「おはようベイベェ。今日も綺麗だな美恵」
教室に入るなり美恵に抱きつく三村。
次の瞬間、脳天にグサッという不吉な音がした。
「ああ、あたしの美恵~~、大丈夫?」
「……み、光子……三村くんが……」
頭がパクッと割れ、床に倒れこんでいる三村……。
「ああこれ?あたしは気にしないわ」
「気にしろよ!!!!!」
三村、ふっかあぁぁぁーーつっ!!!!!
今だに頭にはカマが突き刺さってはいるが、とりあえず元気だ。
「……チッ、生きてたの、スケコマシ」
「……そう簡単に死んでたまるか、この悪魔」
ザ・チェンジ!!
この城岩中学三年B組には天瀬 美恵という愛らしい少女がいる。
そして、その少女をめぐって日夜陰険な破壊活動を繰り広げている男女がいる。
男の名は三村信史。さすらいのバスケットマン、名うてのプレイボーイがどこで頭を打ったのか、今や美恵を熱愛して止まない情熱恋愛男に大変身。
女の名は相馬光子。カツアゲから脅迫、はては殺人未遂まで平気で犯す不良娘がどこで頭を打ったのか、今や美恵を溺愛して止まない超過保護女に大変身。
七原「なあ三村。相手は女の子だし、少しは手加減しろよ」
杉村「そうだぞ。婦女子に対してムキになるなんて男の風上におけないぞ」
瀬戸「シンジぃ~。もうやめなよ、見てられないよ」
「うるさい、引き下がれるかッ!!!ここで負けたら天国の叔父さんに合わす顔がないッ!!!」
比呂乃「光子。あんた、変わったよね。以前みたいに金稼ぎしなくなったし」
好美「ねえ、どうせ一時の気まぐれなんでしょ?」
「うるさいわねぇ。あたしが守ってやらなかったから、誰があの変態から美恵を守るよね」
「「絶対に美恵は渡さない(わ)ッッッ!!!!!!!!!!」」
そんな、ある日のことでした。
2人はバッタリ階段で鉢合わせ。
「……この悪魔。いい加減に美恵から手を引けよ」
「……それは、こっちのセリフよ。あんたみたいに節操のない男に美恵は渡さないわ」
「何だとッ!!上等だ、相馬!!」
「今日こそ決着つけてやるわッ!!!」
手を出したのは。あ・な・た♪
あれから何があったのか?
2人は階段の下で折り重なるように倒れていた。
おそらくは激しい戦闘の末、階段から転がり落ちたのだろう。
2人を発見した七原と杉村が溜息をつきながら2人を保健室に運んだ。
「……うーん……ここは?」
「気が付いたか?」
あら、杉村くんじゃない
「ここは?」
「おまえ階段の下で倒れてたんだぞ。全く、いい加減に低レベルな争いは止めろよ」
……全く、説教くさい男ね。ハッハーン、読めたわ。
さては杉村くん、あなた、あたしに感謝のキスくらいして欲しいって魂胆ね。
…たく、しょうがないわねぇ。してあげるわよ。
「ほら、一回だけよ」
チュ……光子の唇が杉村のそれに触れた。
ピシッ……ッ!!!!!
あら?気のせいかしら、一瞬空気が固まったような。
もしかして杉村くん、ファーストキスだったの?
キスくらいで固まるなんて案外可愛いのね。
「弘樹ッ!!!!!」
あら貴子じゃない。
「あんたって男はッ!!!!!」
「ち、違うんだ貴子ッ!!!!!」
あらやだ、もしかしてヤキモチやいてるの?
クス、貴子って案外嫉妬深かったのね。
それにしても杉村くん、顔面蒼白じゃない。
最高に面白いもの見せてもらったわ。
「ご、誤解だ貴子ッ!!!!!」
「誤解も六回もないわよ、汚らわしいッ!!あんたとは絶交よ、もう顔も見たくないわッ!!!」
あらあら、1回キスしたくらいで絶交なんて。
かわいそうな杉村くん。
「……うーん……ここは?」
「気が付いたか?」
あれ、七原じゃないか。
「ここは?」
「おまえ階段の下で倒れてたんだぞ。全く、いい加減に低レベルな争いは止めろよ」
そうかオレ……相馬と階段から転がり落ちて……。
サンキュー七原、また迷惑かけちまったようだな。
でも、おまえにはいつも感謝してるんだぜ
「サンキュー七原。おまえは最高にいい奴だよ」
そう言って、オレは七原の首に腕を回して抱きしめた。
カァッ……ッ!!!!!
あれ?気のせいか?七原なんで顔が真っ赤なんだよ。
男同士で照れることないだろ?
この前の校内球技大会で優勝したときだってオレたちチームで抱き合って喜んでいたじゃないか。
「しゅ、秋也!!!」
国信、そうかおまえもオレの様子見に来てくれたのかサンキュー。
「し、信じられないよ。おまえがそんな男だったなんて!!!」
「ち、違うんだノブッ!!!」
はぁ?何言ってんだ国信。どういう意味だよ。
そんな男って七原がか?
こいつが一体何したって言うんだよ?
「ご、誤解だノブッ!!!!!」
「誤解も何もないよ!!最低だ、和美さんを一生好きだっていった舌の根もかわかないうちに!!!」
はあ?何言ってんだよ国信。最低って七原がか?
七原、おまえ一体何やったんだよ。
「「さよなら弘樹ッ(秋也)!!!!!」」
「「ま、待ってくれ、貴子(ノブ)!!!!!」」
「「あーあ、いっちゃった」」
「「……どうしてくれるんだ。おまえのせいだぞ」」
「「なんで?」」
「「おまえのせいで貴子(ノブ)に絶交されたんだ。どうしてくれるんだよッ!!!!!」」
杉村「三村ッ!!!!!」
七原「相馬ッ!!!!!」
「「え?」」
「「おまえの悪ふざけのせいで……オレはもう帰るッ!!!!!」」
……シーン……
今なんていった?
杉村が……三村て……でもって七原が相馬……確かにそういった。
三村と貴子はお互い振り向いた。
そして一瞬固まった。
「「なんでオレ(あたしが)そこにいるんだ(の)ッッ!!!!!」」
そう……なぜかはわからないが、2人は中身が入れ替わっていたのだ……。
「……で、何でオレに相談するんだ?」
「だって川田くんって、あたしたち若者が知らないこと何でもしってそうだもの」
「そうそう、年の功って言うじゃないか。何とか知恵しぼってくれよ」
ここは屋上。そう2人は最年長者である川田に相談を持ちかけたのだ。
「……あのなぁ、おまえら。それが人にものを頼むときの態度か?」
「……たく、しょうがないわねぇ。キスくらいしてあげるわよ」
「や、やめろ相馬ッ!!!今のおまえは体が三村だろうがッ!!!!!」
「あら、そうだったわ」
「み、三村くんッ!!!!!」
ゲッ!!その野太い声は月岡ぁぁぁ!!!!!
「いやぁぁーー!!!!!不潔よぉぉぉーーー!!!!!
三村くんにそんな趣味があったなんてぇぇぇーーー!!!!!
裏切り者っ!!川田くんもろとも恨んでやるぅぅーー!!!!!」
そう言うと月岡は両手で顔を覆いながら走り去っていった。
沼井「……し、知らなかった……三村、おまえにそんな趣味があったなんて……」
笹川「……読めたぜ三村……おまえ、さてはその趣味を隠す為にプレイボーイしてたんだな?」
黒長「……しかもマッチョ系が好きだったなんて……」
「そうか三村と川田は愛し合っていたのか。オレはそう考えた、間違っているか?」
「「「いいえボス完璧です」」」
「ちょっと待ったぁぁーー!!!!!」
慌てて三村(体は光子)は叫んだ。このままではオレは変態にされてしまう!!!
三村(体は光子)は『違う!!オレは変態じゃないッ!!!』と叫ぼうとした。
その時ッ!!!!!
「……ばれちまったらしょうがないなぁ」
「え?」
三村(体は光子)は呆けた表情で振り返った。
「ああ、そうだ。このサードマンこと三村信史は何を隠そう同性愛者なのさ。
こう見えても、肉体関係持ってる男は数知れず。
学校の中では隠しとおせると思ったんだが、失敗したぜ」
(そ、相馬ッ!!おまえって奴はッ!!!!!)
「そうか三村。おまえは俗にいうゲイというやつで彰と同じ人間なんだな」
「そういうことだ桐山。これからは、そういう目でオレを見てくれよな」
「ああわかった」
「ちょ、ちょちょちょ…ちょっと待てよ!!桐山、そんなこと信じてるんじゃねぇ!!!」
「相馬、何をそんなに焦っているのかな?」
「ああ、実はオレたちの戦いを終わらせたんで感動のあまりおかしくなってるのさ」
「おまえたちの戦い?もしかして天瀬のことか?」
「そうだ。オレはゲイを隠す為に美恵に手を出してたんだが、カミングアウトした以上、その必要もないからな。
だから相馬に譲ってやることにしたんだよ」
相馬ッ!!!何て卑劣な女なんだッ!!!!!
「三村くんがゲイ?それ本当?」
美恵ッ!!いつの間にッ!!!!!
「ああ、そうだ。と、いうわけで今日からおまえは相馬一人のものだ。
オレは川田とよろしくやることにしたから、今日限りオレのことは忘れてくれ」
(おいおい相馬。オレを巻き込むのはやめてくれよ……全く、ひとを信じるということは本当に難しいな)
焦る三村(体は光子)。だが光子はお芝居が得意なので、誰もがまさか中身が光子だとは思わずに光子(体は三村)の言うことを信じてしまっていた。
思った――クソッ相馬、オレは結局おまえに負けたんだな
そう思った次の瞬間、三村(体は光子)は走り去っていた。
「……叔父さん……オレ…オレ……うぅ…」
ちくしょー、こんな校庭の桜の木下で泣くなんて、仮にもこれが第三の男と言われた三村信史なのか?
いくら相馬の姿とは言え、情けなくて涙が溢れてくるぜ。
「光子」
「……美恵」
「どうしたの?」
「……なんでもない。ほっといてくれ」
「出来ないよッ!!光子は親友だものッ!!!」
そう言うと美恵は光子を抱きしめた。
「え?」
「悩んでることがあるのなら私に相談して。一人で泣くことはないよ。
私、ずっとそばにいるから……」
(……胸…あたってる……)
美恵は気付かなかったが、三村は満面の笑みを浮かべていた。
そして自らも美恵を抱きしめた。
(……やわらか~~いvvv相馬の体もそう悪いもんじゃないなぁ。
こんなこと、元の体じゃできないもんなvvv)
三村(体は光子)は気付いてなかった……光子(体は三村)がすごい目で見ていることに……。
その後、三村は光子の体であることを利用して美恵に何度も抱きつき、幸せな一日を過ごした。
「ちょっと三村くん」
「あれ?何だよ相馬」
「来て頂戴」
光子(体は三村)は強引に三村(体は光子)に連れ出された。
連れて行かれた場所は2人が転がり落ちた階段だった。
「何だよ相馬。こんなところに連れ出して」
「川田くんが言ってたの。元に戻るには同じ場所で同じ衝撃を与えるのが一番だって。
……だから、いくわよッ!!!」
そう言うと同時に光子(体は三村)は三村(体は光子)を抱きかかえて――飛んだ。
「……やっぱり痛いわ」
「……痛い…無茶しやがって。ん?相馬オレたち元に戻ってるぞ!!」
「やったわ。これで一件落着ね」
――次の日――
「あれから色々考えたけど……やっぱ元の体が一番だよなぁ。
所詮、女の体じゃあ、あーんなことや、こーんなことはできないもんなぁ」
三村よ……あーんなことって何?
「さて…と。美恵……は。……いた!!目標補足ッ!!!」
三村は猛ダッシュした!!!!!
「美恵ーー!!!!!オレのベイベェーーー!!!!!」
スッと三村の前方に光子登場。
「出たな、悪魔!!!だが、オレは昨日までのオレじゃないッ!!!!!
特別プレゼントだ、受け取れ相馬ッ!!!!!」
三村が爆弾を取り出そうとした……その時ッッッ!!!!!
「みんな、三村くんよッ!!!!!」
何と、どこから集まってきたのか女の集団がッ!!!!!
「三村くん、どういうことよ!!?」
「昨日、あたしと結婚してくれる約束はどうなたのよッ?!!」
「あたしとも結婚の約束してくれたわよ!!!」
「あたしだって、そうよ!!」
「どうして他の女と同じ約束してるのよッ!!!!!」
「あたしとのことは遊びだったね!!!」
「酷いわ。一体、誰が本命なのよ!!!」
「答えなさいよ!!!!」
「さぁっ!!早くっっっ!!!!!」
「「「「「「「「「「この中から一体誰を選ぶのよッ!!!!!」」」」」」」」」」
「え?」
そう!!昨日、三村が美恵を抱きしめていた光景をみた光子は切れた。
そして、三村のフリして三村親衛隊全員に結婚の約束をしまくったのだ!!!!!
「謀ったなぁぁ!!!相馬ぁぁぁーー!!!!!」
「あら、何のことかしら?モテモテでよかったわね三村くん。
さあ、いきましょ美恵。昨日美味しいケーキ屋さん見つけたの」
「うん」
こうして女の集団にモミクチャにされる三村を無視して二人は仲良く手をつないで行ってしまいましたとさ。
メデタシメデタシ
~END~