「最低ッ!!あんたって本当に最低ねッ!!!」
「だからって殴ること無いだろッ!!!?」
「最低男殴って何が悪いのよ!!!」
「言ったな!だったらオレも言わせて貰うけど、おまえは口は悪いし態度も悪いし、全然可愛くねーんだよ!!」
「悪かったわね、可愛くなくてッ!!!今朝、告白されたばかりの女とホテルに行く男に言われたくないわよッ!!!」
「シ、シンジ……美恵ちゃんも落ち着いてよ……」
「「うるさい、黙ってろ(て)!!!!!」」
愛と欲望の泉
「……はぁ、またやっちまった」
「……シンジって不器用だよね。好きでもない女の子には器用なのに」
「……しょうがないだろ?だってさぁ、あいつ全然可愛げのない女なんだぜ。
それなのに好きだ付き合ってくれ、なんて言えるか。
言えたとしても絶対に本気にしてくれないに決まってる」
「好きだ付き合ってくれ、美恵」
「「!!」」
三村と豊はこれ以上ないくらい目を見開きながら振り向いた。
そして見た。その低くないのに威厳のある冷たい声の主を。
「……き、桐山くん……皆、見てるよ……」
「それがどうかしたのかな?オレは美恵をずっと見ていた。
美恵を見ていると心が落ち着く。
美恵が他の男と話しているだけで心が落ち着かない。
彰は、それはオレが美恵に恋をしているからだと言った。告白するべきだとも。
もう一度言う。美恵好きだ、付き合ってくれ」
「……桐山くん///」
どういうことだよ美恵ッ!!!!!
なんで頬を赤らめて照れてるんだよッ!!!
いつもオレに対する態度と全然違って、すごく可愛いじゃないかッ!!!
しかも、嫌そうに見えないぞッ!!!
もしかして……まさか、おまえ桐山に惚れてるんじゃないだろうなッ!!?
「抜け駆けだぞ桐山!!オレだって美恵さんの事好きなんだ!!!」
な、七原ッ!?おまえ部活の先輩を一生好きじゃなかったのかよッ!!!?
「オレも天瀬ことずっと好きだったんだ」
杉村ッ!!あんな美人の幼馴染までいるのに、なんで美恵に惚れるんだよッ!!!
「実はなぁ、オレもそのお嬢さんに惚れてるんだ」
川田ッ!!!美恵との年の差考えろよなッ!!!
「……そんな急に言われても私」
「あーあ、駄目じゃないの桐山くん」
「彰」
「いい?告白なんて人気の無いところでやるものなのよ。例えば校舎の裏とか」
「……そうか、わかった」
次の瞬間、桐山は美恵の手を取ると強引に歩き出した。
「き、桐山くん、どこに行くの!!?」
「校舎の裏だ」
「「「抜け駆けか!そうはさせないぞ桐山!!」」」
七原、杉村、川田が後に続く。
クソッ!!美恵ッ!!!
こうなったら見え張ってる場合じゃない。 三村も後を追った。
「き、桐山くん待って!……手が痛い…」
「痛いのか?」
桐山が後ろを振り返った。
その時…… ボッチャーーンッ!!!
「え?」
校舎の角を曲がった場所に泉、何と桐山が落ちてしまった。
って、いうか!!いつの間にこんな泉が出来たのよッ!!!
「桐山くんッ!!!」
落ちたっきり浮かんでこない桐山。まさか溺死?
その時ッ!!!!! 泉から何と神様が現れた!!!
「え?」
どういうリアクションをしていいのかわからず固まっている美恵に神様はこう言った。
「おまえが落としたのは、この金髪の愛らしい桐山くんですか?」
「……ち、違いますッ!!!落ちたのは黒髪オールバックの桐山くんですッ!!!」
「おまえはとても正直なひとですね。ご褒美にオールバックの桐山くん、金髪フラッパーパーマの桐山くん、両方上げましょう。
おめでとうございまーす」
「ええええっ!!!」
「美恵、今すぐオレに抱かれろ」
いきなり押し倒しにかかる金髪の桐山。
「やめろ美恵はオレのものだ」
黒髪の桐山が止めてくれなければ即18禁の世界だろう。
「うるさい死ね」
「オレと戦うというのかな?」
「や、やめて二人ともッ!!!!!」
「美恵さん、これは一体……」
「……七原くん」
美恵は事情を説明した。
「……つまりこういうことね」
「幸枝、いつの間に」
「やるわよ皆!!」
「「「「おー!!!!!」」」」
グワシッ!!!と七原を拘束したかと思いきや、七原ガールズは七原を泉に突き落とした。
「おまえたちが落としたのは、かなり熱血が入っている漫画版七原くんですか?
それとも精細でか弱い映画版七原くんですか?」
「「「「「いいえ、普通の七原くんです」」」」」
「おまえたちは、とても正直なひとですね。ご褒美に三人の七原くんをあげましょう」
何と七原が三人に!!七原ガールズは大喜びでくじ引きを始めた。
「フッフッフ……いい事聞いたぜ」
「に、新井田くん!いつの間に……ッ!!!」
「覚悟しろ千草ぁぁぁーー!!!!!」
貴子を急襲する新井田!!!
しかしッ!!!呆気なく返り討ちにあい、反対に泉に突き落とされてしまった!!!
「おまえが落としたのは、優しくて誠実で純情な新井田くんですか?」
「ええそうよ」
「おまえは嘘つきですね。罰として何もあげません」
「やったわ思った通りよ。悪は滅び去ったわね」
「よかったな貴子。おまえ世界一カッコイイ女だよ」
「あんたこそ、いい男になったわよ」
すがすがしいまでの杉村と貴子をクラスメイト達はガタガタと震えながら遠巻きに見詰めていた……。
なぜなら新井田は………クラスメイト達は考えないようにした……。
「しかし便利な泉だなぁ……オレたちが、そのお嬢さんを争う必要もないわけだ」
「何でだよ川田」
「わからいのか七原?これを使って、お嬢さんを増やせばいいからだ」
「あ、なるほど」
「え?ちょ、ちょっと待ってよ私は……」
ドーンッ!!!その時誰かが背中を押した。 当然のように美恵は泉の中にまっさかさま!!!
「おまえ達が落としたのは、キツいけどカッコよくて媚びない美恵さんですか?
アイドルのように愛らしいけど魔性を秘めている美恵さんですか?
しっかり者で女子グループのリーダーになれる美恵さんですか?
お嬢さんだけど気取らなくて可愛い美恵さんですか?」
「「「「違いまーす(違うぞ)」」」」
「おまえ達はとても正直な人たちですね。ご褒美に5人の美恵さんを……」
「いらねーよッッ!!!!!」
4人は反射的に振り返った。せっかく全てが上手くいくかもしれないのに誰だ?邪魔するのは!!!
「いらねーよッ!!さっさと本物の美恵を返せよッ!!!」
「み、三村ッ!!!バカッ!!せっかく神様がオレたち5人に平等に美恵さんをくれるチャンスを与えてくださったんだぞ!!!」
「そうだ、こんなチャンスは二度とないんだ!!みんなが幸せになれるんだぞ」
「……三村。おまえは頭のいい奴と思ったが、そうじゃなかったのか?ふぅ…」
「静かにしてくれないか。オレは美恵が欲しいだけなんだ」
「うるさい、お前達は黙ってろよッ!!!!!」
三村はキッと神様を睨みつけた。
「……美恵は確かに生意気な女だよ。いつも口うるさいし、怒ってばかりだし…… 千草みたいに大人でもない。
相馬みたいに色気もない。内海ほどしっかりもしてないし、金井みたいに素直で可愛い奴でもないよッ!!
でも、それでもオレにとっては本物の美恵だけが、世界でたった一人の大事な女なんだよッ!!!
どんなに魅力的でも、偽者の美恵なんかいるかッ!!!
オレは美恵一人がいれば、他には何にもいらないんだッ!!!!!」
「……いいもの見せてもらったよ。いいか、人を好きになるってことは覚悟がいることだからな」
次の瞬間、神様も泉も跡形なく消えていた……。
呆然と、その場に座り込んでいる美恵を残して……。
「美恵……大丈夫か?」
「……………」
俯き顔を上げようとしない美恵に三村は焦りだした。
「おい、何か言えよ」
「……バカ」
「え?」
「バカバカッ!!あんな恥ずかしいこと大声でッ!!!」
「へ?もしかして聞こえてたのか?!」
コクン……真っ赤になりながら俯く美恵。
「……ねえ本気なの?」
「……え?」
「……さっき言った事よ」
「……冗談であんなこと言えるわけ無いだろ」
美恵はグイッと三村を引き寄せると、そっと耳打ちした。
……ねえ信史。私、すごく嬉しかったのよ
~END~
