?」
それで、あの不良たち、桐山くんのこと怖がってたんだ
でも、信じられない、桐山くんみたいな貴公子が不良なんて
「しかも、成績はいつも1番なの。勉強もスポーツもね」
「出席日数ギリギリでトップなのよ」
「おまけに桐山財閥の御曹司なんだから」
「桐山財閥って、全国トップクラスの?」
「そうよ」
私、物凄いひと好きになったんだ
美恵は激しく後悔した
桐山財閥の御曹司で、超がつくエリート
そんな凄いひとに付き合ってほしいなんて
知らなかったとはいえ身の程知らずもいいところだ
きっと桐山くん、迷惑に思ってるよね
そんな、凄いひとが私なんかと付き合ってくれるわけないもの
美恵は屋上のドアの前に来ていた
幸枝から、桐山は大抵、そこにいると聞いたのだ
断れらるまえに自分から言おう……
美恵は桐山に告白の撤回をする為に来たのだ
本当なら、必死で伝えた想いに応えてほしかった
でも、桐山みたいなハイレベルな人間が応えてくれるはずは無い
そして迷惑かけたことを謝ろう……
美恵は勇気を振り絞ってドアを開けた
桐山は……いた
おまけに、その周りにガラの悪そうな連中が四人もいる
「おい女だぞ。珍しいな女が来るなんてよ」
茶髪ロンゲの男が粗野な声で言った
「あれ、転校生じゃないか」
「何の用なんだ?」
美恵を見ていた三人がやって来た
「オレたちに用か?」
ロンゲだ。ちょっとニヤついている
「あ、あの……桐山くんに」
「ボスに用だとぉ!!」
いかにもガラの悪そうな男が声を張り上げた
「ボスに用って何だよ!?ボスに話があるなら、まずオレにしろよ!!」
こ……怖い……
美恵は涙目になってきた
「って、おい!泣くなよ!!」
ガラの悪い男は慌てたが、もちろん恐怖に震える美恵に気付くわけが無い
「あーあ、女の子には優しくするものなのに。ダメねぇ、あの3人は」
「彰」
「なあに、桐山くん?」
「女に付き合ってくれと言われたら、どうすればいい?」
「好きなら付き合う。じゃなきゃあ、断る。簡単よ」
「好きというのは、どういう場合のことを言うんだ?」
「そんなこと決ってるじゃない」
月岡は力説した
「そのひとの事ばかり考えて、ずっと側にいたくて」
桐山は珍しく真剣に聞いていた
「他の男には口も聞いてほしくないくらい独占したくなるのよ」
「そうか……それで、付き合うというのは具体的にどうすればいいのかな?」
「いつも一緒にいることよ。恋人って特権があるのよ。
キスしたり、抱き締めたり、友達じゃあ出来ないわ」
「他には?」
「もちろん権利もあれば義務もあるのよ。男は愛する恋人を守らなきゃ」
「例えば、恋人がガラの悪い連中に酷い目に合わされたら
愛する彼女を守る為に、そいつらと戦うのよ」
「なるほど、よくわかった」
本当にわかってるのかしら?
でも、どうして、こんなこと聞くのかしら?
月岡の疑問を余所に桐山は歩き出した
「おいっ!!泣くなって言ってんだろ!!」
沼井の肩にポンと手を置かれた感触
「充」
「あ、何ですかボス?」
振り向いた沼井。そして……
バッッガャーーーンッッ!!!!!
次の瞬間、沼井は昇降口の壁にのめり込んでいた
もちろん意識は全く無い(酷)
「ひぃぃぃーーー!!!充ゥゥゥーーー!!!」
「ボスゥゥゥーーー!!!何するんですかぁぁぁ!!!!!」
「美恵はオレの女だ。だからオレには美恵を守る義務がある」
「え?」
桐山くん、今なんて?
聞き間違いじゃないよね?
「「ギャァァァーーーー!!!!!」」
「なあ、今、叫び声が聞こえなかったか?」
「そういえば上の方から何か聞こえたような」
「そうか?オレには何も……って、何だぁぁぁ!!!」
クラス全員が見た!!!
窓の外を――
笹川と黒長が落ちてゆく様を……
「……お、おい……何があったんだよ」
「行ってみようぜ」
「美恵、大丈夫か?」
「……うん」
「これからはオレが守るから安心しろ」
「あ、あの…桐山くん」
「何だ?」
「お願い、今言ったことを、もう一度聞かせて」
「オレが守るからと言ったんだ」
「違うわ、その前よ!!……私のこと…オレの女……って」
「ああ、そう言った。オレは美恵の事が好きらしい」
「………」
「だから付き合いたい。嫌か?」
「……嫌なわけない……嬉しい。すごく嬉しいよ……」
嬉し涙が頬を伝わった
桐山が、そっと美恵の背中に腕をまわす
とたんに美恵は真っ赤になった
「き、桐山くん?」
「恋人の特権だ」
美恵は、目を閉じ、そっと桐山の胸に顔を埋めた
「おい……どうなってんだよ?」(三村)
「オレに聞くなよ」(七原)
「それに、なんで沼井が壁にのめり込んでるんだ?」(杉村)
「何があったか知らんが、桐山の仕業だろうな」(川田)
屋上のドアから覗き見していたB組全生徒(沼井、笹川、黒長を除く)
こうして、2人は、その日のうちに公認のカップルになったのだ
メデタシメデタシ
~END~
