*注意*
この色は各生徒の心の中の天使の声
この色は各生徒の心の中の悪魔の声




「もうそろそろ席替えしてもいい頃かなぁ」
林田先生の罪のない一言
それが全ての始まりだった。




~席替補完計画~




光子「美恵 ーー!!あたしと隣になりましょう!!」
三村「おっと、そうはいかないぜ!!相馬の隣なんて危険すぎる」
杉村「三村。おまえに言えた義理かッ!!?」
貴子「全く、その通りよ。美恵 はあたしと弘樹で守るわ!!!」
沼井「ずるいぞ、おまえら!!」
新井田「千草と天瀬の間に挟まれたいぜ!!!」
笹川「やっぱ周囲は全員女子がいいよなぁ。ビバ、ハーレムッ!!」
川田「なんて節操のない奴等だ。やっぱお嬢さんは守ってやらんと」
七原「そうだよ。ここはやっぱり健全な奴が守るべきなんだ」
豊「どうかシンジが犯罪者になりませんように!」
和雄「……美恵 をモノにしたい」




・・・・・・・・・・。




「ま、待ちなさい、みんな!席替は公平に楽しくするものだ。
ケンカなんて絶対にダメだぞ」
が、そんな林田先生の意見など誰も聞いちゃーいなかった(汗)
このままでは戦争勃発だ。
その時……ッ!!
「オーホッホッホ!!ここはアタシがしめるしかないわね!!!」
「「「「「「「「「「でたなオカ魔ッッ!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」
「失礼ね。乙女よッ!!!!!
第一アンタ達さっきから聞いていれば好き勝手なことばかり言って、少しは美恵ちゃんの身にもなってみなさいよ 」
「何よ失礼ね!あたしは美恵 を心から大切に思っているからこそ隣になろうとしているだけよ」
「そうだ、そうだ!!黙ってろよ月岡!!」
光子、三村よ……なぜ、そういう時だけ気が合うんだ?
「ふーん、よくわかったわ。じゃあ、あんたたちの本心アタシが確かめてあげる」




ヅキは何やら怪しい機械を取り出した。
「月岡くん、これは一体?」
眼鏡のふちを摘みながらジッと目を近づけて見入る林田に月岡は説明した。
「これはアタシが開発したコンピュータ・ヅキよ。
このヘルメットをかぶれば催眠状態に入って、コンピュータが脳波信号をキャッチして、その人間の深窓心理をグラフィック画像表示してくれるの。
つ・ま・り。どんな人間だろうと本心がわかるという優れもの。
ノーベル賞ほしいくらいだわぁ」
「ほ、本当かな?」
「じゃあ、七原くんで試してみましょ。言っておくけど、クラスメイト全員参加してもらうわよ」














――七原秋也・彼の場合――


「じゃあ質問よ。七原くん、あなたはどうして美恵 ちゃんの隣になりたいの?」
「それは……彼女を守ってやりたいんだ。桐山や三村の魔の手から……」
幸枝「そんなの嫌よ!あたしだって七原くんの隣がいい。この意味わかる?」
典子「あたしだってそうよ。七原くんはあたしにとってギターを持った聖人だもん」
恵「あたしだって七原くんの隣になりたい」
友美子「あたし七原くんのカワイイ目が好き」
雪子「友美ちゃんも?あたしも好きなのに」
祐子「あたしも…実はいいなって思ったことある」
「……どうしよう。オレ一人の決断で大勢の女の子を泣かせることになる……
でも、誰かを愛するってことは他の誰かを愛さないってことだ。
可哀相だけど、ここは……」




「いい加減にいい子ブリッコしてんじゃねえ!!」
「お、おまえは!!?」
「オレはおまえの本心だよ!!男なら不特定多数の女と仲良くなりたい、これ常識。
まあ、オレのアイデアに耳貸せよ。
まず、おまえの右隣に美恵 。左隣に委員長。
前方および斜め前に雪子、典子、祐子を配置。
背後に友美子。斜め後ろに恵とノブ。
どうだ、こうすればハーレム状態だけでなく親友とも近くになれるんだ。美味しいだろ?」

「た…確かに。そのほうが平等だ……」
「秋也、騙されるな!!君は一途で純粋な男だったはずだ!!」
「うっせえ!!てめぇは黙ってろ!!さあ、どっちだ秋也?!!!」
「えーと……オレ、やっぱり女の子泣かせたくないから……
みんなと仲良くしたい……かな?」


「七原くん失格。男の本性見たって感じよね。さて…と、もう一人の誠実男は……」














――杉村弘樹・彼の場合――


「杉村くんの希望は貴子ちゃんと天瀬 ちゃんの隣になること。その理由は?」
「オレ約束したんだ。貴子に強い男になるって。
だから、オレは2人を守らなきゃならない」
「杉村!!!何、いいこぶってんだッッ!!!!!
おまえみたいな真面目そうな奴に限ってムッツリスケベだっていうのはお約束なんだよ。
おまえ童貞だろ?本当は千草と天瀬をまとめてモノにしようと企んでるんだろ?
オレの目はごまかされねーぜッッ!!!」


「あらやだ。新井田くんの意識が乱入してるじゃない」


「な、な、な……何て事を言うんだ新井田!!!!!
オレにはそんな下心なんて微塵も無い。
おまえと一緒にするなッッ!!!!!」
85、60、88」
「え?」
「何の数字かわかるか杉村ァ……フフフフフ」
「も、もしかして……」
「そう、天瀬のスリーサイズだよ。人間スカウターのオレの目に狂いは無い。
何なら千草のも教えてやろうか?」
「ふざけるなッ!!!貴子は大事な幼馴染だッ!!!!!
オレは、そんないやらしい目で貴子や天瀬を見たことなんか一度も……」




「無いとは言わせねーぜ弘樹ッ!!!!!」
「お、おまえはッ!!?」
「オレはおまえの本心だよ!いいか弘樹、おまえが知ってる貴子はもう幼稚園児でも小学生でもない、出るところは立派に出てるお・ん・な……なんだよッッ。
あんなスタイルのいい女がそばにいて行動起さないおまえに、オレはずーーーっっっと苛々してたんだ!!!
今日こそは本音で語り合ってもらうぜ!!!!!
貴子と二人がかりで天瀬を手懐け、ゆくゆくは3P楽しみたい、それこそが男の野望じゃねえか!!
そうだろ弘樹ッ!!!!!!!!」

「こらぁ!!!弘樹をたぶらかすな!!!
弘樹はそんな男じゃない。弘樹、こんな奴の口車に乗って自分を見失うんじゃない!!」

「うるせぇ!!おまえのせいで、こいつは押しの弱い男になっちまったんだ。
その分、これからは欲望の赴くままに生きてほしいというオレの純粋な気持ちにケチつける気か!!?」

「弘樹、こんな奴のいうこと聞くことなんかないぞ!!!
君は清廉潔白で真っ当な人間だ。
この先、どんなことがあろうとも2人に変なことしたりしないだろ?
淫らな行為は勿論のこと。キスしたり、抱き締めたり、肩を抱いたり、腕を組んだり、手を握ったりどころか、見詰めあったりもしないよね?」

「……………」
「ねっ?」
「……いや、それはちょっと……約束できない…かな?
やっぱり……オレだって人並みに女の子と仲良くしたいよ」
「ピー(放送禁止用語)もしたいだろ弘樹?」
「ええっ?!!」
「し・た・い・だ・ろ?」
「……まあ、少しは」


「ああ最悪ね。普段真面目なひとこそ信用できないって本当だわ」














――川田章吾・彼の場合――


「川田くん、あなたも美恵の隣希望よね。あなたの隣になると、どんな特典がつくの?」
「そうだなぁ……まあ、オレはこう見えても料理が得意でな」
「まあ、意外ね。てっきり、どこかの組の親分でもやってるかと思ったのに」
「それだけじゃないんだなぁ。自慢じゃないがケンカも強いし、医者の息子だから何かあったら助けてやれるし、こう見えても三村以上にコンピュータにも精通してる、サバイバルもお手のもんだ」
「まあ、ナイスミドルね」




「だから、オレが隣になれば毎日美恵に上手い弁当食わせてやれるし……」
「その料理に睡眠薬入れて悪さできるし」
「怪我したときも応急処置してやれるし……」
「お医者さんゴッコが堂々とできるし」
「バードウォッチングなんかにも誘って……」
「誰もいない山奥で手篭めにしてやれるし」


「相当、いやらしいこと考えてたのね。最低だわ」


「おまえなぁ!!!さっきからオレにケチつけて何の恨みがあるんだ!!?」
「そうだ、そうだ!!章吾は他のガキどもと違って理性も分別もある大人なんだよ!!
おまえみたいな悪魔(の心)の出る幕じゃねえ!!
とっとと消えうせろ、このクサレ外道ッッ!!!!!」

「うるせぇ!!慶子の時も同じ事考えてたくせにッ!!
オレこそがおまえの本心なんだ、認めろよ、このスケベ野郎ッ!!!」

何だとぉ!!!!!


「ああ、もう知らない。勝手にケンカでもしてなさいよ」














――相馬光子・彼女の場合――


「次は光子ちゃんね。光子ちゃんは女の子だから、バカな男たちとは違うわよね?」
「もちろんよ。あたしが隣になったら、美恵 には、うーんといい思いさせてあげるわ」
「例えば?」
「そうねぇ。ねえ、あんたたちはどう思う?」
「あたしは美恵 の机の周りに鉄条網しいて、美恵 を死守してあげるわ」
「そうねぇ、それでも乗り越えてくる奴はウフフ……し・け・い♪」
「それに美恵 には、いつもバカ男どもに五万で売りつけてるパーティー券ただであげちゃう」
「そうねぇ、ついでに美恵 をエサにして三村や桐山には30万で売りつけてやれるわ。ウフフ」
美恵 には、御酒や煙草の正しい使用法を教えてあげるわ。
それから、どうやって男を奴隷扱いするのか手取り足取り……ね」

「そうねぇ、美恵 が徹底的に男を見下すようになれば結果オーライね。
ウフフ…あたしってレズの気があるのかしら?」


「……前言撤回。光子ちゃんの隣になったら美恵 ちゃん悪の道に引きずりこまれるわ」














――三村信史・彼の場合――


「次は三村くんね……ああ聞くまでも無いわ。えーと次は……」
「ちょっと待て月岡ァ!!それはどういう意味だ!!」
「そうだ、そうだ!!信史は純粋に彼女を愛しているだけなんだぞ!!」
「そうだ、そうだ!!信史の純粋な欲望を何だと思っているんだ?!!」
「どうもこうもないわ。三村君のことだから……そうねぇ、例えば……」




「わざと教科書忘れて『悪い、教科書忘れたんだ見せてくれ』と机をくっつて、どさくさにまぎれて太腿さわるとかぁ。
給食の時間に『それ嫌いなのか?なんならオレが食べてやるよ』とか言って、すでに口に含んでいるものまで口移しで無理やり食べようとするとかぁ。
音楽の時間に美恵 ちゃんの笛をわざと吹いて間接キスしておいて『悪い、机が隣だから、ついうっかりオレの笛と間違えたんだよ』ってごまかしたりぃ。
挙句の果てに美恵 ちゃんが欠席でもしようものなら『隣のよしみでプリント届けてやるよ』とか言って家に押し掛けて無理やり貞操奪うつもりなんでしょ?」




「……月岡、おまえエスパー?」














――桐山和雄・彼の場合――


「最後は桐山くんか。単刀直入に彼の本心に聞くのが一番ね。
桐山くん(の天使の心)あなたはどうして美恵 ちゃんの隣になりたいの?」
金髪フラッパーの桐山(の天使の心)は、見かけだけは本当に天使そのものだった。


が!


「……美恵 をオレのモノにするチャンスが増えるからだ」




……シーン……




「隣になれば、それだけ接近できる……そうなれば例え授業中だろうと隙をみて押し倒すことも可能だ。
押し倒してしまえば女の美恵 が抵抗できるわけがない。
一気に制服を引き裂き美恵 の全てを頂く……。
……たとえ美恵 が嫌だと泣き叫んでもオレは止めない。
美恵 の髪から足の爪先まで……いや全てがオレのものになるんだ。
オレは、ずっとチャンスを待っていた。今がその時なんだ。
……だから、絶対に美恵 の隣になってやる」





・・・・・・・・・・・。




「……あの月岡くん」
「なあに先生」
「……これは、その……桐山くんの良心だよね?」
「ええ、そうよ」
「どう考えても悪の心にしか思えないのだが……」
「アタシもそう思うわ。ねえ、桐山くん(の天使の心)あなた、それ犯罪だって自覚あるの?」
「……なぜだ?美恵 は綺麗だ。オレは美恵 が好きだ、誰よりも愛している。
だから、その美恵 が万が一にも他の男に汚されたらどうする?
その前にオレのモノにして一生守ってやるのがオレの誠意だ。
……それにオレは体力もテクニックも自信がある。
美恵 をメチャクチャに溺れさせてやれる自信がな。
……ククク、極楽を味あわせてやれるというものだ」





「……林田先生。どうやら桐山くんにとっては、犯罪行為も一種の思いやりと愛情みたいね」
「……そうだね。長年教師やってきたけど、こんな怖い子は初めてだよ」
「ねえ先生」
「何だい?」
「今回は席替やめた方がいいんじゃないかしら?」
「ああ、それが1番だよ。天瀬さんの安全の為にも…… 」
こうして席替は中止となった。




ちなみにクラスメイト達は睡眠状態に入っていた間の記憶が全く無く、彼等の本性は月岡と担任・林田の胸のなかにしまわれたのである。




メデタシメデタシ




~完~