トコトコトコ
ウサギがはしる
急げや急げ
もうすぐ時間だ遅れるな




不思議の国のシンジ―中編―




「な…!嘘だろ?!」
三村は我が目を疑った
そうだろう?
ウサギだぜ?
オレが寝ぼけてるんじゃなければパラレルワールドか?
ハッ!バカバカしい、夢に決ってる


しかし何度、目をこすっても眼球に映るウサギは消えない
とにかくだ、好奇心に火がついた
後を追った。ウサギは懐中時計に夢中で、まるで気付いてない
そして一本の大木まで来るとフッと消えた


消えた?やっぱり夢でも見てたのか?


疑問符を頭につけながら、その大木に近づく三村
よく見ると幹に大きな穴がついている
覗き込む、真っ暗で何も見えない
腰をかがめて、さらに体を乗り出した、その時だった
突然、足元が崩れた
そして、落ちていく
……暗闇の中に……









リリリリーーーンッ……ガチャ
「はい、天瀬です」
天瀬か?杉村だ」
「杉村くん?どうしたの、こんな時間に」
時計の短針は11を指そうとしていた
「三村がいないんだ」
「えっ?」
「……その、ちょっと放課後に七原ともめて、気になって、あいつの家に電話したら、まだ帰っていないっていうんだ」
「……そんな」
天瀬なら、あいつの行き先に心当たりあるんじゃないかと思って」


「私、探してみる」
「えっ?ダメだ、女の子が、こんな夜中に………切れてる」
ツーツー
「……まずいな、天瀬に何かあったら……オレが貴子に……」
その数秒後に杉村が家を飛び出したのは言うまでも無い









「…ツゥ」
ズキン……頭に痛みが走る。いや、それよりも……。
「どこだよ、ここ」
見た目にはただの森だが、先程までいた裏山の林とはまるで違う。


深い深い森
ホーホー


フクロウか?この街ではみたことないな……
それに何だよ、あのトランプコスプレした連中は
………!!!!!




ここに来て朦朧としていた三村の意識は瞬時に回復した。
「……な、なんだ?あいつら!?」
「いたぞ!!あいつだ逮捕しろ!!」
トランプ模様の服、いや体そのものがトランプの人間たちが一気に迫ってくる。
そして、有無を言わさず三村を捕らえた。


「おい!!放せ!!何なんだ、おまえたちは!!」
「うるさい!!これから、おまえは裁判にかけられるのだ。おとなしくしろ!!」




何が何だかわからないうちに着かされた席
それはまさしくドラマでしか見たことがない裁判所というやつだ。


「静粛に。えー、今から裁判をはじめます」
「あっ、おまえは」
それは、まさしく、あのウサギ。見間違えるわけがない
あいつのせいでオレは!!
だが、次の瞬間、さらに三村を驚愕させる人物が


「では、裁判官をご紹介します」
ウサギの紹介により登場したのは……
「ハーイ皆さん、今日もアタシの裁判しっかり見てね」
「つ、月岡!!なんで、おまえがここに!!」
それだけではない
「次は検事を紹介します」
「ち、千草!!」
さらにとどめが……
「最後に弁護士を紹介します」
「に、新井田!?嘘だろ!!」
さらに三村は気付いた。自分が被告席に座っていることを





まさか、この裁判は!!!





追い討ちをかけるようにウサギが言い放った





「では、これより、重罪人・三村信史の裁判を開始いたしまーす」