本日の予定
美恵を家に招く
最高にムードをあげる
友達以上の関係になる
完璧な予定
そう……完璧なはずだった……
悪女―後編―
この何の変哲も無い住宅街に分不相応な軍用ヘリの編隊
その中でも、一際大きい機体の中では……
「若様、あれが三村邸です」
「あそこか……美恵が『拉致監禁』されているのは。……やれ」
「ラジャー。ファイヤーーー!!!」
チュドーーーンッ!!!
「おい……嘘だろ!!」
「ちょっと、あれって……ロケット砲!!?」
「「「ギャーーー!!!!!!」」」
間一髪、飛び出した4人。後は燃え盛る三村邸。
「若様、地上部隊を降下させますか?」
「いや、必要ない。あとはオレがやる」
「……い、家が……30年ローンのマイホームが……」
あまりの衝撃に白髪になってしまった三村父
追い討ちをかけるように……ぱらららっ!!!!!!
「「「ギャーーー!!!!!!」」」
逃げ惑う、三村、光子、そして三村父
「美恵、大丈夫か?」
「桐山くん!どうして、ここに?!」
「助けにきた」
しっかりと美恵を抱きしめる桐山
「あ、あの……桐山くん。三村くんの家が……」
「美恵が気にすることはない」
気にしなくてどうする!!?
ハデに燃える我が家に、しばし呆然の三村だったが、やっと我に返った。
「桐山!!おまえ、どういうつもりだ!!」
「……三村、生きていたのか」
「軍用ヘリまで投入しやがって、おまえは親にどういう教育受けたんだよ!!」
「そ、そうだ!!」
三村父、復活。髪は真っ白で抜けかけてもいるが、この仕打ちを黙っているわけにはいかない。
「貴様!!親の名前を答えろ!!!」
「オレの親の名前?」
「そうだ!!訴えてやる!!!」
「桐山広春だ」
「桐山広春?!そいつが、とんでもないガキを野放しにしている元凶か!!……んっ?桐山広春?」
「そうだ」
桐山父の名前を聞き、急におとなしくなる三村父。
「……………」
「パパ!何黙ってるのよ?!もっと言ってやりなさいよ!!」
「相馬の言うとおりだ!!」
珍しく意見が一致している二人。
「………桐山広春?……もしかして、桐山財閥の?」
「そうだ」
「貴様……い、いや……あなた様は、桐山家の御子息?……つまり桐山財閥の次期御当主様?」
「そうだ」
「父に文句が言いたいのか?呼んでやろうか?」
携帯を取り出す桐山
「……と、と、とんでもない!!」
「「パパ(親父)!!告訴するんじゃなかったの(かよ)!!」」
「バカなことをいうな!!桐山様は我が社の大株主兼親会社だぞ!!」
「文句はいいのか?」
相変わらず無表情で質問する桐山
「文句だなんて、めっそうもございません。こんなボロ家の一つや二つ」
桐山にへーこらする三村父。この瞬間、三村の父親に対する軽蔑の念が一億倍倍増したことは言うまでもない。
こうして一件落着(………汗)
しかし……この話にはとんでもないオマケがついてきたのだ……
「美恵~♪」
「みっちゃん」
「ねえ、今日うちに来ない?」
「いいの?」
「もちろんよ。あんたも嬉しいでしょ?シンちゃん」
クラス中の視線の中、シャーペンを握り締める三村
「相馬の奴ぅ……」
ボキッ!!←注意:シャーペンが破壊された音
「シ、シンジ……落ち着きなよ」
あの後、三村家がどうなったのか?
旅行から帰った三村母が消滅した我が家を目の当たりにして(加えて、夫が中学生と付き合ってたことで、されに切れて)今度という今度は結婚18年目にして怒りの頂点。
亭主に完全に愛想をつかし、娘・郁美を連れて実家に帰ってしまったのだ……まあ、無理もないが。
そして、その後釜に、なんと光子が座ることに……
つまり、光子と三村は同級生にして、義理の親子になってしまったのだ。
もちろん光子の目的が、美恵に手を出せないように、三村を監視するためだということは言うまでもない。
「シンちゃんさえ、よければ、あたしのこと『お母様』って、呼んでいいのよ。
あっ、もちろん、あたしの目の黒いうちは美恵には指一本触れさせないから。そこのところ、よろしくね」
こうして、美恵をめぐる仁義無き戦いは(桐山の乱入のせいで)うやむやのうちに光子の完全勝利となったのだった。
メデタシメデタシ