パンッ!!!!!
それは教室中に響き渡る音だった。
「最低!!!……もう顔も見たくないっ!!!!!」
間髪入れずに、涙の混じった怒号。
走り去る彼女の背中。
それを、頬をおさえながら、ただ見詰める事しか出来なかった。
「……いてぇ……」


失せし愛


「殺し合いをしてもらいまーす」


それは悪夢

いや何度、瞳を開けても終ることのない現実

悲鳴、恐怖、殺意……

夢…そう、夢に決ってる…

これは夢…意識が戻った時には、きっと他愛のない日常が、また始まるだけ……

これは夢…夢、それは現実の続き…終ることのない悪夢









美恵死ぬな!!!!!」
愛しい声……悪夢が始まった瞬間から、ずっと探し続けた懐かしい声
「……信史……」
それは悪夢から現実に意識が戻った瞬間
「……し……んじ……」
「しっかりしろ、美恵!!! 」
泣いてるの信史?クールが売りのサードマンが……ファンが見たら泣くよ?
「しっかりしろ美恵!!オレたち助かるんだぞ!!!!!」
助かる……?
「脱出するんだ。オレが必ず守ってやる」
……守る……私を?
「おまえだけは必ず助けてやる……だから……」









どうして?

だって私たち……とっくに別れたじゃない……

最初に告白してくれたのは信史の方だった。色々噂のある奴だったけど、返事はイエス。

ビコーズ私も彼のことが好きだったから

二人でよく出掛けたね

いつも、いつも、一緒だった……

でも、信史はいつも私だけの信史じゃなかった

女癖なんて一生治らないものなのかな……

それでも好きだから我慢もした

でも心は痛くて仕方なかったんだよ











あの日---私は目撃者

浮気の現場

相手は私の親友だった

私の親友だって知ってたくせに

私の彼氏だって知ってたくせに

いつもみたいに頭下げれば許してもらえるなんて甘いのよ

ぶん殴って、はいサヨナラ






信史は何度も謝ってきた

今度ばかりは本当に反省した子供みたいに

浮気相手とは全員別れたし、浮いた噂もぱったり消えた

でも私は許さなかった

それどころか口もきかなかった

本当は許したかったけど意地を張って……

それっきり

それなのに、どうして今ごろ、あなたの腕の中にいるの?









「信史」
微かだが、はっきりした口調
「……私に振られたとき……ショックだった?……」
「この世の終わりかと思ったよ」
「……相変わらずキザ」
「本心だよ」
そう言った信史の目は真剣そのものだった。
私が大好きだった信史の目……
「ごめん」
「……え……?」
「オレ…おまえの気持ち全然考えてなかった。
バカな事しても、おまえはずっとオレと一緒にいてくれるって過信してたんだ。
おまえが、どんなに傷ついてたかなんてわからなかった」
「………」
「もう遅いかもしれない……けど、オレはおまえが好きだ。 それだけは本当だ。
……だから、美恵だけは、どうしても助けたくて……放送があるたびに、美恵は生きてる……美恵が生きてるうちに……
絶対に助けてやる…って……今度は……後悔…したくなかったんだ」
その口調もとぎれとぎれに。
美恵の頬に雫が落ちた。




……不思議とあたたかい涙だった……




私だけじゃなかった

信史も、ずっと私を探してくれていたんだ

信史…こんなことになるんだったら意地なんて張るんじゃなかった

信史のこと、もっと早く許してればよかった

もっと、いっぱい、いっぱい楽しい思い出作ればよかった






「……信史……ありがとう……」




それが最後の言葉だった




美恵?」

嘘だろ?

「……美恵……」

嘘だろ?美恵






美恵ーーー!!!!!」




泣いた…叔父さんを失って以来失っていたはずの感情









美恵は死んだ
でもオレは死なない。必ずおまえを殺した奴らに思い知らせてる。
オレは今死ぬわけには行かないんだ。
今、殺されてやるわけにはいかない

だから




特別プレゼントだ桐山!!!




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