それは、いつもの変わらない日常だった。
ただ一つ違うのは、このクラスに侵入者が来た事だ。
「いいか転校生を紹介するぞ」
威張り腐った担任教師キタノが連れてきたのは……


「桐山和雄くんだ。みんな仲良くやってね」


「カズくん!!!!!」


その瞬間、クラスメイト全員が美恵 を振り返った。




オレがあいつで、あいつがオレで




金髪フラッパーパーマ、モデル体型で背も高い。
そして整った顔立ちだが、とにかくダルそうで学ランも着崩している。
いかにも不良、危ない奴といった感じだ。
だが、クラスメイトが驚いたのは、クラスでも評判のいい明るく優しい美恵 が顔見知りだと言うことだろう。
しかも「カズくん」だぁ?
一体二人はどんな関係なのか?
クラス中が疑問符を浮かべながら交互に二人を見詰めた。
そんな中、ツカツカと和雄が近づいて来た。




「カズくん。カズくんだよね?覚えてる?私よ、天瀬 美恵よ 」
すると和雄はコクコクと頷いた。どうやら無言で回答しているらしい。
「久しぶりだよね。もう10年近くだもんね、カズくんが引っ越してから」
「ああ……そうだな」
ここで、ようやく和雄が口をひらいた。
「ねえ、二人はどんな関係なの?」
クラスを代表して光子がナイス質問を投げかけた。
「え?そんな対したものじゃないよ」




「ただの幼なじ……」
「婚約者だ」
その瞬間、クラス中が固まったのは言うまでも無い(汗)














「どうして、あんな事言ったの!!」
ここは屋上。そして美恵 と和雄二人きり。
「……何が?」
「婚約者だなんて!!みんなビックリしてたじゃない!!!」
「……事実だ」
「どうして?私たち幼馴染じゃない、どうしてそんな事言うの!?」
「約束した」
「え?約束?あたし、約束なんて……」
「した。オレが街を出て行くとき『オレのお嫁さんになってくれるか?』と言ったら『うん、いいよ』……そう言った」
美恵 は記憶をたどった。














「カズくん、絶対にもどってきてね。私待ってるから」
「……ああ、わかってる」
「約束して。その代わり私も何でも言うこと聞いてあげる」
「なんでも?……なんでもいいのか?」
「うん、いいよ」
「オレのお嫁さんになってくれるか?」
「うん、いいよ。だから帰って来てね」
「ああ、愛してる」

注意!!和雄は幼稚園児です!!!














確かに言った。思い出してしまった。
「でもカズくん、あれは子供の口約束で……」
そうだ、子供時代誰だって経験しているだろう。
「……嘘だったのか?オレを騙していたのか?」
「そ、そんな騙すだなんて」
「だったらいいんだな?」
どうしよう……どうやら和雄は本気のようだ。




「だから……」
と、言うと同時にいきなり和雄は美恵 を押し倒しやがった!!!!!
注意!!ここは学校の屋上です!!!




「カズくん、何するの?!!!!!」
「……契りを交わすんだ」




!!!!!!!!!!←注意:美恵 の心の叫び




「ま、待ってカズくん!!冗談はやめて!!!!!」
「……オレは本気だ」
やばい!!非常にやばい!!!
この目!!!和雄は本気だ!!!!!
そ、そんなぁ!!こんなところで奪われるなんて!!!!!




「いやぁぁぁーーー!!!!!」




美恵 は起き上がろうと必死になって身体を起した。その時!!!!!




ゴンッ!!!!!




鈍い音が聞こえた。そう二人の頭がぶつかったのだ。
そのまま二人は気を失った。
どのくらい時間がたっただろう?
美恵 は目を覚ました。




「……痛い。でも助かった……よかった。ええ!!!?」
美恵 は目を丸くした。目の前にセーラー服の少女が倒れている。
その顔、そう毎日洗面所で見ている、その顔を見間違えるはずがない!!!

「わ、私が……倒れてる?」
すると、その少女いや自分が起き上がった。そして言った。
「……どうしてオレが目の前にいるんだ?」














「ああ、どうしてこんなことに……」
いつもは楽しい 国語の授業も全く手がつかない。
そう、美恵と和雄は中身が入れ替わってしまったのだ。
和雄は「……これじゃあ美恵を抱けない」などと言っていたが事態はもっと深刻だ。
もしかしたら、このまま一生?




「あれ?」
和雄(身体は自分)がいない。美恵は慌てて立ち上がった。
その頃、和雄はというと……トコトコ歩いていた。
どうやらトイレらしい。何の迷いもなく『男子』トイレに入っていく。




「ちょっとカズくん!!!!!」
「……美恵」
「どこに入るつもりだったのよ!!」
「……トイレ」
「今は私の身体なんだから、そっちはやめて!!」
「じゃあどこですればいいんだ?」
「女子トイレに決ってるでしょ!!」
美恵は強引に和雄を引っ張って『女子』トイレに。




「……女子トイレに入るのは生まれて初めてだ」
「じゃあ、早く済ませてきて」
「ああ、わかった」
和雄がトイレに入って数秒後
「ちょっと待って!!!!!」
美恵は慌てて中に入った。




そうだ、今、和雄の身体は和雄であって和雄でない。
「なんだ?」
すでにパンティーに手をかけた状態の和雄。ああ、間に合った。
「しばらく我慢して」
「我慢?いつまで?」
「元通りになるまでよ」
「いつ元に戻るんだ?」
「そ…それは」
そうだ、もしも元に戻らなかったら?
一生我慢するわけにもいかないし……。
それにだ。このままだと自分も……
ああ!男の身体じゃあトイレにもお風呂にもいけないじゃない。
「……どうして泣くんだ?」
「……だって、このままだと服も着替えれないじゃない」
「………」←考え中




ピンポーン♪←ひらめいた……と、いうより気付いた




その頃……授業も終わり、委員長グループは集団でトイレに向かっていた。
バンッ!!!
凄まじい勢いでトイレのドアが開いた。
「「「「「「「え?美恵?」」」」」」」


「待ってよ!!!!!」
そして次の瞬間飛び出してきたのは
「「「「「「「ええ?!!!桐山くん?!!!!!」」」」」」」 驚愕する委員長グループを無視して二人は風のように去っていった。


幸枝「……今の桐山くんだったよね」
泉「……ここ、女子トイレだよね?」
典子「気のせい?二人とも同じトイレから出てきたような気が……」
はるか「そういえば婚約者……っていってたけど」
知里「……トイレで何してたの?」
聡美「……あんまり考えたくないけど……やっぱり」
有香「不純異性交遊してたんじゃないの?」
最後の有香のセリフに全員考えをまとめてしまった。
そして女の集団というものは恐ろしいくらいに噂を広めるのが早いのだ。














「カズくん!!待ってよ、カズくん!!!」
だが和雄は止まるどころか引き離していく。恐ろしいくらいのスピードだ。
そして姿が見えなくなってしまった。
必死で和雄を探す美恵。
「何処に行ったんだろう……」
もう二十分はたっている。


ガラッ……その時、保健室のドアが開いた。


「カズくん!」
「……美恵」 美恵は顔が蒼ざめるを押えることが出来なかった。
その理由①なぜか服装が乱れている
その理由②和雄は保健室で一人きりだった
その理由③……すごく嬉しそうな顔だった




「……な…何してたの?」
「……美恵」




「……おまえ、着やせするタイプだったんだな」
「!!!!!!!!!!」




「うわぁぁぁーーん!!!」
美恵は両手で顔を覆い泣きながら走り出していた。




酷い酷い!!
見たのね、ひとの生まれたままのありのままの姿を!!!!!
そう言えば、保健室でっかいがあったもんね、等身大の!!!
でも、あんまりよ!!!
私の気持ちはどうなるのよ!!!














美恵は屋上に来ていた。
(何よ……カズくんのバカ)
その時だった。
「おい、桐山」と、粗野な声がしたのは。
振り向くと……不良集団沼井グループだった。
一体に何の用だろう?
「おい、おまえ転校早々天瀬と個室トイレでイチャイチャしてたって本当か?」
「え?」
「おまえ、本当に天瀬の婚約者かよ。本当はただのストーカーなんだろ?」
「そんなナリしてオレたち差し置いて目立とうって魂胆なんだろ?」
「誰がおまえなんかにデカイ顔させるものかよ」
「さあ、今のうちに謝ったほうがいいぞ」
マズイ!!非常にマズイ!!
おまけにハリセン(沼井グループは敵を一刀両断できる奇跡の武器と信じており、スーパーウルトラグレートゴールデンハンマーなどと名付けていた)まで持ち出している。




美恵(肉体は和雄)絶体絶命の大ピーンチ!!!




ザザァ……その妙な物音に全員振り返った。
昇降口の屋根に和雄(身体は美恵)が立っていた。
どこで手に入れたのか……日本刀を携えて(汗)
沼井グループは風のように去っていった……。




「……美恵、オレが全部悪いのか?」
「………」
「……オレのこと嫌いになったのか?」
「………」
「……オレのこと怒っているのか?」
「……カズくん」
本当は怒っていた。でも、和雄がすごく悲しそうな目をしていたので……怒る気になれなかった……。
その後は、ろくに話もせずに家に帰った。
もちろん自宅には帰れないので、相手の家にだが。














「え…と、ただいま…」
美恵は恐る恐る桐山家の門をくぐった。
「お帰り和雄、学校はどうだった?」
おばさん……じゃない今はお母さんだ。
「……ん、まあまあ」
「あら、どうしたの?あんたがどうしても帰りたいって我侭いうから引っ越したのに」
「え?」
「どうしても守らなきゃいけない約束があるっていってたじゃない」




……約束?それって……もしかして……




とにかく美恵は和雄の部屋に入った。
必要最低限のものしかない殺風景な部屋。そんな中……


「これって……」


机の上には、幼稚園時代の美恵の写真が飾られていた。
それだけじゃない。二人でとった写真も大事にアルバムにしまってある。
しかもだ。机の上に無造作に開いている日記。そこには、こう書かれていた。


美恵会いたい。明日になればやっと会える』


「……カズくん」














「……美恵」
和雄(外見は美恵)が走ってくる。自分で自分を見るのも慣れてしまった。
「どうした?何かあったのか?」
ここは公園。美恵が和雄を呼び出したのだ。
「……あ、あのねカズくん」
「……もう脱いだりしてないから安心しろ」
「……ごめんなさいッ!!」
「え?」
「ごめんなさい。私、カズくんの気持ち全然考えてなかった」
「……美恵」
「カズくんは私との約束覚えててくれたのに私は……」
美恵は悪くない」
「……許してくれるの?」
「ああ、これからもずっと美恵といたい。友達でもいいから」
「ありがとうカズくん」
「そばにいていいのか?」
「うん」




「……美恵!!!!!!!!」
「え?」




和雄が飛びついていた。そして……美恵は、いや美恵と和雄はその勢いで階段を転がり落ちていた……。














「……痛い」
「……うーん、カズくん大丈夫?」
「……重い」
「あ、ごめんカズくん。……え?」
目の前には金髪フラーパーパーマの少年が……そう、なぜか元に戻ったのだ。














美恵。アーンして」
「……恥ずかしいからやめて///」
あれから、どうなったかというと……二人は仲良くなり、そして和雄の強烈な押しに負けて結局二人は付き合うことになってしまった。
ちなみに今は給食の時間だ。
「あーら、相変わらず仲がいいのね」
クスッと微笑みながら光子がやってきた。
「ご結婚はいつからしら?」
「やめてよ光子。和雄に冗談は通じないんだから」
「あら、愛してないの?だったら私がもらっちゃうわよ。桐山くんも、あたしみたいになナイスバディな女嫌いじゃないでしょ」
そして毎日のように光子にからかわれている。
「あたし、峰不二子並にスタイルいいのよ。ね、桐山くん」
「……美恵もスタイルいいぞ」
「あらあら、焼けるわね。でも、あたしだったら出血大サービスしてあがるのに。
胸もすごくボリューム感あるんだから」
美恵の胸も、すごく柔らかかったぞ」




ガタァァァァッ!!!!!!!!←注意:クラスメイト全員が立ち上がった音




「ちょっと和雄!!誤解されるようなこと言わないでよ!!!!!」




美恵の苦労はまだまだ続く。


メデタシメデタシ