あたしの名前は相馬光子
彼女の名前は天瀬
美恵
可愛い美恵
あたしがあなたを守ってあげる
世の中のうすぎたない男どもから
★コ・ア・ク・マ★
クラスのマドンナこと天瀬美恵
B組男子で彼女に惚れていないものなどいないほどの美少女
しかし彼女にデートの申し込みをするのさえ一苦労
なぜなら……。
「あ、あの美恵さん、エリック・クラプトンのチケット入ったんだ。よかったら……」
「美恵~~!!」
「みっちゃん!」
突然割り込む光子、当然ながら心の中で、チッと舌打ちする七原。
もちろん、さわやかというイメージが売りである以上表面には出せないが。
「あーら、七原君、それ、なあに?」
サッと、チケットを奪う光子。す、すばやい!!
「すごい、エリック・クラプトンじゃない!幸枝、幸枝!!」
「なあに相馬さん?」
「見て、エリック・クラプトンよ。七原君と行って来なさいよ」
な、何をいうんだ!?この悪魔!!
真っ青になる七原、しかし
「いいの七原くん?嬉しい」
「え?あ、あの、それは……」
「よかったね幸枝」
美恵にまで言われて撃沈の七原
「あーら、七原君、まさか幸枝に不満があるっていうの?」
「あ、あるわけないだろ?!」
「じゃあ、決定ね♪」
こうして哀れにも、夢にまでみた美恵とのデートを現実のものにできなかった七原。
しかし、光子に邪魔されて、美恵に告白すらできないのは七原だけではなかったのだ。
「おはよう、みんな」
「おはよう美恵、今日も綺麗だぜベイビィ」
背後から抱きつく三村、この男、他の奴とは一味違う。
男性キラー・光子の血が騒いだ。
「ちょっと三村くん、美恵に手を出さないでちょうだい」
「ああ?何だよ相馬、恋愛は自由だろ?おまえにとやかく言われる筋合いはねえよ」
「とくかく、美恵から手を引いて」
「引くわけないだろ?」
「最後の忠告よ。出ないとあたしも本気で怒るわよ」
「何だよ本気って?やってもらおうじゃないの」
あくまで強気の三村、が、その数秒後に早くも後悔することに……。
「そう、わかったわ……うっ、いきなり吐き気が!!」
突然、口元を押さえ屈み込む光子。
「みっちゃん、どうしたの!?」
……おい……
「美恵……どうしよう。あたし…あたし…」
……ま、まさか……
「赤ちゃん出来ちゃったみたい」
……まさかぁ!!!……
「責任とってね、三村くん」
相馬ぁ!!この悪魔!!
「ち、違う、違う!!いい加減なこと言うな!!」
よりにもよって美恵の前で!!!
「ひ、ひどい…あたしのこと遊びだったのね……」
偽りの涙まで流すな!!!
「三村くん最低!!」
「美恵、ち、違うんだ!!」
「男なら責任とりなさいよ!!」
「オレがそんなことするわけないだろ!!」
必死に弁解する三村、……が!!
「……三村なら、やりかねないな」
「ああ、まさか相馬にまで手を出してたなんて」
七原、杉村!!おまえたちまで!!
光子が誰にも悟られないよう、小さくガッツポーズをしていたのは言うまでもない。
それから数日後――
「美恵」
「なあに桐山くん?」
「今度の日曜、桐山家でパーティーがあるんだ。来てくれないか?」
「パーティー?すごい!でも、いいの私なんかが行って?」
「当然だ。そこで父に美恵を紹介したいんだ」
父親に紹介だぁぁ!!?
いろめきたつ教室、一番感情を高ぶらせているのは、もちろん、この人。
「だめ、だめよ、美恵!!」
「みっちゃん、どうして?」
「美恵の為に言ってるのよ」
「相馬、黙っててくれないか?これはオレと美恵の問題だ」
口外に『おまえは口をだすな』ときっぱり言われた光子はキレた。
いい度胸じゃないの桐山、こうなったら三村を沈めた超必殺技で!!
「うっ、いきなり吐き気が!!」
「みっちゃん、どうしたの?!」
慌てる美恵。もっとも当のターゲット桐山は、三村と違い平然としている。
冷静でいられるのも今のうちよ!!
「どうしよう桐山くん……あなたの赤ちゃん出来ちゃったみたい!!」
シーン……静まり返る教室……
美恵はぽかんとした表情で桐山をみた。
他の連中も桐山を見詰めた。
唯一、表情を崩さなかった桐山。しばらく考え込んだ後に……。
「美恵」
「な、何?桐山くん」
「子供というものは、指一本触れなくても出来るものなのか?」
シーン……再度、静まり返る教室……そして
「やだ桐山くん、冗談上手いんだから」
大笑いの美恵。かなり受けているようだ。
「みっちゃんもダメだよ。タチ悪すぎるよ、そのジョーク。桐山くん相手じゃ通用しないよ」
まだ、笑っている
美恵。遠くで三村がすねていた。
「オレの時と態度が違うじゃないか!何で桐山は信じてオレは信じてくれないんだよ!!」
まあ、日頃の行いの報いだな。
光子が誰にも悟られないよう、ハンカチをかみ締めていたのは言うまでもない。
……桐山……あいつは三村と違って一筋縄じゃいかないわね……
その日の下校時間――校舎出入り口
ゲタ箱から靴を取り出す光子
その時っ!!!!!
ぱらららぁぁっ!!!!!!
まるで古びたタイプライターのような爆音
何が起きたのか……数秒後、周囲を見渡す光子
ゲタ箱に無数の銃弾、器用に光子を避けてはいるが……一歩間違えれば当然『死』あるのみ……
フッ……
微かに口元を笑みの形に歪める光子
そう…これが、あんたの宣戦布告ってわけね……
光子の戦いは、まだまだ始まったばかり!!
完