大東亜共和国はある大問題を抱えていた。
それは少子化!
草食系男子が増え、女は家庭を持つ事よりも仕事を選択する。
その上、子供一人を育てるのにかかる金額は平均三千万といわれる現代。
晩婚どころか独身貴族を謳歌する者が少なくなくなってきたのだ。
そこで国会はおそるべき法案を成立させた。

通称LBR法!




ラブバト




「ここ、どこ?」
は目を開けた。見覚えのない天井に壁。黒板や机などから学校だということはわかる。
「何よ、これ!」
首に嫌な感触を感じ触れてみると首輪がはめられていた。
これでは犬扱いではないか!


「はいはい、皆さんお静かに〜」


不気味な長髪中年が登場。その男を取り囲むように銃を手にした兵士が数人付き従っている。
異様な雰囲気から、自分達がとんでもない事に巻き込まれたとは察した。
しかし、それが何なのかはわからない。
「いいですか、皆さん。この国はだめになりました。
このまま少子化が進めば我が国は大変な事になります。と、いうわけで――」


「皆さんには愛し合ってもらいまーす」


「はあ?」
は思わず、そんな声を上げてしまった。
「国民が結婚も子育てもしたくないなんてそれは贅沢というものです。
本当にそれができなくなったらどうなると思いますか?
いかに愚かな考えだということを教えるため、あなた達は戦うのです。
そして優勝した男女のみ結婚する権利を与え残りのものは男女交際禁止。いわば見せしめです」
「そんなバカな!」
立ち上がったのは元渕だった。
「ぼ、僕の父は県政府のお見合い推進委員会長なんだ。そ、その僕がいるクラスがプログラムに選ばれるわけ……」
坂持がチョークを投げてきた。元渕の額に見事にヒット。
「はいはい脱落〜。先生に逆らう悪い子は失格です。君は一生自慰行為だけで我慢してなさい」
早くも犠牲者がでた。これは脅しではない。


(ど、どうしよう)

には好きなひとがいる。同じクラスにだ。

(でも彼が私の事すきとは限らない。あんな素敵なひとだもの、きっと美人で魅力的なひとじゃないと)


「あたしは宗教上の理由から一生処女じゃないといけないから脱落でいいです」
「えっと……俺も二次元の彼女だけでかまわないから皆にチャンス譲ります」
「お、俺なんか、どうせ誰も好きになってくれないから……」
こうして稲田、滝口、赤松は早々に離脱。
「たった一組なんて優勝できるはずない……もう駄目なのよ」
「さくらがそういうなら俺はその価値観に殉じるよ」
さくらと山本もあっさり負けを認めた。
「あたしは元々キャリアウーマン目指す為に一生独身予定だし」
「どうせ俺勝できないし」
「あたしはジュンヤがいればいいから」
野田、飯島、南と次々に試合開始前に脱落。
他にも、いつの間にかバットやナタで傷ついたり、援助交際しかしないからと早々と戦闘拒否する者が続出。
残りの者だけで、ついにプログラム開始になった。














「私の武器は……何よ、これ!」

アイドルの等身大ヌード写真がプリントされた抱き枕。
説明書には『優勝逃したら、これをオカズにしてね』とある。

「信じられない。最低!」

森に向かって投げつけると誰かの頭に当たった。


「いてえ!」
「あ、新井田君ごめんなさい!」
、いいところで出会ったぜ。俺とカップリングしよ。な?」
「え”」


冗談じゃない!!


「手始めに既成事実作ろうぜ。俺、悪くないと思うんだ」
「いやよ、こないで!」


ま、まずい。これは最悪の展開だ!


「あなた貴子に言い寄ってたくせに女なら誰でもいいのね、最低よ!」
「しょうがねえだろ。千草は杉村とカップリングしちまってよぉ。
横取りしようとしたら杉村の怒りの鉄拳くらって、ほら、この通り」
新井田が右側の顔を見せてきた。まるでパンダのような痣ができている。


「だから。な、いいだろ?」
「近づかないで!!」

新井田の顔が迫ってくる。絶体絶命のピンチ!


「左側もパンダにして欲しいのかな?」


と新井田は同時に「え?」と声を漏らした。
その直後、新井田がふっ飛んでいった。それが新井田をみた最後でもあった。




、大丈夫かな?」
「き、桐山君」
桐山和雄だ。実はが好きなひとは彼だった。
その彼が助けてくれた……運命的なものを感じる。


だ、駄目よ、変に期待したら後が辛いから……。


「あ、ありがとう桐山君」
「いや、かまわない。探し回っていたらと新井田の声が聞こえてきたんだ」


探し回っていた……やっぱり桐山にも好きな人がいるんだ。
彼女が他の男に横取りされる前にカップリングしようというのだろう。

(うらやましいな、誰だろう?貴子……は、もう杉村君とくっついてるし、光子かしら?美人だものね)



桐山は手を差し伸べてきた。
「俺は優勝しようと思う」
「……うん」
「だからも優勝に協力してくれないかな?と二人一緒でなければ意味がないんだ」


え……それって。


はドキドキしながら桐山を見つめた。

「あ、あの桐山君……もしかして」




「きゃー!三村くぅーん、何で逃げるのよぉー!!」
「く、来るな、見逃してくれー!!」
「うわーん、シンジー、何で俺までー!!」




「……」
突然、茂みの中から飛び出してきた三村とそれを追いかける月岡。
豊はおそらく三村と一緒にいたが為に成り行きで追いかけっこに参加する羽目になってしまったのだろう。

(……どうしよう。聞くタイミングを逃しちゃった)

「どうした?」
桐山が不思議そうな目で見つめてきた。
「……あの」
「俺に聞きたい事があったのだろう。違うかな?」

そうよ。こんなチャンス滅多にないんだもん。玉砕覚悟で聞いてみよう。

「あ、あのね桐山君。もしかして桐山君は私の事……」




「ま、待ってくれ皆、落ち着いてくれよ。この国は一夫多妻じゃないだろう!」
「そうよ、あたしもそのつもりなの。七原君、この意味分かる?!」
「ずるい幸枝、あたしや雪子だって七原君の事好きなのに!」
「「あたし達だって!」」




「……」
突然、茂みの中から飛び出してきた七原と五人の女生徒。
幸枝を先頭に、友美子、雪子、恵、典子が追走。その様子はまるで一つの群だった。
そういえば、典子の後ろを国信が追いかけてたような気がするが、まあどうでもいい。

(また聞くタイミング逃しちゃった)

「どうした?」
桐山が不思議そうに顔をのぞき込んできた。
「気分でも悪いのかな?」
「……その」
「さっきと同じだな。俺に質問があるのなら言ってくれないか?」
「そ、それは、その……」




「もう、鈍いのね桐山君!男なら察しなさいよ」

ハッとして振り向くとカマを持った光子が立っていた。


は桐山君の事が好きなのよ!!」


は顔面蒼白になった。同時に光子が手にしているカマがなぜか赤い事にも気づいた。
「光子、どうしたの、それ?」
「ああ、これはね。あんたの応援してあげようと思って、たまたまそこで倉元と好美を発見したから……って、それはどうでもいいわ」
「……応援って何したのよ」
「ともかく桐山君もだけど、はっきりしないあんたも悪いわよ。
ちゃんと言いなさいよ。でないと一生結婚できないんだから。
じゃあ、あたしは応援の続きしてあげるわ。あたしの行動を無駄にしないでよね」
光子は親指を立てグッドラックとばかりに去っていった。


残された桐山と
がゆっくりと桐山を見ると、桐山も同じようにじっと見つめてくる。


(光子の言うとおりだわ。優勝できなかったら一生男女交際はできなくなるんだもの。
これは最初で最後のチャンス。一度くらい勇気ださないと)


「き、桐山君、私、桐山君の事が」
「ちょっと待ってくれるかな?」

勇気を出したのに桐山に遮られてしまった。
もしかして告白したら迷惑なのだろうか?涙腺が緩んでくる。

「こう言うことは男の方から言うものだと彰が言っていた」




「好きだ。俺と結婚してくれ




「……桐山君」
「嫌かな?」
は頭を左右に激しくふった。


「そんな事ない!私もずっと桐山君の事好きだったの」
「そうか。だったら形にしてもかまわないな」


桐山の顔が近づいてくる。は反射的に目を閉じた。
唇に暖かい感触が残った。その後、二人は順調に勝ち進み優勝。めでたく結婚する事になった。


「でも貴子には悪いことしたわ」
「それは心配ない。が悲しむのなら、桐山家から政府に賄賂を送って二人を一緒にさせてやろう」
「ありがとう桐山君」


終わりよければ全てよし。めでたしめでたし。














「ふう、本当に手間のかかる二人ね。でも、ハッピーエンドになってよかったわ。
こっそり見守ってきたアタシもやっと安心できるわね」

桐山との様子を木の陰から見つめていたのはなんと月岡。

「オカマ!よくも俺のじゃまを!」
実は三村もを狙っていたのだ。
「あーら三村君。しょうがないじゃない、責任とってアタシが面倒みてあげるわよ。一生vv」
「ふ……」
三村は全身鳥肌状態。

「ふざけるな!おまえルール忘れたのかよ。負けた奴は一生男女交際禁止……は!」

三村は肝心な事に気づき顔面蒼白となった。


「そうよダーリン。アタシ、女だけどラッキーな事に戸籍上はお・と・こな・の。
つまりぃ、あなたとアタシの交際はじ・ゆ・う」
「ま、待て月岡……は、早まるな。頼む、こ、来ないでくれ」
「さあ幸せになりましょうね。あ・な・たvv」
「ぎゃぁぁぁー!!」


どこまででもいい。精一杯でいいから……走れ!!




END




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