交換日記


美恵」
決して低くはないが威厳のある声
いや、問題は、その声の主が呼んだ相手だ。


美恵、その名を持つ女性はB組ひろしといえども(笑)ただ一人
天瀬 美恵』
美人で可愛くて優しくて、ちょっぴり天然の癒し系
かのひとに心を寄せない男などB組では少数派
なにしろ国信、瀬戸、月岡、山本を除く全ての男の愛を一身に受けているのだ。


あら、アタシだって美恵ちゃんを愛してるわよ。
だってアタシたち海より深い女の友情で結ばれてるんだもの♪
(by ヅキ)


しかも、天使の顔した小悪魔・光子と孤高の女王様・貴子まで美恵のことがお気に入りというから、たいしたものだ。
そのマドンナ・美恵に一体何を?


「なあに?和雄」

!!!!!!!!!!




次の瞬間いっせいにクラス中の男ども(女子2名含む)が立ち上がった。
『桐山くん』ではなく『和雄』?呼び捨て……こ、これは一体?
そして、そんなクラスメイトたちは完全シカトの、この少年
顔立ちこそ、お上品で綺麗だが、その正体は泣く子も黙る最強中学生・桐山和雄
クラス中は二人の意味深な行動に二重の意味で驚愕していた。
あの桐山が美恵に何の用があるというのだ?
もっとも相手が、あの桐山だけに誰もが疑問を感じながらも、口に出せない。
が、答えはすぐに判明した。


「……これ」
「あっ、そうか今日は私の番だったね」
桐山から手渡されたそれは………

交換日記!!!!!!!!!!

「あれっ?和雄もう帰るの?」
「ああ、美恵に用があっただけだからな」
「もう、そんなことじゃあ、出席日数危ないよ」
「問題ない。父が理事長に話をつけてある」

なんの話だよ、何の!!

「そう…ならいいけど」

よくねーよ

「明日は来る?」
「当たり前だ。美恵に会いたい」
その言葉に頬を紅く染める美恵。
クラスの野郎どもの衝撃度はピークに達していた。




そして次の授業…体育で誰もいない教室……のはずなのに……一人の影……ゴソゴソ


「あった、これだ…それにしても、桐山の奴、オレの美恵と交換日記だなんて、ふざけやがって。なに書いてるんだ?」
「ひとの日記を盗み見か?感心せんなぁ」
「背に腹はかえられないんだよ。オレには愛する美恵を守る義務がある……って、……川田!!どうして、ここに!!?」
「おいおい、それはこっちのセリフだ。どうやらオレとおまえは同類ちゅうことだな」
「って、ことはおまえも美恵を?」
「あの、おじょーさんはほっとけないんだよ」
「二人とも何してるんだ!!勝手にひとの日記をみようだなんて、美恵さんに失礼だろ?!」

「「七原!!」」

「まったく、その通りだ!!おまえたちがやろうとしていることはプライバシーの侵害だぞ!!」

「「「杉村!!」」」

「なんで、おまえたちまで、いるんだ?」
「シンジ~、ご、ごめん」
「豊?」
「つい、口がすべっちゃったんだ」
「まあまあ、おちつけ。とどのつまり、おまえたちの目的もオレや三村と同じ。違うか?」
にやにやしながら、いきなり核心をついた川田
「ち、違う!!」
「そうだ、おまえたちと一緒にするな!!」
言葉とは裏腹にあせる七原と杉村。ああ、その時、確かに二人の心の中では天使と悪魔が死闘を繰り広げていたのだ。


「あーら、だったら、どうして、そんなに動揺しているのかしら?」
「相変わらずバカね、弘樹。そんなことだから、桐山に先越されるはめになるのよ」
「そ、相馬!!」
「貴子!!」
B組の中でも特に美恵を熱愛する6人+おまけ1人勢ぞろい。


「こうなったら、オレら全員共犯者や。わかるな?」
「オレは最初から見るつもりだったぜ」
「シンジ、オレもうしらないよ」
「あたしの可愛い美恵を桐山の魔の手から守るためだもの」
「たしかに美恵さんのためだ。必要悪…だよな」
「ああ…気は進まんが仕方ない…な」
「ほら!しっかりしないさよ弘樹」


全員が心を一つにした、その時……ガラッ!!
「てめえら!!ボスの日記を見ようだなんて!!ぶっ殺すぞ!!」
「オレだって読みたいのを我慢してんだぜ!!」
「竜平くんったら、素直ね。ウン」
「オレって、目立たないなぁ……」
桐山ファミリー参上!!ちなみに上から、沼井・笹川・月岡・黒長


「固いこと言うなよ。そんな事言って、実は、おまえたちも美恵狙いなんだろ?」
「「「うっ!」」」
三村の鋭い指摘に一気に撃沈の桐山ファミリー
「やーね。三村くん、アタシの心は三村くんのものよ」




とにかく利害が一致した11人は日記に目を通すことにした。




○月X日
今日から和雄と交換日記だなんて、すごく嬉しい。
私、ずっと和雄と仲良くしたかったの。
ねえ、和雄は勉強もスポーツも何でも一番で、しかも桐山財閥の御曹司なのに、どうして不良のボスをやってるの?
気にさわったら、ごめんね。
でも、もしも和雄に私には想像もつかないような悩みがあったらと思うと、すごく気になるの。

○月X日
オレも美恵同様、嬉しいんだと思う。
美恵の疑問だが、1年の時、充にボスになってくれと頼まれた。
そこで、オレはコインを投げたんだ。表がでたら、断る。裏が出たら、承諾する。




「コ、コインーーー!!?そんなことでオレたちと、つるんでいたのか、ボスは!!」
沼井3000のダメージ




○月X日
今日、初めて和雄とお昼一緒に食べたでしょ。あのお弁当、私の手作りだったの。
和雄のために2時間もかけて作ったのよ。
それなのに、何にも言ってくれないだもの。もしかして、不味かったの?

○月X日
いや、不味くはないと思う。ただ、オレは最初から、味はどうでもよかったんだ。
美恵がオレの為に作ってきたというだけで、なぜか胸がいっぱいになった。
これは一体どういう気持ちなんだ?オレにはわからない。




「恋よ、恋。ラブなのよ。桐山くん」
月岡のせいで、周囲に5000のダメージ




○月X日
和雄、またケンカしたの?お願いだから、もうやめて。和雄にもしもの事があったらと思うと私すごくつらいの

○月X日
わかった。もうしない。XYZ高校から申込まれた決闘は笹川と黒長にでもやらせておく。




「「あ…あんまりっすよ。ボス~~……」」(泣)
笹川と黒長に3000ずつダメージ




○月X日
今日、七原くんに映画に誘われたの。すごく観たかったターミネーター3。
行ってもいい、和雄?あっ、誤解しないでね。七原くんは、友達として誘ってくれただけだから。
だって七原くん、幸枝と仲いいし。




「……あのチケット、徹夜して手に入れたのに……しかもオレと委員長の仲、誤解してる……」
七原に5000のダメージ




○月X日
七原と行く必要はない。美恵が観たいと行ったから、もうすでに映画館を貸しきっておいた。明日二人で行こう




「な…!!オレが断られたのは桐山のせいだったのか!!」
七原に追加で7000のダメージ




○月X日
新井田くんって、本当にずうずうしいとこあるよね。
日直の片付けをしてたら、突然やってきて「オレ、前から、おまえのこといいなって思ってたんだ」なんて言って、肩抱くんだもの。
男のひとに、そんなことされたの初めてだから、びっくりして突き飛ばしたら「男の言うこと聞けよ!!!」って逆ギレされるし、すごく怖かった。




「あのクサレ男!!美恵にまで手を出してたなんて、ぶっ殺してやるわ!!」
「お、おちつけ貴子」




○月X日
すまない美恵。オレがそばにいたら、そんな思いはさせなかったのに。
だが、安心しろ。新井田には、もう話をつけておいた。二度とおまえには手を出さないはずだ。




「ねえ…。新井田って、『事故』で重傷負って入院したよね。あれって……」
「言うな豊……」




○月X日
光子に合コンに一緒に行ってほしいって頼まれたの。
ただの人数合わせだから、あんまり気にせずに適当に話をあわせるだけでいいなんて言われたけど。
どうしよう…私、そういうの苦手だし、困ったなぁ。
おまけに相手のひとたち、すごいお金持ちなんだって。▲◇社の社長の息子とか、医者の息子とか。

○月X日
▲◇社の社長の息子なら知っている。▲◇社はうちの末端の下請会社だからな。
オレが奴のかわりに行くから安心しろ。




「ええっ!?▲◇社の社長の息子、写真と違って、ものすごいハンサムだと思ったら、桐山だったの?
どうりで、どこかで見たような顔だと思ったわ」
「……気付けよ、相馬」
「だってオールバックじゃなかったから仕方ないじゃない」




○月X日
明日の日曜遊びに行こうって誘われたの。それも三人。一人目は貴子。杉村くんの武道大会に応援に行こうって。




「貴子…おまえ…」
ジーン……胸に熱いものがもみあげる杉村
「しょうがないじゃない。あんたってホントこういうことは押しが弱いんだもの」




二人目は川田くん。阪神の試合観に行かないか?って。
気持ちは嬉しいけど私、野球はあんまり好きじゃないし、阪神スワローズのこと全然知らないし




「タイガースや…お嬢さん……」




三人目は三村くん。遊園地で遊んで夜は食事でもしようだって。
『よかったら家に来てくれベイビ。都合のいいことに親父は出張、お袋は婦人会の旅行、妹は友達の家に泊まってるんだ』
何が都合がいいんだろう?




「おいっ!なんだよ、おまえたち!その白い目は!!」




○月X日
昨日から、なぜか胸が痛いんだ。特に三村の顔をみるだけで嫌な気分になる。
だが反射的にイングラムを乱射したおかげで、三村・川田・杉村が怪我をして、結果的に美恵はオレと出かける事になったので、よしとしよう。
おまえは怒っていたが、もしかしてオレが悪かったのかな?




「「「よしとするなーーー!!!!!」」」




○月X日
ねえ、和雄。私、夢を見たの。すごく素敵なひとと恋に落ちて中学を卒業した日にプロポーズされて16歳の誕生日に結婚する夢……。正夢だったらいいのに。




「「「「「「「「「「「なんだって(ですって)ーーー!!!??」」」」」」」」」」」




○月X日
美恵……




「ボス、どうしたんだ?筆が進んでないけど。さすがのボスも、とまどって書けなかったのか?」
「桐山も人の子だったんだな。それにしても自分に好意を持ってる男に、こんな刺激の強いこと教えるなんて、美恵さんも罪なひとだよ 」
「もっとも天瀬は気付いてもいないだろう。そこが天瀬のいいところなんだが」
「弘樹!!あんたってホントお人好しね!!」
「どうしたんだ貴子?」
「ウフフ…気付かない?あの桐山くんが動揺なんて、するわけないでしょ」
「おいヅキ!!どういうことだよ!!」
「つまり続きを書けなかったんじゃなくて、書く必要がなくなったということや……」
「だから、わかりやすくいってくれよ」
「もしもオレが桐山の立場なら呑気に日記なんて書いてられないぜ。すぐにでも美恵の家に行って……」




鈍感な七原たちも、さすがに、その意味を理解した。流れ落ちる汗…漂う怪しい空気…その静寂を破ったのは…




「即プロポーズね」(光子)




シーン……




「「「「「「「「「「す、すぐに次のページをぉぉぉっっっ!!!!!」」」」」」」」」」




○月X日
和雄…昨日はありがとう。でも、すごく、びっくりしちゃった、深夜なのに突然(それもベランダから)くるんだもの。
本当に正夢になって幸せすぎて何て言ったらいいのかわからないよ。
和雄ったら、早速、婚約発表しようだなんて言うんだもの。嬉しいけど、不安なの。
もしもクラスの皆に反対されたら私どうしよう。




「「「「「「「「「絶対反対だっ(っよ)ーーー!!!!!」」」」」」」」」




○月X日
美恵が心配することはない。だが、もしもオレたちの婚約に反対するやつがいたら、オレが存在そのものを削除してやる。

それがオレの提案だ。賛成してくれるかな?




「「「「「「「「「……………」」」」」」」」」
「まあっ、桐山くんたら、よっぽど美恵ちゃんのこと愛してるのね。こうなったら皆あきらめるしかないわよね。ウフフフフ」
そう…やたらケンカに強い奴がそろっているB組の連中でさえ、桐山に真正面から、やりあって勝てる奴など一人もいない。
こうして桐山と美恵の婚約発表はつつがなく行われ、B組男子生徒は泣く泣く彼女のことをあきらめたのだった。




メデタシメデタシ









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後書き
なんか、登場人物のセリフがなってないな……。初めての逆ハーなので、見逃して下さい。 それにしても実際あったら怖いよ。こんな交換日記……